Copy: 【セミナー映像】保育者のための最新赤ちゃん学入門《第2講》(遠藤利彦先生)〈約90分〉

東京大学大学院教授で同学の発達保育実践政策学センター(Cedep)センター長を務めている遠藤利彦先生による全6回のオンライン講座です。最新の研究からわかってきた「赤ちゃん」の心と成長の実態について、研究事例や知見を踏まえつつ解説いただきます。

この連続講座は、全6回の講義をとおして最新の赤ちゃん学の知見を保育者に分かりやすく伝える内容となっています。第1回では、胎児期からの環境が生涯の健康に影響を与えることを学びます。第2回では、人間の赤ちゃんが未熟な状態で生まれ、長期にわたる養育が必要なことから、集団共同型育児の重要性を説きます。第3回と第4回では、赤ちゃんの意外な能力や個性、物理的世界の理解力について探ります。第5回は、赤ちゃんの人間に対する強い興味と、人との相互作用を通じた発達を扱います。最終回では、豊かな相互作用が子供の心の成長に欠かせないことを強調し、保育者の役割の重要性を再確認します。最新の研究成果に基づき、赤ちゃんの驚くべき能力と、それを引き出す環境づくりについて学べるアカデミックな講座です。

「集団協働型育児の勧め」と題した第2回の講義では、人間の子育ての特殊性と、その解決策として進化してきた集団での子育ての意義を解説します。人類の赤ちゃんは、二足歩行による骨盤の変化で産道が狭くなった結果、「生理的早産」状態で生まれてくることを余儀なくされました。そのため非常に未熟な状態で誕生する一方で、体重は重く、母親一人での育児は困難を極めます。こうした特徴から、人類は父親、祖母、年長きょうだいなど、様々な人々が育児に関わる「集団協働型育児」を確立してきました。

現代社会において、この集団協働型育児の場として最も重要な役割を果たすのが保育園・幼稚園です。園では、保育者との縦の関係、同年齢児との横の関係、異年齢児との斜めの関係という多様な人間関係を経験できます。これらの関係性の中で、子どもたちは非認知能力(自己と社会性の力)を育んでいきます。

核家族化が進む現代では、父親の育児参加の重要性が増していますが、依然として育児・家事負担は母親に偏っているのが現状です。保育者として、子どもの健全な発達を支える多様な関係性をどのように構築し、家族をサポートできるか、共に考える機会となるでしょう。人間本来の子育ての姿について、進化の視点から新たな理解が得られるはずです。

※2024年10月28日(月)に行った「せんせいゼミナール」オンラインセミナーの記録映像です。

講師:遠藤利彦(えんどう・としひこ)
東京大学大学院教育学研究科教授。東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(Cedep)センター長を兼務。専門は発達心理学、感情心理学。おもな著書に『赤ちゃんの発達とアタッチメント』(ひとなる書房)、『「情の理」論』(東京大学出版会)、『入門アタッチメント理論』(編・日本評論社)などがある。

第2講のトピック

生物としての人の子どもの特殊性

  • 生理的早産という特徴
  • 未熟で重たい赤ちゃん
  • 長い子ども期

人間における集団協働型育児の必要性

  • 育児におけるヘルパー・サポーターの重要性
  • 父親の役割
  • 祖母(特に母方)の重要性
  • 年長きょうだいの貢献

現代における集団協働型育児

  • 保育園・幼稚園の役割
  • 縦・横・斜めの関係性
  • 非認知能力の発達

父親の育児参加をめぐる現状と課題

  • 核家族化と父親の役割期待
  • 育児・家事時間の現状
  • マターナルゲートキーピング

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