熱中症が起きる条件【保育者同士の連携で夏の重大事故を防ぐ !#2】

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夏の重大事故を防ぐ!
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夏に特有のリスクを防ぐために、安全対策を検討し、備えましょう。

シリーズ第2回は「熱中症が起きる仕組み」です。

(この記事は、『新 幼児と保育』2019年6/7月号に掲載されたものを元に再構成しました)

お話

猪熊弘子さん
駒沢女子短期大学教授、ジャーナリスト。元・明福寺ルンビニー学園幼稚園・ルンビニー保育園副園長、Yahoo!ニュース個人オーサー。『死を招いた保育』(ひとなる書房)で日本保育学会日私幼賞・保育学文献賞受賞。近著に『重大事故を防ぐ園づくり』(ひとなる書房/共著)などがある。

熱中症を引き起こす要素

体温の上昇と調整機能のバランスが崩れると、どんどん体に熱がたまってしまいます。このような状態が熱中症です。熱中症を引き起こす条件は、「環境」と「からだ」と「行動」によるものが考えられます。

環境によるもの

● 気温が高い
● 日差しが強い
● 急に暑くなった日
● 湿度が高い
● 閉め切った室内
● エアコンのない室内
● 風が弱い など

からだによるもの

● 高齢者や乳幼児、肥満の方
● 下痢やインフルエンザの脱水状態
● 寝不足などの体調不良
● 低栄養状態 など

行動によるもの

● 激しい筋肉運動や慣れない運動
● 長時間の屋外作業
● 水分補給できない状況 など

※環境省「熱中症予防情報サイト」より抜粋。

夏の外遊びは命を危険にさらすことも

真夏であっても「外で元気に遊ぶのがよい子」という価値観がいまだに根強くあると感じます。しかし、今の日本の気候では、真夏の外遊びには命の危険があります。私たちは熱帯の国に住んでいるように暑さを警戒する必要があります。たとえ首カバーつきの帽子をかぶっていても、直射日光にさらされる時間が長くならないようにすべきです。

初夏でも安心してはいけません。体がまだ暑さに慣れていないことも熱中症を引き起こしやすくします。急に暑くなった日、気温はそれほど高くなくても湿度が高い日が危険です。

乳幼児は自律神経が未発達で体温調整機能が弱いうえ、身長が低いために地面から輻射熱(ふくしゃねつ)の影響を受けやすいので、大人以上に熱中症にかかりやすいことも忘れないようにしましょう。

室内でも熱中症の死亡事故

「真夏でもエアコンはつけないに越したことはない」という考えがまだ根強くありますが、一部の涼しい地域を除いては無理があります。体温調整がしづらい状況が重なれば、室内でも熱中症にかかります。

2005年8月に埼玉県の保育所で、当時4歳の男の子が、本棚の下の引き戸の中に入り込んだ後、熱中症による心肺停止で亡くなる事故がありました。

この保育所では午前中の自由遊びの時間には、園児がどこで誰が何をして遊んでいるのかしっかり把握していませんでした。男の子が行方不明になったことがわかってから、発見されるまで約1時間半もかかりました。

引き戸の中は高さ、幅、奥行きがいずれも40センチ程度の密閉された狭い空間で、8月の気象条件下では子どもの体温は数分で急上昇します。発見されたとき、男の子の体温は42℃まで達していました。

事件当時、この保育園では「自由保育」の名のもとで子どもたちが遊びこめる環境設定がされておらず、子どもたちがあちこちをふらふらと所在なく動いていたことが指摘されています。放任状態で子どもの動静を把握していませんでした。

職場の人間関係が事故のリスクに影響

実はその事故が起こる前に、引き戸の中に入り込んで遊ぶ子どもを見かけた保育者が8人もいたことが、警察による聞き取り調査でわかりました。しかし職員間でそれが話題になったことはなかったそうです。正規社員と非正規社員の間に溝があって引き継ぎが行われない、職員会議が形骸化するなど、連携が密でなかったこともあり、危険な本棚の問題が放置されていました。リスク管理は園内の風通しのよい人間関係の支えがあってこそです。

文/佐藤暢子 イラスト/上島愛子

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