【セミナー映像】楽しい保育の入口~0・1・2歳児を中心に~《第1講》0・1・2歳児の育ちと保育(工藤佳代子先生)〈約90分〉

「子どもの文化学校」との共催により実施した乳幼児保育についての連続セミナーの第1講は、東京家政大学ナースリールーム施設長の工藤佳代子先生による乳幼児保育の基本についての講義です。
今回は「0・1・2歳児の育ちと保育」をテーマに、一人ひとりの生活リズムや生活の様子を具体的に見ていくこと、保育者の対応、そして保護者支援という3つの視点から、ナースリールームでの実例をたくさん交えつつ、0・1・2歳児保育の大事なポイントについてお話しいただきました。
※2021年9月15日(水)に小学館講堂で行ったオンラインセミナーの記録映像です。

お話のトピック
・はじめに
保育者は、子供たちの生活リズムや環境、保護者支援などの3つの視点から考え、一人ひとりの特徴を捉えて保育を行うことが大切です。保育者には、可愛いだけでは済まされない大変なこともあるけれども、一方で子供たちの面白さや奥深さに気づくことができます。だからこそ保育者は子供たちの立場に立って保育を行うことが大切です。
・子ども一人ひとりを尊重する
保育において、個々の子どもたちの体力、好み、生活リズム、家庭環境などが異なることが考慮され、個人の意思表明権が尊重されるべきです。保育者は、子どもたちの生理的欲求を満たすことが最優先であり、発達ペースや個性も考慮しながら、一人一人に合わせた保育を提供する必要があるのです。
・生活リズムについて
保育の現場での子供の育て方について。子供が育つ過程で、個性や状況に合わせたアプローチを考えることが大切であり、生活リズムにも注目が必要です。生活リズムには、生理的欲求や子供の機嫌に関わるため、子供の一人一人のリズムを把握し、尊重することが重要です。また、保育園と家庭が連携することも必要であり、子供たちの食事、睡眠、遊びは互いに影響し合っているため、バランスを考えながら適切なアプローチをすることが必要です。ただし、状況によって子供たちの欲求やリズムは変化するため、柔軟な対応が求められます。
・一人ひとりの生活リズムを尊重する
保育士の方が子供たちを個別に見て、それぞれの生活リズムに合わせた保育をすることが大切です。例えば、授乳の間隔や眠気のサイクルなど、子供たちの個別の状態を把握して、その子に合わせた生活リズムを作ることで、子供たちの機嫌が良くなり、保育者も子供たちの経験を広げることができます。また、特にゼロ歳児クラスでは、子供たちの状態がバラバラであるため、保育者が個別に対応することが必要です。しかし、個別の対応は大変な作業であり、実際にやってみないとわからない部分もあるかもしれません。しかし、子供たちが自分に合ったリズムで生活できることが、保育の質を高める重要なポイントです。
・食事の様子
保育の現場で、子どもたちに食事を一対一であげることがあるが、子供たちは食卓を囲むことが楽しいと感じ、信頼できる人と一緒に食べたいと思うのです。保育者同士の連携も重要で、クラスを超えた連携は特にゼロ歳と一歳児の保育にとって大切です。また、一歳児でも生まれ月によって発達が異なり、担任だけでなく、クラスを超えた連携も必要です。担任は自分が担当する子供だけでなく、全体を見渡して連携を取ることが重要です。
・睡眠の様子
保育者が子供に対して、眠くなったら寝たほうがいいと提案しても、子供自身が眠くないと断わることがあります。保育者はその場で強制せず、子供たちが自分の体について学べる貴重な機会を提供することが大切です。保育者は子供たちが自分自身の学び方を見つけるのを支援し、その過程で子供たちと一緒に成長していくことが望ましい。保育者の役割は、子供たちが自分自身を受け入れることができるような、温かい場所を提供することです。
・子どもにとっての睡眠を考える
子どもたちの睡眠について。子どもたちが保育園で安心して眠るために、保育士が個別に寄り添いながら対応することが大切です。また、子どもたちの睡眠は夜の睡眠と密接に関連しており、家庭と連携しながら適切な睡眠をとることが必要です。具体的には、保育園での昼寝は夜の睡眠に影響しないように考慮し、家庭での練習によって昼寝の時間を調整することが求められます。
・着替えにみる子どもの様子
子供は脱ぐのには協力的だが着るのは拒否することが多く、着替えには保育の現場での保育者の態度が重要です。保育者は子供たちが自分たちでやろうとすることを応援する人であるべきであり、困った時に助ける人であるべきです。子供たちが自分たちで着替えることを学ぶための時間を取ることよりも、保育者が子供たちを見る眼差しのほうが大事です。
・靴を履く様子
子供たちに靴を履かせるときに、ナースリールームの保育者は、子供たちが自分で靴を履くことを奨励しつつ、失敗しても大丈夫だと言っています。また、子供たちに対して厳しく言うことはせず、子供たちが自分自身で学ぶことを促しています。保育者は、自分自身が関与していない場合でも、他の保育者が子供たちをどのように教育しているかを注意深く観察し、自分の保育スキルを向上させることにつなげていってほしいです。
・雑巾がけの様子/食事の片付けの様子
ナースリールームでは子供たちに食事の後の片付けや雑巾がけなどの掃除を含む生活体験を提供しています。先生と一緒に掃除をすることで、子供たちが生活を自分のこととして捉え、一緒に楽しむことができると考えています。また、子供たちは、小さな雑巾を使って畳を雑巾がけすることを楽しみ、食事の後にはお盆にご飯やお椀などをうまく乗せることも習得しました。生活体験を通じて、子供たちは成長していくことが期待されています。
・トイレットペーパーを広げる様子
トイレットペーパーを使って遊んでいた子供たちについて。子供たちはトイレットペーパーを取り出して床に置き、その後転がすことを繰り返し、大人が注意しても子供たちは楽しんで遊んでいます。保育者は、子供たちが興味を持つことに注目し、その興味を生かした遊び方や学び方を提供することが重要です。また、子供たちに生活感覚を身につけさせることも大切です。
・保護者支援と連携
幼児教育における保育者の役割について。子どもの思いを尊重し、子どもたち一人一人を大切にすることが重要です。保護者との連携も大切で、保護者支援においては大人目線で考えず、保護者が求める支援を行うことが必要です。
・子供たちの思いを大切に
保育者が子どもたちに「大切なものを一緒に大切にしよう」と伝えるエピソードを紹介。例えば、子供がタオルを絶対に手放さないと言った場合には、汚れないように背中に入れて持って行く方法を提案します。一緒に考えることで、子供たちの信頼を得ることができます。子どもたちが安心して過ごせるために、保育者が子供たちの思いを大切にすることが大切です。
・保育の場だからできる保護者支援
保育の現場での子育て支援について。季節の変化や文化的な要素を取り入れたり、保護者とのコミュニケーションによって、保育士が一人ひとりの子どもに合った対応を行い、家庭に合った状況も捉えて対応することができます。保育士としては、子どもたちと関わっていくことができる期間が長く、経過を見ながら保護者と協力して育児を支援していくことができます。また、第一子で悩むお母さんが相談することも多く、誠実に答えることが重要ですが、答えが出るまで時間を置いて慎重に考えることも必要です。
講師:工藤佳代子(くどう・かよこ)
東京家政大学ナースリールーム施設長。東京家政大学を卒業後、保育士として同大学ナースリールームに勤務する。9年間の勤務の後、ナースリールームを離れるが平成19年に復職、平成31年からは施設長を務める。
※東京家政大学ナースリールームとは・・・東京家政大学板橋キャンパス(東京都板橋区)内にある事業所内保育所の機能を備えた認可保育所。木々に囲まれたキャンパスの中、0〜3歳の子どもたちが過ごしています。