「男性保育士に戸惑いがあります」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
大豆生田 今回の質問は、「男性保育士に戸惑いがあります。どうしたらいいのでしょうか?」です。答えはひとつじゃありません。ぼくの考えるいくつかの対応例をあげます。みんなで対話して、考えていきたいですね。
※公式Instagramで今回のテーマの動画(約90秒)が見られます。(←文字をタップorクリックしてください)。右下は、リール動画撮影中の様子(写真左は小学館編集スタッフ)
大豆生田啓友先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。最新刊は、『保育の「ヘンな文化」そのままでいいんですか!?』(柴田愛子先生との対談集・小学館)。
保育は、子どもの生活に丸ごとかかわるお仕事。
そして、同僚や保護者との関係も複雑に交ざり合って、
なかなか個人の思ったとおりにはいきません。
「こんな場合、どうしたら?」
そんな現場の保育者が抱える悩みや疑問に対して、
大豆生田啓友先生から、考え方のヒントをいただきました。
これをもとに、仲間とぜひ話し合ってみてください。
Q子 今まで、うちの保育園には女性しかいなかったのですが、今年、男性の先生が採用されて入ってきました。気にすることはないと言われるんですけど、やはり戸惑いがあります。どういう対応をしたらいいですか?
目次
男性の保育士はまだ希少
マメ先生 上のグラフを見てもわかるように、男女とも保育士の登録者数は増加中です。でも、男性はまだ4%程度。しかも、男性がいる園には複数人いるけれど、ひとりもいない園が半分以上あるんですよ。
だとすれば、「初めての男性保育士」が、まだまだこれから半数の園で起こり得るということになりますね。
園によっては、男性用のトイレや更衣室が作れない、女性だけの関係性を大切にしたいなどの理由で、男性を受け入れない方針の園もあると聞きます。
最初は戸惑っても慣れてくる
マメ先生 逆に、男性を採用している園はほぼ、「多様な大人が園にいるほうがよい」という理由から、採用を決めています。
母子家庭の子が、まったく大人の男性とかかわることなく、小学校にあがるようなことがないように、という配慮も含まれます。
そういう経緯で、毎年全国で4500人くらいずつ男性保育士が増えていますが、初めての男性保育士に「最初は戸惑った」という女性は、少なくないんです。でもみんな、じきに慣れていますから、大丈夫ですよ。
もともとの男女の違いはある
マメ先生 もう少し男女の多様性についていうと、もともと、男性と女性は体格が違うし、脳の働き方も違います。一般的にですが、男性は機械系に強かったり、リスクに対して大胆な人が多い。
こうした得意・不得意や性格の傾向性は、生まれ育った環境の影響以前に、本来の脳の傾向が女性とは違うからだという研究がたくさん出ています。
環境からまだほとんど影響を受けていない乳幼児とかかわっている保育者なら、その違いにピンとくるのでは?
Q子 はい。全員がそうではないにしろ、男の子には、やんちゃな子が多いし、女の子は、かわいいもので遊ぶが好きな子が多いと思います。
「男性だから~が得意」だと決めつけない
マメ先生 つまり、男性が園に入ることで、女性にはない「資質」を持った人が増えるかもしれないということ。これは園の保育にとって、メリットです。
その一方で、男だから、「絶対に機械系に強い」とか「怖いもの知らずだ」と決めつけないこと。そこは配慮したほうがいいです。
Q子 女性の同僚は、「最近の“か弱い”男性だったら、私のほうがずっと力はあるし、怖いもの知らずだよ」と豪快に笑っていました。
マメ先生 頼もしい!
そんなふうに、一般的な女性より男性的な女性はいるし、その逆のパターンもあります。
でも、もし“か弱い”タイプの男性の保育者であれば、同じタイプの男の子の気持ちは、きっと女性よりよくわかるはずですよね。男女とも、それぞれの性の立場だからこそ、理解できることって、ありますから。
いっそ正直に気持ちを伝える
マメ先生 万が一、慣れるまでどうしてもドギマギしてしまうようだったら、いっそ正直に、「実は、今まで園に男性がいなくて、どうしたらいいか戸惑っている。けっして悪気があるわけではない。もし、何か気になることがあったら教えて」と、伝えてもいいんじゃないかな。相手も嫌われていると感じたら、つらいと思います。
そして、「男性だから」と意識し過ぎると、どうしても、粗(あら)ばかりが、目についてしまいます。そこは意識して、その男性のいいところを見つけてあげてください。元男性保育者だった私からも、お願いします(笑)。
今回のマメマメヒント
★この記事は、小学館『新 幼児と保育』公式Instagram(←こちらをタップorクリック!)でリール動画を配信した内容にweb版として加筆・再構成したものです。また、小学館の雑誌『新 幼児と保育』では、ほかのリール動画で配信した内容に加筆・再構成し掲載していますので、どうぞご覧ください。また、このコーナーへの質問、疑問も募集中です。下から投稿できます。
お話/大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)、『保育の「ヘンな文化」そのままでいいんですか!?』(共著・小学館)など多数。
構成・イラスト/おおえだ けいこ
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