心が落ち着くわらべうた遊び【0・1・2歳児のふれあいわらべうた】

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環境の変化に不安いっぱいの春。心和むわらべうたの節使いに合わせ、揺れて、ふれあって、遊びましょう。

お話

郷右近博美 さん
(わらべうた講師)

ごうこん ひろみ ● 福島大学教育学部卒。在学中より、わらべうたや日本音楽の重要性、「コダーイ・システム」「多文化音楽教育」を学ぶ。中学校の音楽教師を経て、1998年より、多地域の伝承のわらべうた遊びを日本の文化とともに親子や子どもたちに伝える活動を始める。全日本カウンセリング協議会2級カウンセラー。岩手県奥州市在住。

心が落ち着くわらべうた遊び

遠い昔も、大人は直接子どもに向き合って歌を歌ってやったり、しぐさを見せたり、体にやさしく触れたりして子どもを楽しませ、遊んでいました。「自分だけに向き合って遊んでくれる」大人に対し、子どもは「自分を大切に思ってくれている人」と感じ取ります。

わらべうたは、だれかが歌いながら遊び出し、口伝えに伝わってきた歌。歌詞は短く、音の数も少ないため小さな子どもでも覚えやすく、一緒に声を合わせて歌うことで、心がふれあうような喜びも得られます。子どもの気持ちにそっと寄り添いながら遊んでみてください。

「かたどの ひじどの」(新潟)

かたどの ひじどの てっくび てのひら
まんじゅう きたろう
せいちょう いしゃどの
こんぼこしょ

遊び方
肩(かたどの)、ひじ(ひじどの)、手首(てっくび)、手のひら(てのひら)、親指(まんじゅう)、人さし指(きたろう)、中指(せいちょう)、薬指(いしゃどの)、小指(こんぼこしょ)の順に、歌に合わせて触れたり、軽くつまむ。

身体の部分を、形の特徴などからイメージして歌っています。「肩」や「ひじ」は「殿」をつけて人の名に。ぷっくりとした親指は「まんじゅう」、人を招くときに使っていたのかもしれない人さし指は「きたろう」という人の名に。一番長い中指は「成長」、薬指は「医者どの」、一番小さい小指は「こんぼこしょ(方言で『小僧』の意)」。名前のおもしろさとともに、子どもはさわられた感覚によって自分の体を知ることができ、大人は子どもの体の成育や変化に気づくことができます。

「にぎ にぎ にぎ」(福島)

にぎ にぎ にぎ(くり返す)

遊び方
言葉に合わせ、大人が自分の顔の横で手を握ったり開いたりするのを赤ちゃんに見せて楽しませます。

目でものを追うようになった2か月ごろからの遊びです。子どもは、自分に歌いかけられていることがうれしく、また手の動きを見て楽しみます。月齢が上がり指先を上手に動かすことができるようになると、大人の真似をして一緒にやるようになります。子どもの成長を確認し、それを喜ぶことができるのもわらべうた遊びのよいところです。

「 ゆっき ゆっき」(岩手)

ゆっき ゆっき もののき
ももがなったら たもれや
だれに たもるべ
おじいさんさ いつつ
おばあさんさ よっつ
おとうさんさ みっつ
おかあさんさ ふたつ
あにさんさ みっつ
あとののこりは (名前)ちゃんだよ

遊び方
横になっている子どもに、または子どもを抱いてやさしく揺らしながら歌って聞かせます。1・2歳の子どもは、足を伸ばした上にすわらせ、両手をつないで揺らしても楽しいでしょう。

*人の名前や数は自由に替えてみましょう

同じような歌詞の歌が、ほかの地域にも伝わっていますが、これらはもともと、子どもが木登りをして枝を揺すりながら歌った歌です。乗った枝が体とともに揺れるスリルと心地よさから歌が飛び出したのでしょう。「桃」は、邪気を払う不老長寿のシンボルとされていました。その桃をだれにあげようかと歌う、子どもたちのやさしい気持ちが伝わってきます。

歌い継がれるうちに、岩手では子どもを抱いて揺らしたり、嬰児籠(えじこ…赤ちゃんを寝わらかせておくための藁で編んだ籠)を2本の棒に乗せ、転がしてあやすときにも歌われるようになりました。歌の最後は子どもの名前を言って抱きしめましょう。

参考文献/『日本わらべ歌全集』(柳原出版)より「第2巻(下)岩手のわらべ歌」「第9巻(下)新潟のわらべ歌」、『日本のわらべうた 戸外遊戯歌編』(文元社)
楽譜浄書/南舘 健
イラスト/島田恵津子

『新 幼児と保育 増刊』2021年春号より

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