その対応で大丈夫?重大事故から子どもを守る!

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保育・教育施設で発生する重大事故※1が増えています。『新 幼児と保育』が「ほいくる」とアンケートを実施、保育者のみなさんが園で実際に経験した重大事故一歩手前の事例を教えてもらいました。子どもの施設の安全対策に詳しい猪熊弘子さんと一緒に対応策を考えていきましょう。

※1 死亡事故や、治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故。2021年に全国の保育所や幼稚園、放課後児童クラブなどで子どもが死亡または重傷を負った事故は、前年比332件増の2347件となり、現在の集計方法にした2015年以降で最多となった。

お話

猪熊弘子 先生

ジャーナリスト、一般社団法人子ども安全計画研究所代表理事。『死を招いた保育』(ひとなる書房)で日本保育学会 日私幼賞・保育学文献賞受賞。著書に『園力アップ Series 3 重大事故を防ぐ園づくり研修・実践・トレーニング』(ひとなる書房/共著)などがある。名寄市立大学特命教授、城西国際大学特命連携教授。明福寺ルンビニー学園幼稚園・ルンビニー保育園副園長。

HoiClueユーザーが経験したヒヤリハット事例&エピソード

[保育や子育てが広がる“学び”と“遊び”のプラットフォーム]ほいくる

本記事に掲載した項目以外のアンケート結果は、「ほいくる」で紹介しています

有効回答数:110件
調査時期:2022年7月12日~18日

遊具から転落した!

ジャングルジムに登って遊んでいた2歳児が、手を滑らせて落下し、上唇小帯(じょうしんしょうたい)(※2)から出血した。

※2 前歯の中央にあるスジ

園の対応やその後対策したこと
・すぐに止血し、腫れていたので冷やしてから歯科医へ行った。
・ジャングルジムには必ず保育者がつく。つけないときは使用禁止に。
(公立認可保育所)

ジャングルジムは1歳児や2歳児の落下事故が多いです。1段目は低いので1歳児でも登れてしまう高さ。2段目、3段目……と等間隔で登りやすいため登っていってしまい、かなりの高さに到達することもあります。基本的にはジャングルジムで遊べるのは3歳以上とし、1・2歳児が登れないように、1段目と2段目を何かで覆って足をかけることができない対策をしておくことをおすすめします。

固定遊具は落下の危険と隣り合わせ。保育者の監視は必須です。園庭や、よく行く公園について固定遊具の見取り図を作っておき、「子ども〇人に対して保育者何人必要」「監視の保育者はここに立つ」などのシミュレーションを事前に行ってから遊ぶようにします。

あわや窒息!

えんげ嚥下(※3)がうまくできない子が、リンゴを喉に詰まらせてしまった。

※3 食べ物を飲み下すこと

園の対応やその後対策したこと
刻み食にする。子どもから目を離さないようにする。
(公立認可保育所)

実はリンゴは要注意食材! リンゴによる窒息事故は何度も起きています。2〜3ミリにスライスしたもので1歳児が窒息し、意識不明になる事故も起きています。2歳でもスライスしたリンゴを飲み込めない子どもがいます。ちょっとパサパサしていて、飲み込みづらいんですね。薄くすればよいというわけでもなくて、逆に小さなかけらが気管に入ってしまう危険が増します。離乳食から幼児食へ移行する時期は、リンゴは細かく刻む以外にすりおろすか、煮込んでコンポートにするのもいいですね。

ただ「目を離さないようにする」という対策は現実的ではないと思います。保育士の配置基準を考えれば子どもを1対1でずっと見ていられるわけではないので、必ず目を離す瞬間はあります。そういう前提で食べるものの形状で対策をしないと、安全とはいえません。

食事の時間にいつも眠そうな0歳児がいる。食べながら寝てしまって窒息につながらないか心配。

園の対応やその後対策したこと
手を洗ったりして、目が覚めるようにしている。あまり眠そうだったら食事を中断する。
(公立認可保育所)

そのお子さんは登園時間が早いですか?たとえば7時半に登園する子どもが、9時に登園する子どもより先に眠くなってしまうのは当然といえます。0・1・2歳児ならクラス一斉ではなくグループ別に食事をする園も多いと思いますが、そのグループを月齢ではなく登園する時刻でグループ分けをしたほうが、食事や睡眠のリズムがラクにつくれるかもしれません。

それでもどうしても眠くなってしまう子はいます。私の勤務園では食事の途中にうとうとし始めた子がいたら少し歩き回るなどして、シャキッとしたところで再度昼食をとるというのを試しています。ちょっと乱暴かなとも思いましたが、昼食を抜いてしまうとお昼寝の途中で結局おなかがすいて起きてしまいます。食事を抜くのは最終手段です。

コロナ禍の今、離乳食から幼児食への移行時期がますます危ない!
離乳食から幼児食に変わる時期に、口の動かし方を子どもに伝えることは、窒息などの事故を防ぐためにとても重要です。園で食事の時間に保育者が食べる口元を子どもに見せて「モグモグだよ」と伝え、子どもは保育者の口の動きを見て「こういうふうにすればいいんだな」と学びます。それがコロナ禍によって難しくなりました。保護者は子どもと一緒に食事をしてはいけないことになっています。透明マスクを使うのはひとつの手ですが、曇ると口元が見づらくなります。家庭で学んでくれることを期待したいところですが、子どもの食に無関心な保護者もいるのが実情です。コロナ禍で子どもを丁寧に見る精神的余裕のない保護者が増えていますが、「モグモグ」は必ず子どもに教えなくてはいけないことだと、保護者に根気強く知らせていきましょう。

熱性けいれんで救急車!

1歳児が昼寝の時間に熱性けいれんを起こし、看護師の判断で救急車を呼んだ。発熱して保護者の迎えを待っていたところで、担任は休憩中だった。

園の対応やその後対策したこと
職員会議を重ね、対応マニュアルを作り直した。
(企業主導型保育施設)

昼寝中に発熱するケースは多く、発熱がけいれんにつながることから、「熱性けいれんが起こるもの」と想定し、用心しておくべきです。

けいれんが起きたらすぐに気づいて対応できるように、明るいところで寝ることを徹底してください。ビルの中に設置された保育園では、電灯を消すと真っ暗になってしまいますので、天井の明かりをつけたままでもまぶしすぎないように天幕のようなもので遮るか、行灯のように床に置けるタイプの明かりを活用するとよいでしょう。子どもの顔の顔色までよく見える明るさであることが重要です。SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防策にもつながります。

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商品問い合わせ先/(株)良品計画 0120-146-404

実は骨折していた

登園した園児の様子がおかしいため、保護者に受診依頼をし、病院で診てもらったところ、家庭で骨折していたことがわかった。母親は気づいていなかったとのこと。

園の対応やその後対策したこと
活発な子で、そのせいか保護者はケガの見落としが多い。登園時の視診を慎重に行うようにしている。
(企業主導型保育施設)

骨折のような大ケガを保護者が見落とすことはふつうありません。ケガをした子どもを病院に連れていかないのは「ネグレクト」、児童虐待の一種です。児童虐待防止法では「虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、児童相談所等に通告しなければならない」と規定しています。

この親子がそうとは限りませんが、児童虐待の相談件数は年々増えています。コロナ禍で家にこもる時間が増えているここ数年はいっそう深刻さを増しています。「虐待はあり得る」という目で注意深く子どもたちを見てください。

やけどのおそれ

子どもが着替える部屋にIHクッキングヒーターがあり、いつもは電源を入れてないのにたまたま入れたことがあった。

園の対応やその後対策したこと
子どもがいるときは絶対に加熱しない。
(私立認可保育所)

そもそもなぜクッキングヒーターのある部屋で子どもが日常的に着替えを行っているのでしょうか。場所を変えられませんか。まずそこから園で話し合ったほうがいいでしょう。たまたま電源を入れてしまったということですが、今後絶対にそのようなことがないとは言い切れないはずです。

過去にはアイロンビーズを使った製作の時間に子どもがやけどを負った事故もありました。「アイロンは熱いよ」と注意を促すことも大事ですが、熱源のある部屋に子どもは入れないとするのが園では無難です。

誤飲の危険!

0歳児クラスの木製サークルの付近にすわっていた男児が、口をモゴモゴさせてるのをみつけ、口を開けてみたら、ネジがあった。木製サークルの緩んだネジを男児が外してしまい、口の中に入れてしまったようだ。

園の対応やその後対策したこと
木製サークルのネジが緩い箇所がないかすぐに確認し、しっかりと締め直した。またすべての部品が揃っているかどうか確認した。
(企業主導型保育施設)

これは本当によくあるケースです。防止策としては外れないように上からテープを貼るなどし、難しいかもしれませんが、毎日点検をすることです。

誤飲については、おもちゃ、特におままごとの食材は要注意です。子どもたちはおままごとに夢中になるほど、本当に口に入れてしまうことがあります。誤飲チェッカーでクリアしたものでも、ぎりぎりだったら念のため使用を控えましょう。

柵に挟まれた!

柵から手や足が抜けなくなった子どもがパニックになった。

園の対応やその後対策したこと
柵の幅を変えることは難しいので、とりあえずは子どもたちに危険だということを何度も伝えた。
(私立認定こども園)

危険ということを子どもに言い聞かせるだけの対応では、またいつか再発します。柵を変えられないなら、緩衝材を巻いてすき間を狭くするなどの対応をしてください。

国土交通省が2014年に定めた「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」によると、子どもの挟み込み対策として「頭部、指、身体などを挟み込むような開口部、隙間をなくす」とされ、具体的なサイズの基準も示されています。

これを機に、挟み込みがないよういろいろなところをメジャーで測ってみてください。金属製で先端部分に直角のツメがついているコンベックスメジャーが使いやすいです。測定するものの基点に引っかけたり、角を当てたりできて正確に測れます。

子どもがいなくなった!

保育中の抜け出しがあり、園内じゅうを大捜索した。結局、保育室内の押し入れの奥の、荷物の間に潜んでいた。

園の対応やその後対策したこと
押し入れ内の整理整頓をして見通しをよくした。
(私立認定こども園)

事件や事故につながる抜け出しには本当に用心しなければなりません。密閉空間に閉じ込められたこのケースでは、熱中症のおそれもありました。

事後に押し入れの整理整頓をしたということですが、大切なことです。教材庫や押し入れに使わないものをむやみに取っておくことは、安全性という面でもやめるべきです。

子どもに入ってほしくない場所には鍵をかけましょう。閉め忘れが心配なら、扉を閉めると自動的に施錠されるタイプがおすすめです。

安全マニュアルを見直そう!

マニュアルは育てていくもの

園の特性はそれぞれなので、安全マニュアルは園ごとに違ったものになるはずですが、『新幼児と保育』と「ほいくる」が実施したアンケートでは、「園が独自に作成・アレンジしたマニュアルがある」と回答した人は約55%にとどまりました。次に多かった回答は「園を運営する法人の共通のマニュアルがある」でした。

「わからない・見たことがない」が12.7%はちょっと多いですね。管理職だけが知っているマニュアルでは意味がないです。

※回答比率の数値は小数第2 位で四捨五入しているため、合計が100% になるとは限らない。

一度作ったマニュアルを使い続けるのではなく、最低でも年に1回は更新してほしいと思います。子どもは毎年変わるので、対応すべき内容も変わってくるからです。「今年度の〇歳児」を思い浮かべながら、職員全員で読み合わせをしましょう。

年度の途中でも、気になることがあったら職員会議で「ここを変えたい」と検討できる状況ができていれば理想的ですね。マニュアルは作ったら終わりではなくて、育てていくものなんです。たとえば近所で工事が始まれば、お散歩のルートも変えなければなりません。臨機応変に書き込みができて、変わり続けるのがいいマニュアル。多少見た目が汚くてもいいのです。

「無理です!」がいえる関係づくりがベース

いくらマニュアルを充実させても、人なので見落としはあります。体調が悪いときに注意力が散漫になることもあるでしょう。そんなとき、「ごめん、おなか痛くて無理!」といえる関係、「大丈夫、私が代わるよ」とカバーしあえる関係づくりが大事です。

重大事故は、ひとりの先生が失敗したから起こるということはなくて、それまでの複数の人の見逃しや無関心が積み重なった結果起こるものです。園内に危険な箇所を見つけたら「ここ、変えたほうがいんじゃない?」とすぐに言えて話し合える風通しのよさが、子どもの安全を守ることにつながっています。

教育・保育施設認可外保育施設等における事故防止及び対応マニュアル

インターネットに掲載されているものをベースにこれから安全マニュアルを作ったり、自園のものと照らし合わせて見直しをしたりするならば、新潟市こども未来部保育課が作成し、公開しているものがおすすめです。いろいろな場面別、年齢別のチェックリストなどもあって、使いやすいです。

新潟市こども未来部保育課
令和3年2月改訂版

文/佐藤暢子
イラスト/上島愛子

『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2022秋冬より

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