子どもの「育ち」が見える展示
子どもの活動やそれによって生み出された製作物の数々は、すべてがかけがえのない「育ちの証し」。作品展はもちろん、卒園・進級時期に向けて園の展示の工夫を紹介します。
目次
小さな子から年長クラスまで「1年ごとの育ち」に触れる作品展
北会津こどもの村幼保園(福島・会津若松市)
小さなおうちに見立てた保育室が遊戯室をぐるりと囲むように並ぶ、北会津こどもの村幼保園。進級時には成長を実感しながら、クラスごと、隣の部屋(おうち)へと引っ越していきます。作品展ではその環境をそのまま生かし、0歳から1歳、2歳、と年齢順に展示コーナーを設置。1歳ごと、花の成長になぞらえた案内板とともに展示しています。
「絵がうまく描けるとか、工作がうまく作れるとかではなく、そのときの心の動きがどのように表現されているのかを見てもらいたいと思いました。心の動きに乗せて線を引いたり色をつけたり、形を組み立てたり。それぞれの作品に、子どもたちの思いと意味が込められています。小さい子から年長まで、その作品を丁寧に見ていくと、子どもたちの心の成長が感じられます」(園長・最上学先生)
0歳児
1歳児
2歳児
3歳児
4歳児
各展示室を回ってカードを完成させるカードラリーも、作品展全体を見てもらう工夫のひとつ。
5歳児
写真提供/北会津こどもの村幼保園
日常の活動をそのまま展示。一人ひとりにスポットライトを
めぐみ第二保育園(東京・府中市)
めぐみ第二保育園では3年前から作品展「ワンデーミュージアム」を開催しています。造形活動に取り組む中で、子どもたちの興味や発想に触れた保育者たちから「保護者にもぜひ見てもらいたい」という声があがったのがきっかけでした。0・1・2歳児の作品、3・4・5歳児の作品のほか、ホールには全園児の作品が集合します。
「興味のあることや夢中になるものは、子どもによって違います。作品展ではそれぞれの取り組みや成長過程を大切に、一人ひとりにスポットライトが当たるように工夫をしています。ありのままの姿を紹介する保育者コメントの展示もそのひとつ。保育者もワクワクした気持ちで取り組んでいるようです」(副園長・内藤孝子先生)
乳児の部屋
幼児の部屋
3 歳クラスで現在進行中で盛り上がっている「消防車作り」。製作途中の作品も子どもたちのいまを伝える貴重な展示品。
異年齢の作品を見た目も楽しくひとつの世界にまとめて展示。見せ方を考えるのは、おもに「作品展プロジェクト」の保育者たち。9 月ごろから製作してきたもののリストを出しあい、準備を進めていく。
全園児
写真提供/めぐみ第二保育園、遠藤栄蔵
行事じゃなくても。省スペースでも「育ち」の見えるアイデア展示
日常の展示 日々生まれる作品をリアルタイムで展示する
みどりのもり都田(静岡・浜松市)
みどりのもり都田では、2019年度から年に一度の作品展に変えて、いつでも展示ができる「ギャラリー展」を始めました。玄関ホールを使い、日々の自由製作や造形活動で生まれる作品を、展示したいときに展示しています。 「成長をリアルタイムで感じてほしいというねらいがあります。素敵だな、と感じたときはいつでも。子どもたち自身が”飾りたい“ということもあります。立ち寄った保護者の方からの、きれいだね、素敵だねという声は、子どもたちにとって自信にもつながっているようです。週末、作品を持ち帰るときには、”今度は『おうちギャラリー展』をしようね“と言葉を交わす親子の姿も見られます」(山崎惟先生)
卒園時期の展示 1年の活動記録を時系列に再掲示する
小学館アカデミーたまプラーザ保育園(神奈川・横浜市)
写真を使って丁寧に綴ってきた日々の活動記録を再掲示するのも、子どもの育ちを展示する工夫のひとつ。
「卒園式には、玄関ホールから式を行う2階の保育室までの壁に、4月からのドキュメンテーションを並べて展示しています。1年間の活動を振り返ることで、さまざまな場面が思い起こされ、あらためて子どもの育ちを感じます。親子で思い出を分かち合う大切な時間になっています」(園長・石山貴恵先生)
写真提供/みどりのもり都田、小学館アカデミーたまプラーザ保育園