乳幼児保育の基本を理解する3つのキ―ワード〈動画約5分〉
日々の成長に喜びややりがいも大きい一方で「わからない」「困った」「どうしよう?」にもぶつかりがちな乳児保育。それは保護者にとっても同じです。
この動画では、東京家政大学ナースリールーム施設長の工藤佳代子先生への取材記事を元に、乳児期の発達の過程で押さえておきたい3つのキーワードを紹介します。子どもとのかかわり方を理解し、保護者へ伝えることはそのまま保護者の支援にもつながります。
この動画は『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2022春に掲載された下記記事を元に制作しました。
保護者支援にもつながる 乳児保育の基本をCHECK!
https://hoiku.sho.jp/186678/
0・1・2歳児の保育は、日々の成長の喜びややりがいも大きい一方で「わからない」「困った」「どうしよう?」にもぶつかりがち。そこで、乳児期の発達の過程で押さえておきたい基本を「生活リズム」「自己主張」「人間関係」3つのキーワードからチェックしてみましょう。
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CHECK① 生活リズム
まずは、保育園のスケジュールに子どもを合わせるのではなく、子ども一人ひとりを尊重して保育を組み立てていくということが基本です。0歳児保育では、まず最初に一人ひとりの生活リズムを的確にとらえるというところから始めましょう。
2時間の間隔で眠くなる子もいるし、3時間の間隔で眠くなる子もいます。おなかがすく間隔も子どもによってそれぞれ。「子ども一人ひとり、家庭での過ごし方も違えば体力も個性も違う」ということを前提に考えていくことが大切です。
日々の保育においても、昨日は何時に寝て、今日は何時に起きたか、連絡帳や保護者との会話を通してそれを確認し、一人ひとりの今日の保育園での過ごし方の見通しを立てていきます。
生理的欲求をタイムリーに満たせば機嫌のいい子が増えます
0歳児保育では、赤ちゃんの「泣き」に戸惑うことも多いと思います。でも、タイムリーに生理的欲求が満たされていれば、そうそう泣き続けることはありません。
「さっきミルクを飲んだからおなかがすいているわけではない」「寝て起きてまだ〇分しかたっていないから眠くはないはず」と消去法で考えていくと、「ああ、同じ姿勢で疲れちゃったんだね」などと、子どもの要求がわかってきます。
生理的欲求が満たされないと、機嫌の悪い子が増え、子どもが泣いて訴えることが増えていきます。「一人ひとりの生活リズムに合わせる保育は大変そう!」と思うかもしれませんが、実際には生理的欲求が満たされているので、機嫌のいい子が増え、楽しく過ごす時間が増えていきます。
CHECK② 自己主張
1歳を過ぎたころから見られるようになる「自己主張」。成長の証しとして喜ばしい瞬間です。言葉で表現できるようになるにしたがい、落ちついてきます。
「イヤ」「ダメ」という表現ができるようになることは、自分の意思を持つようになったという目に見えない成長。自分らしく生きていくための第一歩を踏み出したという証しです。
「イヤイヤ期」などとネガティブにとらえられがちですが、私たちとしては1歳の誕生日よりも「おめでとう!」といいたいほどです。
的確に気持ちを代弁することで表現力も育っていきます
いわれていることを理解する力はあるのに、自分の気持ちを表現する手段がまだとても少ないために、そのアンバランスからイライラしたり、もやもやしたり。本人だって、その気持ちに困っているのです。そんなとき「イヤじゃないでしょ!」「違うでしょ!」と否定されてしまうと、自分の存在を肯定的にとらえられなくなってしまうことにも。
そばにいる大人は、「その気持ちをわかりたいと思っているよ」「どんなときもそばにいるよ」と肯定的に寄り添っていくことが大事。
また、表現しきれないその気持ちを引き出して代弁していくことは、やがて言葉を使い始めたときの表現力にもつながっていきます。
「大事なものを持っていかれたら、イヤだったよね」など、子どものことをよく見て、できるだけズレがないように的確に言葉にしてあげましょう。
ときには、なかなか気持ちが切り替わらないときもあります。そんなときは「ちょっと外の空気を吸ってみるのはどうかな」など、気分転換の仕方を提案してみるかかわりも必要です。
CHECK③ 人間関係
友達とのかかわりも増えてくるのが2歳ごろから。それぞれの「心地よいこと」が保障されて初めて、人への理解が育っていきます。
人との距離感、人とのかかわりの中で、心地いいと思う状況は一人ひとり違います。みんなと仲よくしてほしいというのは大人の思い。子どもは自分自身の遊びが満足すると、自然に興味が周囲へと広がっていきます。もちろんぶつかり合うこともありますが、実際のかかわりを通して、人とかかわることが「楽しい」「おもしろい」「心地よい」ということを経験していきます。
人とどうかかわったらいいのか、そばにいる保育者がそのモデルになるようなかかわり方を見せていくことも必要です。「〇〇ちゃんは、あのトンネルができるまでは食べるどころじゃないから、残して待っていてあげようね」「うまくいくように応援しようね」など、場面場面でどんな言葉をかけるかによっても、子どもの育ちは大きく変わってきます。
言葉にできない思いがさまざまな表現に出てきます
人間関係の中で、子どもが自分の思いどおりにならなかったとき、「かみつく」「ひっかく」「髪の毛を引っぱる」「ものを投げる」といった行為で、言葉にならない思いを表現することがあります。保育の場では、傷が残ってしまう「かみつくこと」「ひっかくこと」に敏感になりがちですが、子どもによって表現方法が違うだけ。
押すこともかみつくことも同じだということは認識しておきましょう。いずれの場合も「ダメ!」と叱るのは逆効果。否定されると、子どもは表現することをやめてしまうからです。
トラブルが起こったときには、痛い思いをしそうな子どもを守りながら、「あなたがそうせざるを得なかった気持ちも助けるからね」という姿勢を示し、「一緒にお話ししてみようか」などと、思いを表現する方法は色々あることを伝えていきましょう。