異年齢競技でいこう!~教えて!あなたの園の運動会~
異年齢で取り組む競技は、年上が小さい子を思いやったり、年下が大きい子と一緒にがんばったりと、子どもたちの成長を目の当たりにできる機会です。運動会で盛り上がるさまざまな異年齢競技を紹介します。
目次
力を合わせて鬼をやっつけよう!
柳町園(大阪・門真市)
異年齢保育に重きをおいている柳町園。船リレーとくす玉割りを合体させたこの競技でも、3・4・5歳児混合のチーム分け(住んでいる地域別)を行い、また、子ども同士の「対決」よりも「協力」を大切にしつつ、楽しみながら臨めるようにしています。
テーマは子どもたちが大好きな『桃太郎』。まずはダンボールで作った船に乗り込み、きびだんごに見立てた白い玉を手に入れるためにリレーしていきます。全員がゴールしたら、そのきびだんごを使ってくす玉を割り、鬼退治の成功です。小さい子たちから託された玉で5歳児が見事にくす玉を割ると、「やったー!」とみんなで喜び合います。
準備するもの
- 玉(100個くらい)
- 船(ダンボールで製作)
- 玉を入れる箱
- くす玉(鬼の顔をつける)
進め方
- 3歳・4歳・5歳の3人でひとつのチームを作り、イラストのように左右二手に分かれてスタンバイする(列の数は適宜)。
- スタート側の列の先頭のチームが、船に前から3歳、5歳、4歳の順に乗り、玉の入った箱に向かって進む(中央の5歳児だけが船を持つ)。
- 中央の5歳児が船から降り、箱からきびだんご(白玉)をふたつ取って、ほかのふたりに手渡す。
- ふたたび3人で船に乗り、向こう側のチームに向かって進んで、船を交代する。
- 全チームが終わったら、保育者は鬼の顔がついたくす玉を会場の中央に運び入れる。
- 3歳児、4歳児は白玉を5歳児に託して応援席へ行き、5歳児がくす玉を割る。
玉入れとダンスのコラボレーション 競技
まるくこども園(青森・十和田市)
まるくこども園で行う玉入れは、ダンスを組み合わせたコラボレーション競技です。まずは異年齢(3〜5歳)で編成した2チームの子どもたちが、リズミカルなBGMに合わせて踊りながら入場します。そしてBGMが別の曲に変わったら、それを合図に玉入れがスタート。子どもたちは夢中で玉を投げますが、突然音楽が止まり、また最初の曲が流れ始めたら、玉入れをやめて再び踊るというルールです。今回はダンスと玉入れを3回ずつくり返しました。玉入れの結果が出たあとは第2ラウンド。どちらのチームが早く玉を片づけられるかを競います。玉入れで負けても、お片づけ競技で勝つと子どもたちは大喜びしていました。
フープで手つなぎ競走
池尻かもめ保育園(東京・世田谷区)
池尻かもめ保育園では、4歳児と5歳児が力を合わせて勝利を目指す、手つなぎ競走を行っています。異年齢の子どもふたりでひとつのフープをつかみながら走り、コースを回って次のグループにフープでバトンタッチをしていきます。
チーム分けは、大きい子が小さい子を助けられるように、力のバランスを考えて行います。ふだんの練習の中で、子どもたちはうまく走れるようになると、負けたくない気持ちが出て「どうやったらもっと速く走れるか」と作戦会議を始めるようになります。
かたいフープは目や頭に当たるとケガをすることがあるので、やわらかいタイプのものを使用しました。フープを小さくすれば、難易度を上げることもできます。
初めての卒園式の年みんなで取り組んだ合同ダンス
小学館アカデミーいちかわ南保育園(千葉・市川市)
いちかわ南保育園では、初めての卒園児を出す記念の年に合わせて、3・4・5歳児の異年齢による合同ダンスを行いました。最初は年齢によって異なるダンスの振りつけや、途中で隊列の形を4回変えることに苦労していました。けれども、ほかのクラスを見学したり、一緒に練習を重ねたりしていくうちに、少しずつ動きを合わせられるようになりました。本番直後、練習の甲斐あって見事に踊りきることができた子どもたちの顔は、達成感に満ちあふれていました。「3クラスがまとまって踊ったダンスは迫力があってすばらしかった」と、保護者も感激していました。
龍王太鼓をリズムよく連打!
笹原保育園(長野・茅野市)
子どもたちは定期的に来園してくださる太鼓の先生に指導を受け、日々の練習を重ねることで、太鼓のリズムを自然と体で覚えていきます(太鼓はふだんもリズム室に置いてあるので、いつでも自由に叩くことができます)。運動会ではその成果を披露するために、龍王連打太鼓の演目を毎年取り入れています。保育者が「とんくる、とんくる、どん、どん、どん」と太鼓を叩くと、3・4・5歳の子どもたちがあとに続き、力強い音が園庭中に響き渡ります。また、この太鼓は味噌樽を再利用して作ったもの。地域に声をかけて集めた樽に、子どもたちがペンキを塗ったり、革を貼ったりして手作りしました。
みんなで一緒に島渡り
浪花認定こども園(福井・越前市)
「島渡り」は、3・4・5歳児が3人ひと組になって行う競技です。さまざまな形や大きさ、高さのブロックを用意し、海に浮かぶたくさんの島をイメージして、あたり一面にばらまいておきます。チームの3人で手をつなぎ、その島を渡ってゴール地点にある風船を割るという競技です。途中で手を離しても大丈夫。特に決まったルートがあるわけではありませんが、チームの3人は先頭の人について、同じ島をたどっていくのが決まりです。誰かの足が床についてしまったら、スタート地点に戻ってやり直し。
チームの組み合わせは、運動能力なども考慮しながら決めています。「年長さんは先に行ってはだめだよ。みんなで一緒に渡ってね」と伝えますが、どんどんひとりで進んで行ってしまう子もいます。でも何度かやり直すうちに、慎重に行かないとゴールにたどり着けないことや、どの島を選んだら小さい子でも渡りやすいかを考える様子が見られました。年下児への思いやりや協調性、また年上児に憧れる姿なども見ることができ、保護者からは「子どもの意外な一面を見られた」という感想をいただきました。
ルールも簡単!スピード感あふれるひっくり返し競争
中央区立京橋朝海幼稚園(東京・中央区)
「ひっくり返し競争」では、赤と白に塗った厚紙を裏表に貼り合わせて大きなコマを作り、それをコート一面にばらまきます。そのコマを、4歳と5歳児混合の紅白のチームが同時に、自分のチームの色を表にしていき、最後に色の数を競い合います。音楽が流れている間、子どもたちは一生懸命コマをひっくり返し、ひっくり返されて、音楽が止まったら競技終了。コートの中央に各チームの色のコマを積み上げ、どちらのコマが多いかを判定します。
簡単なルールなので4歳児にも理解でき、もちろん5歳児も楽しめます。勝敗がわかりやすく、競技もあっという間に終わるので、テンポよく楽しめます。また、体を多様に動かすこともこの競技の狙いです。立ったりしゃがんだりをくり返して次々にコマをめくっていくので意外に体力を使います。
準備するもの
- リバーシブルのコマ
チームカラーを決めて、30センチ四方の厚紙に同じ色を塗り、同じように対戦チームの色が塗られた厚紙と重ね合わせてコマを作る。コマは、参加人数の2倍程度を目安に用意する(練習の様子、競技スペースを考慮して調整)。コマは線の引かれたコート内にそれぞれの色が同数になるようにばらまく。このとき、同じ色が1か所に集まらないように注意する。
配達員になって言葉のやりとりを楽しむ 〜3きょうだいのドキドキデリバリー〜
わかくさ保育園(神奈川・横浜市)
わかくさ保育園では、3・4・5歳児で「3きょうだい」というチームを作り、1年を通して掃除や散歩などの活動をしています。運動会でもこの「デリバリー」で、3人が力を合わせて競技に取り組みます。子どもたちはお店屋さんごっこが大好きです。「お待たせしました」「かしこまりました」という言葉のやりとりを取り入れ、さらに、今ではおうちでピザなどの配達を頼むことにも慣れているので、競技の中にデリバリーの要素も盛り込みました。子どもたちは、大きなケーキやお寿司が出てきて、いつもの保育園とは違う雰囲気を楽しんでいました。
「3きょうだい」の競技を行うとき、ときどき5歳児が一生懸命走りすぎて、3歳児と4歳児がついて行けないことがあります。競技の前には、「小さい子たちが転ばないように、気をつけてあげてね」と約束しています。
コース説明
1 スタンバイ
2 ご注文はこちらですね
3 お客さんにお届けします
4 デリバリー無事終了
準備するもの
- 宅配料理(ダンボール、カラーポリ袋、新聞紙などで製作)
- 料理カード(宅配料理と同じ絵が描かれたカード)2枚ずつ
- おぼん(2枚のダンボールでフープをはさんだもの)
進め方
- スタートラインに2~3組の「3きょうだい」がスタンバイ。コース上にはイラストのように料理カード、おぼん、配達料理が置かれている。
- 笛の合図で料理カードをめくり、カードに描かれた絵と同じ宅配料理を探す。
- 宅配料理を見つけたら、それをおぼんにのせて「3きょうだい」で運ぶ。
- 配達ルートを進み、同じ絵のカードを持っているお客さん(来賓やお年寄りの方など)に声を揃えて、「お待たせしました!」といってから宅配料理を渡す。
三角綱引き世界一をつかみ取れ!
みどりが丘幼稚園(茨城・取手市)
毎年、異年齢競技は先生と年長・年中児で考えます。昨年は「綱引きをやりたい」という意見が出たので、4歳児と5歳児の混合3チームで行う「三角綱引き」を思いつきました。3方向から引っぱり合う綱引き競技です。それぞれのチームが立てた旗に向かって綱を引っぱり、最初に旗を取ったチームが勝ち。どこが勝つかわからないワクワク感があります。
みどりが丘幼稚園では国際化・異文化教育にも力を入れているので、今回は日本とアメリカ、そしてリオ五輪の開催国ブラジルの国旗を使いました。よくある競技にひと工夫することで、やるほうも見るほうも両方楽しめるようになります。
円形の紙に120 度ずつ3等分した線を引き、その紙の上に綱をおけば、綱の間隔を等しくすることができる。最後尾の子が持つ綱の位置には、ビニールテープなどで印をつける。
2 本目と3 本目も、①~③の手順で結ぶ。
絵本『スーホの白い馬』のモンゴルの草原を駆け抜ける
東大駒場地区保育所(東京・目黒区)
ふだんは学年ごとに楽しんでいる表現遊びですが、運動会では2歳から中心となる5歳児までが合同で取り組みます。昨年は、子どもたちが大好きな絵本『スーホの白い馬』をテーマに、「ハンカチ踊り」や「モンゴル相撲」などを行い、絵本の世界を表現しました。「ハンカチ踊り」は両手にカラフルなハンカチを持って、歌いながら踊ります。その歌の歌詞はモンゴル語なのですが、練習を重ねることで、子どもたちは年齢に関係なく、とても上手に歌っていました。しかし、体力面ではまだ異年齢差があるので、「モンゴル相撲」をするときだけは、同学年同士で対戦できるように配慮しました。旗を持って急げ!
海の生き物になりきって表現
山梨大学教育学部附属幼稚園(山梨・甲府市)
「子どもが主人公になる」という園の方針は、運動会でも貫かれています。3・4歳児は「一人ひとりが楽しく自由に表現できること」、5歳児は「かっこいい姿を見てほしい。見る人も自分たちも楽しめる運動会にしたい」という目標を決めて、異年齢での演目に取り組み始めました。
そのころ園では海の魚がブームになっていたので、みんなで「海の中の世界」を表現することになりました。5歳児はサメとクラゲを作ることに決め、本物らしく見えるにはどうしたらよいかを話し合い、小道具は子どもたちと一から製作(台本は職員が考える)しました。サメは白い布にみんなで青と黒の色を塗り、大きな口はフープに歯をつけて、持ち手は園芸用のアーチ型ポールを使いました。クラゲは子ども用のビニール傘に模様を描き、ひらひらしたテープをつけて表現。4歳児はエビとカニ、3歳児は魚に扮して、園庭はとても幻想的でにぎやかな海の世界となりました。
文/エディット(小川真美、斉藤道子、古屋雅敏)
イラスト/やひろきよみ
『新 幼児と保育』2018年8/9月号より