子どもの「育ち」が見える展示

子どもの活動やそれによって生み出された製作物の数々は、すべてがかけがえのない「育ちの証し」。作品展はもちろん、卒園・進級時期に向けて園の展示の工夫を紹介します。

小さな子から年長クラスまで「1年ごとの育ち」に触れる作品展

北会津こどもの村幼保園(福島・会津若松市)

小さなおうちに見立てた保育室が遊戯室をぐるりと囲むように並ぶ、北会津こどもの村幼保園。進級時には成長を実感しながら、クラスごと、隣の部屋(おうち)へと引っ越していきます。作品展ではその環境をそのまま生かし、0歳から1歳、2歳、と年齢順に展示コーナーを設置。1歳ごと、花の成長になぞらえた案内板とともに展示しています。

「絵がうまく描けるとか、工作がうまく作れるとかではなく、そのときの心の動きがどのように表現されているのかを見てもらいたいと思いました。心の動きに乗せて線を引いたり色をつけたり、形を組み立てたり。それぞれの作品に、子どもたちの思いと意味が込められています。小さい子から年長まで、その作品を丁寧に見ていくと、子どもたちの心の成長が感じられます」(園長・最上学先生)

「見てほしいポイント」を掲示。
すべての展示から子どもの成長を感じてもらいたいという思いから、入り口にも年齢ごとに「見てほしいポイント」を掲示。

0歳児

かわいいあおむしの形に貼って展示
いつものお迎えの廊下には、0歳児が足スタンプ遊びを楽しんだときの足形を、ひとりずつかわいいあおむしの形に貼って展示。吊るす展示は、抱っこの子どもと会話をしながら一緒にくぐる楽しみ方も。

1歳児

めがでてきました
紙を丸める遊びが盛り上がっていた1歳児のコーナーでは、「丸めて遊んだ京花紙」を卵パックに入れて床に展示
紙を丸める遊びが盛り上がっていた1歳児のコーナーでは、「丸めて遊んだ京花紙」を卵パックに入れて床に展示。踏んで足の裏で感触を感じたり、踏んだときの音を楽しんだり。五感を使って遊べるように工夫した。

2歳児

ふたばがでました
2歳児の展示コーナー
パンツトレーニングが始まり、「くまくんにもパンツをはかせよう」とパンツ作りを楽しんだ2歳児。展示コーナーには、自分の作ったパンツをくま(保育者が画用紙で製作)にはかせて写真を撮れる撮影スポットも用意した。

3歳児

ほんばがでました
3歳児の作品。展示も子どもと一緒に行う。
秋の散歩で見つけた紅葉した葉っぱに、自由に色を塗って飾って楽しんだ3歳児の作品。展示も子どもと一緒に行う。

4歳児

つぼみがでました
積み木遊びは、子どもたちが作ったそのままの状態で展示
大人気の積み木遊びは、子どもたちが作ったそのままの状態で展示。壁に黒い布を貼ることで、子どもの作り出す世界が際立つ。

5歳児

はながさきました
展示「等身大の自分」
もうすぐ1年生。子ども自身が「大きくなった自分」を感じてほしいという思いを込めて展示した「等身大の自分」。ひとりひとつのいすには、小学校への期待を込めてその子どもが作った本物そっくりのランドセルを飾った。

写真提供/北会津こどもの村幼保園

日常の活動をそのまま展示。一人ひとりにスポットライトを

めぐみ第二保育園(東京・府中市)

めぐみ第二保育園では3年前から作品展「ワンデーミュージアム」を開催しています。造形活動に取り組む中で、子どもたちの興味や発想に触れた保育者たちから「保護者にもぜひ見てもらいたい」という声があがったのがきっかけでした。0・1・2歳児の作品、3・4・5歳児の作品のほか、ホールには全園児の作品が集合します。

「興味のあることや夢中になるものは、子どもによって違います。作品展ではそれぞれの取り組みや成長過程を大切に、一人ひとりにスポットライトが当たるように工夫をしています。ありのままの姿を紹介する保育者コメントの展示もそのひとつ。保育者もワクワクした気持ちで取り組んでいるようです」(副園長・内藤孝子先生)

乳児の部屋

乳児のお部屋
0・1・2歳児合同の展示室
0・1・2歳児合同の展示室。乳児と一緒に作った松ぼっくりを飾ったツリーを中心に、日常で生まれたたくさんの作品を活動ごとに展示している。
「ワンデーミュージアム」の看板
門で出迎える「ワンデーミュージアム」の看板。園庭にはカフェも設営され、おしゃべりを楽しむ親子でにぎわう。

幼児の部屋

幼児のお部屋
展示の様子
「のびやか」をテーマに、個性豊かな作品を所狭しと展示。中央で出迎えるのは、動物園体験から生まれた5歳児の共同作品。

全園児

全園児の作品をホールに展示
毎年テーマを決めて、全園児の作品をホールに展示。2019 年は「自然物」をテーマに、クラスごとに取り組んだ作品が集合した。
クラスで栽培した夏野菜を題材にした展示
クラスで栽培した夏野菜を題材に、3歳児は絵の具を使った製作に挑戦。近くには4歳児の立体作品、5歳児の観察画を展示した。1年ごとの育ちがそれぞれの作品を引き立て合う。
廊下の壁や天井の展示
廊下の壁や天井にも、自由に製作した作品をひとつひとつ丁寧に展示。製作に取り組む子どもの姿も一緒に展示されている。
「自然物を使った造形作品」を集めた展示
幼児の展示室でも、3・4・5歳児それぞれの「自然物を使った造形作品」を集めて展示。右側は3歳児、左側は4歳児の作品。右上に展示しているのが、5歳児の「葉っぱのこすり出し」。
園庭の様子
園庭には、園の造形活動について紹介する「ワンデーミュージアムストーリー」と作品を展示。来場者の憩いの場として、中央にはテーブルを設置。「カフェ」に立つのは園の栄養士や調理師。すべての職員で作品展を盛り上げる。

写真提供/めぐみ第二保育園、遠藤栄蔵

行事じゃなくても。省スペースでも「育ち」の見えるアイデア展示

日常の展示 日々生まれる作品をリアルタイムで展示する

みどりのもり都田(静岡・浜松市)

3歳児の人形作品 と2歳児が作ったネックレス
5月の『母の日ギャラリー』には3歳児の人形作品(下) と2歳児が作ったネックレス(上)の作品を展示。
展示を見る親子
展示を見る子どもたち
他クラスの作品に刺激を受け、ギャラリー展を通して育ち合う子どもたち。0・1歳児の子どもたちが指差しをして興味を示している姿も見られる。
イーゼルを使って展示
小さなイーゼルを使い、子どもが見やすい高さに作品を展示。ストーリーのある飾り方をしたいと、展示方法もその都度工夫を凝らしている。

みどりのもり都田では、2019年度から年に一度の作品展に変えて、いつでも展示ができる「ギャラリー展」を始めました。玄関ホールを使い、日々の自由製作や造形活動で生まれる作品を、展示したいときに展示しています。 「成長をリアルタイムで感じてほしいというねらいがあります。素敵だな、と感じたときはいつでも。子どもたち自身が”飾りたい“ということもあります。立ち寄った保護者の方からの、きれいだね、素敵だねという声は、子どもたちにとって自信にもつながっているようです。週末、作品を持ち帰るときには、”今度は『おうちギャラリー展』をしようね“と言葉を交わす親子の姿も見られます」(山崎惟先生)

卒園時期の展示 1年の活動記録を時系列に再掲示する

小学館アカデミーたまプラーザ保育園(神奈川・横浜市)

写真の展示
造形作品はすぐに保育室に展示し、持ち帰る。たくさんの写真に残る子どもたちの姿は、大切な成長の記録。

写真を使って丁寧に綴ってきた日々の活動記録を再掲示するのも、子どもの育ちを展示する工夫のひとつ。

「卒園式には、玄関ホールから式を行う2階の保育室までの壁に、4月からのドキュメンテーションを並べて展示しています。1年間の活動を振り返ることで、さまざまな場面が思い起こされ、あらためて子どもの育ちを感じます。親子で思い出を分かち合う大切な時間になっています」(園長・石山貴恵先生)

写真提供/みどりのもり都田、小学館アカデミーたまプラーザ保育園

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