ふれあい遊びがいっぱいの絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は、ふれあい遊びをテーマに春にぴったりの絵本を集めました。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」の講師を担当するなど、幅広く活躍。近著に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
スキンシップがうれしい1冊
子ども図書室のカウンターは、子どもの本に対する反応がダイレクトに戻る場所です。そしてときには、パパやママの子育ての悩みや不安が、フッと漏れる場所でもあるのです。
「名前を呼んでも振り向いてくれないんです」と、つぶやいたKさん。手作りらしい抱っこひもの中では、Mちゃん( 11か月)がぐっすり眠っていました。Kさんは夫の赴任に伴い東京にいらして、もうすぐ1か月。ここ2か月間は、引っ越しに気持ちも時間もとられ、ハイハイ・たっちの時期を迎えたMちゃんのお相手は、もっぱらTV番組のDVDだったそうです。
「見せているとおとなしいので、つい…」。Kさんの話を聞きながら、自分の子育て中も同じように、テレビに頼っていた時間があったことを思い出していました。ところが、数日前、テレビを見ているMちゃんが、名前を呼んでも振り向かないことに気づきKさんはショック。
「東京では家族のほかに知り合いもいないのに、なんてさびしい」とつらくなり、以前住んでいた場所で受けたブックスタートサービスを思い出して図書館にいらしたとのこと。そこで、選んだ数冊の絵本を渡しながら、テレビ(DVD)をしばらくは封印することを提案しました。
Kさんは胸に抱えたMちゃんをあやすように、体を揺らしながら、涙ぐんでうなずきました。
2週間後の返却日、「さびしかったのは、私じゃなくてMだったんですよね」と、Kさんが特効薬と称
して気に入ってくださったのは『よくきたね』。何回も読んでは、絵本と同じように「よくきたね いいこだね いいこ いいこ」と、ご夫婦でハイハイ・たっち期のMちゃんを抱き締めたそうです。
ノーテレビデーの取り組みは、各自治体でも定着し始め、さまざまな報告や記録を見聞きします。2歳児の保護者の方からは、こんな素敵なコメントをいただきました。
「テレビを消したら、雨の音が聞こえました。娘が目を閉じて体を寄せてきました。しばらくのあいだ、そっと静かに春の雨音を聞いていました」
『よくきたね』
松野正子/文 鎌田暢子/絵
福音館書店
ふれあい遊びが楽しめる作品
『あかちゃん たいそう』
鈴木まもる/作
小峰書店
「 ねこさんと ほっぺと ほっぺ すり すり すり」。次々に登場する動物たちと握手をしたり、キックをしたり、こちょこちょしたり。1対1でも集団でも、体を動かして楽しめます。
『ぎったん ばっこん』
なかえ よしを/文 上野紀子/絵
文化出版局
実際にシーソーで遊ぶことがなくとも、視覚のおもしろさと音で大人気。手をつないで体を揺らしてみたり、両手を開いて体を傾けてみたりしながら言葉をくり返します。
『ぱんだんす』
やまぐち りりこ/文 すがわら けいこ/絵
アリス館
「 ぱんだの だんす ぱんだんす」。最初の1行目から楽しい絵本。楽しくユーモラスに元気よく読んでください。動作も自由にゆるく、おおらかに。おすわりのままでもできます。
「ぱんだんご」のシーンは、グーの手で糸巻き歌のように、くるくる回したり、手でボールを作って揺すったりしてもよいでしょう。幅広い年齢で遊べますので、行事などでも大活躍します。オリジナル体操を考えるのも楽しそう。
『きんぎょが にげた』
五味太郎/作
福音館書店
手さし、指さしができ始めたら遊びたい1冊。金魚を見つけにくい子もいるので、ページをめくると
きには必ず、チョンと金魚を指さししてからめくります。ビッグブックもあり。
『まて まて まて』
こばやし えみこ/案 ましま せつこ/絵
こぐま社
わらべうたの節は特にありません。赤ちゃんのハイハイを追うように「まてまてまて」とテンポよく読んでください。そのリズムが、地方や年齢によって違うからよいのです。
おさんぽ かけっこ よーい、どん!
『たたくと ぽん』
寺村輝夫/作 和歌山静子/絵
あかね書房
たまごを「ぽん」。たたくと、めんどりに。めんどりを「ぽん」。たたくと、たまごが生まれ、やがて、ひよこになって空へ行進。「わんつう、わんつう」、一緒に行進しましょう。
『かけまーす どん』
五味太郎/作
絵本館
女の子が元気な絵本です。「 かけまーす どん」「おいつきまーす」「おいぬきまーすどん」「どん どん どん」と、ぱっちりとした目の女の子が一気に走り抜けて爽快!
『おやおや、おやさい』
石津ちひろ/文 山村浩二/絵
福音館書店
「 そらまめ そろって マラソンさ」「りっぱな パセリは つっぱしる」。ダジャレは通じずとも、
テンポのよい言葉と、手足のある野菜が楽しい。声に出して応援しましょう。
『はしるの だいすき』
わかやま しずこ/作
福音館書店
「 はしってくるのはだれかしら」。上半身が右端に、めくると走るちーたーが! しまうま、らいおん、きりんにぞう! 「びゅん びゅん」「ぱんか ぱんか」と音の違いが楽しい。
『ごろん ごろん』
まつおか たつひで/作・絵
ポプラ社
かえるの『ぴょーん』で作者をご存じの方も多いことでしょう。「かえるが…せ~の」でページをめくると見開きで「ごろん ごろん」。こいぬも、だんごむしも、ぺんぎんも! でも、かめはどうでしょう? 答えは絵本で確かめてください。
一緒にでんぐり返しをしたり、でんぐり返しが無理なら横にコロコロ転がるのもよいですね。表紙から裏表紙までしっかり見せてあげましょう。
『かけっこいっとうしょう』
アン&ゲオルグ・ハレンスレーベン/作 ふしみ みさを/訳
小学館
子どもはかけっこも、1等賞も、大好き。内容は少し大きい子向きですが、母ねこと子ねこの会話でお話が進みますので、お昼寝前など語りかけるように読んでください。
『ごろ ごろ ごろ』
長 新太/作
BL出版
ごろごろボールがやってきてゾウに当たると、ゾウがボールのように。ゾウがお母さんに当たると、お母さんが丸くなり…。「〇〇ちゃんに当たったよ」と、遊びに発展も。
『くりんくりん ごーごー』
佐々木マキ/作
福音館書店
くまの一輪車、らいおんのバイク、ぞうの自動車、みんなどんどん行ってしまいます 。でも子ども
の三輪車が登場すると…。リズミカルに読み、最終ページはゆっくりと。
『いちにのさんぽ』
ひろかわ さえこ/作
アリス館
表紙を見ただけで一緒に歩きたくなりますね。主人公は手をまっすぐに振り上げ、足も高く上げお散歩です。道が連続するよう、本を水平に、揺らさないように持ちましょう。
『かけっこ かけっこ』
中川ひろたか/文 北村裕花/絵
講談社
とにかく走っています。途中、さまざまな動物が「なかまにいれて」とやってきますが、来るもの拒まず、どんどん仲間が増えていきます。給水所もライオンも集団で通過…と思いきや…。言葉の少ない作品ですが、その分絵で語らせています。ゆっくり絵を読み取る時間を持たせてください。終盤、たたみ仕掛け絵本となっています。落ち着いて開きましょう。
『ようい どん』
わたなべ しげお/文 おおとも やすお/絵
福音館書店
懐かしいと思う方も多いのでは? 1980年以来読まれ続けています。平均台、鉄棒、跳び箱、トンネル、網。くまくん、あまり運動が得意ではなさそう。みなで応援しましょう。
『とこてく』
谷川俊太郎/文 奥山民枝/絵
クレヨンハウス
不思議な感じの絵本です。虫の居場所から宇宙まで、とにかく、とことこ、てくてく、ぶらぶら、歩きます。そしてまた… 裏表紙から表紙へと…旅に終わりはないようです。
『新 幼児と保育』2020年増刊春号より
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