プール事故【保育者同士の連携で夏の重大事故を防ぐ !#1】

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夏の重大事故を防ぐ!
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夏に特有のリスクを防ぐために、安全対策を検討し、備えましょう。

第1回は、「プール事故」。
プール遊びのねらいは何ですか? 
3歳以上児の重大事故の多くはプールで起きています。

(この記事は、『新 幼児と保育』2019年6/7月号に掲載されたものを元に再構成しました)

お話

猪熊弘子さん
駒沢女子短期大学教授、ジャーナリスト。元・明福寺ルンビニー学園幼稚園・ルンビニー保育園副園長、Yahoo!ニュース個人オーサー。『死を招いた保育』(ひとなる書房)で日本保育学会日私幼賞・保育学文献賞受賞。近著に『重大事故を防ぐ園づくり』(ひとなる書房/共著)などがある。

リスク管理の点からプールの中では一斉に同じ活動を

プール遊びは夏ならではの楽しい活動ですが、溺れる危険をはらんでいるという共通認識を持つべきです。もし「季節を感じること」が目的であるなら、ホースでの水遊びだっていいはず。保育所保育指針などの3法令に水泳指導をせよという記述はありません。

プール活動をするのであれば、園全体で子どもたちを見守る体制を組みましょう。室内の配置基準では十分ではありません。大人ひとりが見る人数は10人以下がよいでしょう(たとえば30人のクラスなら最低3人の保育者)。

プールの中では一斉に同じ活動をした方がリスク管理の点で優れています。そのためには、異年齢ではなく同年齢で入るべきです。2017年8月に3歳児クラスの子どもが溺れて死亡する事故がありました。この日のプール活動に限って3~5歳児合同で、子どもたちがそれぞれ自由に遊んでいた中で起きた事故でした。 

人は静かに溺れる

溺れた人は、バタバタと手足を動かしながら助けを求めるもの……そんな刷り込みがあるかもしれません。しかし実際には、溺れるとき人は意識を失って静かに沈んでいきます。

プール活動には必ず監視をする人をたてて、沈んでいる子どもがいないかどうかを見ます。具体的には、頻繁に人数確認をします。

水深は30センチまで!

水深が深いほど溺れる可能性は高まるうえに、沈んだ子どもを発見することが難しくなります。プール活動において、水深の設定は重要です。3歳以上児で、どんなに深くても30センチを上限としましょう。

ただし、子どもは10センチの深さでも、水があれば溺れることがあります。プール遊びに限らず、たらいでの水遊びなども含めて水深に注意を払いましょう。

大人だけで緊急対応訓練を

緊急の場合を想定してAED( 自動体外式除細動器)や担架をプールの近くに移動しておいたり、対応マニュアルや指揮系統を確認したりするなど、安全対策を検討し、備えましょう。

さらに、溺れを想定した緊急対応訓練をしておくことも強くすすめます。訓練は実際に時間を測りながら行うことが重要です。呼吸停止から4分経過すると蘇生する確率が50%を切るといわれます。溺れた子どもの対応はもちろん、ほかの子どもをどのように誘導するか、保育室で待機させるときに誰がどうするのかなど、実際に動いてみて初めて気づく観点があるでしょう。

プール活動・水遊びで注意すること

以下の3点に気をつけてプール活動や水遊びを行いましょう。

※厚生労働省「保育所、地域型保育事業及び認可外保育施設においてプール活動・水遊びを行う場合の事故の防止について」(平成29年6月)より抜粋。

1、プール活動・水遊びを行う場合は、監視体制の空白が生じないように専ら監視を行う者とプール指導等を行う者を分けて配置し、また、その役割分担を明確にすること。

2、事故を未然に防止するため、プール活動に関わる保育士等に対して、児童のプール活動・水遊びの監視を行う際に見落としがちなリスクや注意すべきポイントについて事前教育を十分に行うこと。

・監視者は監視に専念する。
・監視エリア全域をくまなく監視する。
・動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける。
・規則的に目線を動かしながら監視する。
・十分な監視体制の確保ができない場合については、プール活動の中止も選択肢とする。
・ 時間的余裕をもってプール活動を行う。(等)

3、保育士等に対して、心肺蘇生を始めとした応急手当等について教育の場を設ける。また、一刻を争う状況にも対処できるように119番通報を含め緊急事態への対応を整理し共有しておくとともに、緊急時にそれらの知識や技術を実践することができるように日常において訓練を行うこと。

文/佐藤 暢子 イラスト/上島 愛子

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