「異年齢保育のメリットって何ですか?」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
大豆生田 今回の質問は、「異年齢保育のメリットって何ですか?」です。答えはひとつじゃありません。ぼくの考えるいくつかの対応例をあげます。みんなで対話して、考えていきたいですね。
※公式Instagramで今回のテーマの動画(約90秒)が見られます。(←文字をタップorクリックしてください)。左下は、リール動画撮影中の様子(写真左は小学館編集スタッフ)
大豆生田啓友先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。2024年9月28日に柴田愛子先生との対談を保育セミナーで行います。←この部分をタップorクリックして詳細と申し込みサイトへ
保育は、子どもの生活に丸ごとかかわるお仕事。
そして、同僚や保護者との関係も複雑に交ざり合って、
なかなか個人の思ったとおりにはいきません。
「こんな場合、どうしたら?」
そんな現場の保育者が抱える悩みや疑問に対して、
大豆生田啓友先生から、考え方のヒントをいただきました。
これをもとに、仲間とぜひ話し合ってみてください。
Q美 うちの園は「年齢別」保育なんですけど、近くに、異年例保育をしている園があるんですね。異年例保育のメリットって何ですか。
マメ先生 同じ学年の子だけの「年齢別」保育に比べると、異年例保育は、3・4・5歳児や、2~5歳児がクラスにいたりして、上から下まで、クラスの子の年齢の差が大きくなりますよね。その分、発達や個性の差が大きく出るので、関係性に幅が出て、子ども同士の育ち合いが、生まれやすいっていわれます。
Q美 つまり、年上の子が年下の子の面倒を見てくれて、思いやりや感謝の気持ちが育つとかですか?
マメ先生 確かにそれが、一番よくいわれる話です。
もちろん、そういう面もあるけれど、大人がそれを期待しすぎると、年上の子は息苦しくなってしまうんじゃないでしょうか。
目次
異年齢の名を借りた、年齢別保育?
マメ先生 第一、もし、「5歳だからこれをやって」とか、「3歳だからこれは4歳の子にやってもらって」と大人が年齢で分けて役割を決めると、結局、それもある種の「年齢別保育」になってしまいますよね?
Q美 ああ、異年齢保育の中の年齢別保育みたいになる?
マメ先生 はい。
発達段階として、5歳になったら全員、話が上手にできるとか、器用になってるわけじゃありません。5歳児はみなできるという幻想を持ったたまま異年齢保育をやると、年齢別保育で「できる、できない」を同年の友達と比較される以上に、子どもがつらくなります。
場合によっては、5歳よりしっかりしてる3歳の子もいたりしますし。
時間による発達の差も、多様性に寄与する
マメ先生 実際、たとえば5歳児クラスに25人の子がいたとして、それらの子には受胎からの時間によって、いわゆる一般的な発達の差異が生じます(下図参照)。
さらに、その中にはいろんな個性の子がいますよね。つまり、その子の「発達してきた時間と個性(遺伝と環境によって発現)」の掛け合わせで、多様性が生じる、ということ。
ですから、そのクラスに、2年早く生まれた子どもたちが混在した25人になれば、「年齢」というよりも、「発達時間の差×個性差」で、さらにもっといろんな子が1クラスにいることになります。
その「多様性」を異年齢のメリットとして見てほしいんですね。
<例>5歳児クラスと3・4・5歳児の異年齢クラスの多様性の差(イメージ図)
「自然に」ダイナミックな関係が生まれる
Q美 たとえば…言葉が通じにくい(通常は月齢の低い)子がクラスにいれば、言葉が巧みな(通常は月齢の高い)子が丁寧に話すようになるとか、運動が得意な子の遊びに、まだそこまで発達していない子がチャレンジしたりすることはありそうですよね?
マメ先生 そう。異年齢保育では、そういうことが「自然に」起こってくるんです。
つまり、大人が、「○歳だからこうして」と決めてかかわらせるのではなく、自然にそういうダイナミックな関係が生まれることを待てれば、それが異年齢保育のよさになってくると思うんですよ。
ですから、異年齢保育の場合は、いっそうに一人ひとりのペースや個性をよく見て、遊びや環境の設定をするようにするのが理想です。
年齢別と異年齢のハイブリッドで
Q美 だけど、5歳児になると、たいてい協同でかなり高度な活動をするようになりますよね。そのとき、小さい子がいると思いどおりにできず、ジレンマを起こしそうです。
マメ先生 それはあります。
だから「異年齢保育」といっても、年がら年中、異年齢でやっている園はほとんどないと思いますよ。たいていは、朝・夕のサークルタイムや、プロジェクト的な活動の時間は年齢別でやるとか、年齢別と異年齢のハイブリッドでやっているところが多いはず。
本当はどんな活動も、個性によってグループ分けができたらいいけれど、とても複雑になってしまうし、学校が年齢別である以上、「年齢別の連携感」の育ちも保障するのがいいんじゃないかな。
今回のマメマメヒント
★この記事は、小学館『新 幼児と保育』公式Instagram(←こちらをタップorクリック!)でリール動画を配信した内容にweb版として加筆・再構成したものです。また、小学館の雑誌『新 幼児と保育』では、ほかのリール動画で配信した内容に加筆・再構成し掲載していますので、どうぞご覧ください。また、このコーナーへの質問、疑問も募集中です。下から投稿できます。
お話/大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。
構成・イラスト/おおえだ けいこ
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