私はこうやります! 0・1・2歳児の誕生会
特別な日だからといって演出をがんばりすぎても子どもたちを不安にさせるだけ。いつもどおりの生活に「ちょっと楽しいこと」を仕込んでみんなが楽しめる「おめでとう」の会をさりげなく演出しましょう。乳児(*)の誕生会は、「導入」が肝心。そのためのアイデアをご紹介します。
(*)本企画では3歳未満児を便宜上、「乳児」と称しています。
アドバイス
近藤みさき さん
まちのてらこや保育園園長(東京・中央区)。公立保育園勤務を経て現職。保育系作家、イラストレーターとしても活躍。著作に『0~3歳児 簡単カードシアター12か月』(学研教育みらい)など。
目次
いつもとちょっとだけ違う楽しいことから始めます
誕生児の紹介やインタビュー、プレゼント贈呈など、誕生会の構成は園によってある程度、決まっていると思います。乳児クラスの場合、難しいのは、どのように会を始めるかということではないでしょうか?
「お誕生会を始めます」といっても始まらないのが乳児のお誕生会。ですから私は、「生活の一部に混ざり込んでいる、いつもよりもちょっとだけ違う楽しいこと」を意識して、導入となる遊びを工夫しています。
「あれ?なにをやっているのかな?」
まずは、子どもたちが興味を示すようなしかけを用意します。その延長で、誕生児にスポットライトが当たるように構成するのがポイントです。前後の活動につながりを持たせることは、子どもたちの安心感にもつながります。
乳児の場合は、発達段階もさまざま。みんなの輪に入ることや、みんなで集まることが苦手な子どももいます。入りたい子が入っていける、好きなときに出ていける、入りたくない子は入らなくていい。先月は遠くから見ているだけだった子どもが、今月はみんなの輪に入ってくることができたりします。月を追うごとに、物理的な距離、心の距離がだんだんと縮まっていくのが理想です。
担当保育者は誕生会の構成、流れをきちんと決めておく必要がありますが、乳児の場合は思いどおりにいかないことのほうが多いものです。「こうしなきゃいけない」とガチガチに決め込まず、柔軟に対応しながら進めることが大切です。
誕生会のおもな流れ
- 遊びの延長上で会を始める
- 誕生児紹介
- 誕生児にスポットライト(インタビューなど)
- カードやプレゼントの贈呈
- みんなで歌のプレゼント など
このほか、ケーキのろうそくを消したり、ケーキを食べるなど、園によっても流れはいろいろ。
季節ごとの演出アイデア
誕生会は、誕生児にとっては特別な日。生まれた季節を意識できるような遊びを導入にして、会を始めましょう。誕生会の流れは、春の演出アイデアを参考にしてください。夏、秋、冬は、導入のアイデアを中心にまとめています。
また、0歳児の場合は、導入の部分に「いないいないばあ」を取り入れるとやりやすいと思います。春の誕生会アイデアなら、ちょうちょうがとまる前に、保育者の顔を隠して「パッ」と出すことで、注意が向いたり、興味がわいたりしてきます。そこから、無理のない範囲で展開していきましょう。
春の誕生会
導入
ひらひらと飛ぶちょうちょうでつかみはOK!
花々が美しく咲く春は、ちょうちょうのペープサートを演出のパートナーに。軽やかに誕生児のもとへ飛んでいきましょう。
「ちょうちょうがきたよ!お花はどこかな?」といいながら、ペープサートを動かす。ちょうちょうのほか、みつばちでも楽しい。
展開
誕生児をクローズアップ
誕生会の主役となる子どもの頭や手、体にとまる。前もって誕生児に花のバッジをつけておくと、その花を目指して飛んでくるように演出ができ、見ている子どもも楽しめる。
おめでとう!
誕生児を特別席に迎える。ただし、前に出たくない子どももいるので、無理強いはせず、臨機応変に。子どもが動きたくない様子であれば、そのままで会を始める。0歳児は、保育者が抱っこしたり、ひざにすわらせて参加するほうが安心できる。
誕生児の紹介やインタビュー
誕生児の紹介や誕生児へのインタビューなどを行う。このときも、個々の発達や様子を見極め、司会者である保育者が子どもの代わりに話してもよい。このあと、みんなで歌を歌ったりして会を進める。
夏の誕生会
導入
保育室に浮き輪がコロコロ……子どもたちは興味津々です
保育室にあるはずのないモノがあると、子どもたちは「なんだろう?」と興味を示します。そこで、夏は浮き輪をコロコロと転がしてみました。子どもたちの関心が浮き輪に向いてきたところで誕生会を始めます。
いつのまにか置いてあるという意外性がポイント。見つからないように、そっと転がしてみよう。
展開
「お誕生日の○○ちゃんは、浮き輪にどうぞ」と、誕生児を前に誘導する。浮き輪を座席がわりに使ってもいいし、装着したい子どもは装着する。
さらにアイデア
棒でたたくと割れるスイカのしかけを壁面に作っておく。誕生児に前に出てきてもらい、スイカ割りをしてほしいと声をかける。
テープで仮止めしておき、子どもがたたいたら保育者がテープをはがして割る。スイカの中に誕生児の名前を書いたバッジを仕込んでおいて、それをプレゼントにしてもよい。
秋の誕生会
導入
なにやら「つる」が伸びていたら引っぱってみたくなるのです
秋はいもほりの季節。そこで、編んだいもづるを保育室に設置しました。つるの先に何かがありそう……そんな仕かけがあると、引っぱる子どもが出てきます。つるの先にはいもの形に切ったカードをつけ、誕生児の名前を書いておきましょう。だれがつるを引っぱっても、主役にスポットライトを当てることができます。
ダンボール板などを土に見立て、つるを手前に伸ばしておく。
展開
いものカードに書いておいた誕生児の名前を呼び、前に誘導する。
名前を書いたいものカードをバッジにして、誕生児へのプレゼントにしてもよい。
冬の誕生会
導入
白いふわふわのポンポン雪を集めて「ゆきだるま」を作りましょう
毛糸や荷造りひもで作った白いポンポンを保育室に散らします。「雪が降ってきたから、ゆきだるまを作ろう!」と声かけをして、みんなでポンポンを拾いましょう。これを、用意しておいた台紙に貼ってもらい、ゆきだるまを完成させます。完成したゆきだるまくんに、誕生児を紹介してもらいます。
ポンポンは子どもの手の届く位置に吊るしてもOK。
展開
誕生児の名前を書いた小さなゆきだるまを、ポンポンを貼るゆきだるまの裏に仕込んでおく。ポンポンのゆきだるまが完成したら、裏から取り出して、誕生児の名前を呼ぶ。
通年使えるアイデア
導入と展開例
好きなものをデコレーションできる白いケーキを壁面に用意
貼ったりはがしたりできるパネルシアター用の不織布などを活用して、何ものっていない白いケーキと、ケーキに飾るアイテムを用意します。貼ってはがしての遊びをしたあと、「〇〇ちゃん、好きなくだものを飾ってね」と誕生児を呼び、それぞれに貼ってもらってデコレーションを完成させます。0 歳児は、貼ったものにタッチしてもらうだけでもOK。
まずは、みんなで遊ぶ。満足した頃合いで主役の子どもにスポットライトを
誕生会は誕生児が主役。ですが、遊びたいのはどの子も同じ。誕生児にやらせたいと思うあまり、興味をもって遊んでいる子どもから遊びを取り上げることのないようにしたいものです。導入の遊びの意図は、子どもたちの関心をできるだけひとつに集めてお祝いのシーンにつなげること。みんなで遊んだあとに、「今度は、お誕生日の〇〇ちゃんにやってもらいたいな」などと声をかけて、さりげなく誕生児にスポットライトを当てます。
絵本を使ったおはなし誕生会
子どもたちが好きな絵本を使って演出する方法もあります。絵本を読み聞かせながら、あるいは絵本を読み聞かせたあとに、誕生児にスポットライトが当たるような演出をしましょう。劇仕立てにすることで、お祝いする側の子どもたちも楽しく参加できます。
0歳児の場合は、保育者が誕生児を抱っこするなどして、司会・進行の保育者と連携をとりながら進めます。セリフやインタビューには、誕生児に代わって保育者が答えましょう。保育者たちが自分を交えて、あるいは友達を交えて楽しくやりとりする様子を、子どもは子どもなりに受けとめ、「楽しい」「心地よい」という経験をちゃんと積み重ねているものです。「わからないだろう」と思わず、無理なく参加できるように工夫ができるといいですね。
おはなし おおきなかぶ
アイデア1 誕生児に抜いてもらう
かぶを抜くシーンで、誕生児に「手伝って」と声をかけます。このタイミングで、前に出てきた子どもにインタビュー。子どもの名前や年齢を答えてもらいます。抜けたタイミングでインタビューしてもOK。
保育室にかぶを用意。白い袋に粘土や砂を詰めて重くしてもよい。かぶが抜けたら「力持ちの〇〇ちゃんをみんなに紹介します」などといって、誕生児にインタビューする。
保育者は、かぶに近い場所でひもをコントロール。かぶが抜けるタイミングを調整する。
アイデア2 誕生児がかぶ役になり、みんなに抜いてもらう
同じく『おおきなかぶ』を使った演出です。こちらは、誕生児がかぶの役。かぶの葉をつけた帽子をかぶり、土に見立てたセットの奥に隠れてもらいます。セットからつながるひもを会場に伸ばし、かけ声をかけてみんなでひもを引っぱると、土が倒れて誕生児が登場する仕かけです。「生まれてきたかぶくんの名前を聞きましょう」などと、インタビューします。
会場側から、頭につけた葉っぱだけが見えるようにセットの高さを調整しよう。
セットが倒れて誕生児が現れるタイミングは、保育者が調整を。盛り上がってきたところで倒すのがコツ。
三匹のこぶた
誕生児に、こぶたになってもらいます。レンガの家にみんなが集まってきたシーンを誕生会にアレンジ。「ふーふーのふー」とオオカミがやったところで、「じゃあ、今度はみんなでオオカミをやっつけよう」と誕生児を促し、オオカミを描いた風船を「ふーふーのふー」のかけ声で吹いてもらいます。オオカミをやっつけたら拍手!「かっこいいみんなのお名前を聞いてみましょう」などといって、誕生児の紹介を始めましょう。このほか、「ふーふーのふー」は、ろうそくを吹き消すシーンにつなげることもできます。
ぶたのお面を用意。誕生児全員がこぶた役になる。
風船にオオカミの顔を描いて、パペットのように使う。子どもに息を吹きかけてもらい、風船を手から離す。0歳児には、保育者が風船を吹いて目の前で飛ばして見せるだけでも楽しい。
赤ずきん
『赤ずきん』は、オオカミと赤ずきんが会話するシーンを使います。誕生児はオオカミ役に、保育者が赤ずきん役です。この演出のポイントは、赤ずきんからのインタビュー。「なんでそんなにかわいいの?」「なんでそんなに背が伸びたの?」と、誕生児にいろいろと質問をします。最後にオオカミに「たべちゃうぞー」といってもらってエンディング。「食べないでー!ケーキ食べよう!」といっておやつにつなげてもいいでしょう。
おはなし誕生会のポイント
0歳児
会話の部分は、誕生児につく保育者と司会役の保育者でやりとりして進めるのが理想的。出てくるだけでかわいい年齢なので、無理のない程度に参加できると楽しい。
1歳児
おはなしの中の象徴的なジェスチャーをできたらする。できないときは、司会役の保育者が一緒にやったり、ひとり芝居風に進める。簡単な動きであればその場でできるので、走る、跳ぶなどどんな動きが好きかを事前に調べておき、お話のシーンに合わせて動いてもらってもよい。
2歳児
知っているおはなしにのってきてくれる年齢なので、その場でできる「ふーふーのふー」や「かぶを抜く」「隠れる」などの動作をうまく組み込んで、スポットライトが当たるようにしたい。
文/木村里恵子
イラスト/上島愛子
『新 幼児と保育 増刊』2018年春号より