子どもの姿を伝える「保育要録」「指導要録」記入事例集【3・4・5歳児】
「要録」の時期になりました。本誌が行ったアンケートでは中堅やベテラン保育者であっても書き方に悩む方は多いようです。本記事では8つの記入例を神長美津子先生のコメントとともに紹介します。文章の構成の方法や表現の選び方の参考にしてください。
監修・コメント作成
神長美津子 先生
大阪総合保育大学特任教授。「要録」に関連する共著に『わかりやすい! 平成30 年改訂 幼稚園・保育所・認定こども園「要録」記入ハンドブック』(ぎょうせい)、『幼稚園・保育所、認定こども園対応 子どもの育ちが見える「要録」作成のポイント』(中央法規出版)などがある。
目次
「保育要録」「指導要録」アンケート
まずは、『新 幼児と保育』とHoiClue が行ったコラボアンケートから、調査結果を紹介します。
「保育要録・指導要録 みんな、どうしてる?~『新 幼児と保育』×HoiClue コラボアンケート~」
調査時期:2021 年11 月9日~ 15 日 有効回答数:146 件
調査対象・方法:「ほいくる」ユーザーによるオンライン調査
Q.保育要録・指導要録で困ったこと、大変だと思うことがあったら具体的に教えて
昨年度までに「要録」を書いたことがある人に、編集部が聞きました。
肯定的に書くというけれど…
- 我慢ができず、すぐに暴力的な言動があると書きたいとき、マイナスにとらえられないような書き方にするのが難しかった。(公立認可保育所 保育歴20年以上 )
- 育ってきた面を書くべきなのに、課題点ばかりを意識してしまうことが多い。(私立幼稚園 保育歴20年以上)
表現が難しい!
- 伝えたいことをきちんとした言葉で書くことが難しいと感じる。(公立幼稚園 保育歴6年以上~ 10年未満 )
- 似たような表現ばかり使ってしまう。ボキャブラリーが足りない!(公立幼稚園 保育歴20年以上)
- 文章がうまく書けず、何度も書き直しをしたことが大変つらかった。(私立幼稚園 保育歴10年以上)
- 要録を初めて書いたときは、自分のとっていた記録を要録にふさわしい文言にするのに苦労した。(私立認可保育所 保育歴10年以上 )
- とにかくあの狭い枠の中でその子を表現する文章を考えること。(私立幼稚園 保育歴6年以上~10年未満 )
- 目につく子ばかり詳しく書いてしまう。そうでない子は定型文になりがち。(私立認定こども園 保育歴10年以上)
Q.管理職や先輩、同僚からのアドバイスで役立ったことがあったら教えて!
粗さがしをするのではなく、これまで子どもが成長したところを思い出し、「さらに伸ばすための援助は……?」と考えるといいようです。
- その子にどう環境を整えたらどこが育ったのか、どう援助したら成長がみられたのか、悪い面も肯定的な書き方で「こうすることで成長がみられると思われる」みたいな書き方ができるように。(公立幼稚園 保育歴20年以上)
- 園長の助言で、子どもの悪いところを書くよりもよいところを意識して書くと、次への課題が柔軟に思いつくようになった。(公立認定こども園 保育歴20年以上)
- 書きやすい子から書いていくとあとで苦しくなるので、1人当たりにかける時間を決めて必ず出席番号順に書いていくといいよ、と教わった。(公立認定こども園 保育歴10年以上)
Q.気をつけている、工夫していることがあったら具体的に教えて!
要録作成を意識しながら日ごろの保育記録を書いているという方がたくさんいました。中には専用ノートを作っている方もいます。
- 毎日、一人ひとりのひと言日記をつける。(公立認可保育所 保育歴10年以上)
- 4月からの記録をつける際に、要録作成を見越して「10の姿」を意識して記入しておく。(私立認可保育所 保育歴10年以上)
- 各クラスの目標のことに絞って個人記録をピックアップしておく。(私立認可保育所 保育歴3年以上~ 6年未満)
- その子の成長がみられたときを記録に残しておく。きっかけや過程を含めて。「こうすることでここが育った」という記録の書き方を大切にした。(公立幼稚園 保育歴20年以上)
- 児童票を5領域に分けて書いておくと、要録を書く際にまとめやすかった。(私立認定こども園 保育歴3年以上~ 6年未満)
Q.要録作成のため準備は、いつごろから始めることが多い?
年明け1月ごろという回答が最も多く、43.4%を占めました。年度初め4月ごろと回答した人も4分の1近くいました。
「要録」作成・提出までのスケジュール例
くろばね保育園(栃木・大田原市)の場合
新任者への説明会*1 …………4月上旬
作成開始…………1月上旬
(市幼保小連絡会担当者会議…………1月下旬*2)
管理職への提出…………2月中旬
修正・再提出…………3月中旬
小学校への提出…………3月下旬
*1 新任者への説明会では児童票の引き継ぎも行う。保育日誌をもとに「10の姿」を意識しながら児童票に記入し、3か月ごとに管理職に提出する。
*2 保育園からは5 歳児担任が参加。個別の教育支援が必要な児童のケースについては、保育要録における引き継ぎだけでなく、この会議を踏まえて小学校での支援計画が立てられる。
要録記入のポイント
・1年間をふりかえり、「5領域」の視点から著しく発達したこと、変化したことを書きます。
・次の指導者(担任)がどう援助をしていけばよいかがわかるように、具体的に書きます。
・特に5歳児は、幼児期の終わりまでに育ってほしい「10の姿」を意識して言葉を整理します。
※ 保育園では 「保育所児童保育要録」、認定こども園では 「幼保連携型認定こども園園児指導要録」、幼稚園では「幼稚園幼児指導要録」と名称は異なりますが、すべて 就学前の子どもの軌跡をまとめたものです。
※ この特集では、保育園、認定こども園、幼稚園それぞれの記入様式に沿って作成した記入例を掲載しています。記入例とそれに対するコメントは、園の種類にかかわらず役立てていただける内容になっています。
※ この記事の作例は、実在する特定の子どもの記録ではありません。どの園にもいそうな子どもを想定して書かれています。
5歳児の例1
保育所児童保育要録
5歳児の例2
保育所児童保育要録
5歳児の例3
幼保連携型認定こども園園児指導要録
5歳児の例4
幼稚園幼児指導要録
4歳児の例1
幼保連携型
認定こども園園児指導要録
4歳児の例2
幼稚園幼児指導要録
3歳児の例1
幼保連携型
認定こども園園児指導要録
3歳児の例2
幼稚園幼児指導要録
構成/佐藤暢子
イラスト/岡本典子
協力/くろばね保育園(栃木・大田原市)、認定こども園あかみ幼稚園(栃木・佐野市)、上越教育大学附属幼稚園(新潟・上越市)
『新 幼児と保育』2022年2/3月号別冊ふろくより