ページの本文です

幼保小連携ってどうしたらよいのでしょうか?【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】

連載
保育マメマメQ&Hints! 保育の悩み、立ち話 with 大豆生田啓友先生
関連タグ

玉川大学教授

大豆生田啓友

大豆生田 今回の質問は、「幼保小連携ついて」です。答えはひとつじゃありません。ぼくの考えるいくつかの対応例をあげます。みんなで対話して、考えていきたいですね。

※公式Instagramで今回のテーマの動画(約1分45秒)が見られます。(←文字をタップorクリックしてください)右下は、リール動画撮影中の様子(写真左は小学館編集スタッフ)

大豆生田啓友先生

玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。最新刊は、『愛子先生と大豆生田先生の「保育はやっぱりおもしろい!!」』(柴田愛子先生との対談集・小学館)。

保育は、子どもの生活に丸ごとかかわるお仕事。
そして、同僚や保護者との関係も複雑に交ざり合って、
なかなか個人の思ったとおりにはいきません。
「こんな場合、どうしたら?」
そんな現場の保育者が抱える悩みや疑問に対して、
大豆生田啓友先生から、考え方のヒントをいただきました。
これをもとに、仲間とぜひ話し合ってみてください。

Q

Q奈 幼保小連携として小学校の先生と話すと、「いすにすわって45分、話が聞けるか」くらいしか興味がないと感じます。

園は学校の準備機関なのかと感じられて、とても残念です。幼保小連携って何なのでしょうか?

マメ先生

増えている不登校、暴力の問題

マメ先生 まだそういう小学校があるようですね。

 でも今、小学校は不登校の子が急激に増えて、さらに暴力行為も急増するなど、先生たちは戦々恐々としているんです。

Q奈 暴力については、先生ではなく小学生が起こしているんですよね。それはちょっと前に聞いたことがあって、驚きました。

マメ先生 学童間同士のものが最も多くて年間約6万件、教師に対するものも1万件を超えてきています。しかも、その件数が数年前から中学校を上回ってきているんですよ。(文部科学省 令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要より)

【1,000人当たりの小学校、中学校、高校における暴力行為発生件数の推移】

参考:文部科学省作成資料

マメ先生 そういう背景もあって、「授業に静かに参加できる子どもにしてから、小学校へ送り出してほしい」という声が、切実さを伴って出てきているという人がいます。

 でも、不登校も暴力も、子どもの気持ちの表現です。増加の原因を考えずに、子どもの態度だけを変えさせてもね。

Q奈 はい。まずは学校が、私たちが一番大切にしている「ここは安心・安全な場所だ」という安心感の保障を接続してほしいなって思ってしまいます。

学校は、育ってきた資質能力を「そのまま」受け入れる

マメ先生 国の取り組みとしても、「園を小学校の文化に合わせさせよう」とはしていないんですよ。5歳児クラスから小学校1年生までの2年間を「架け橋期」と呼んで、むしろ、小学校側の体制を、園のほうに近づける方向だといえると思います。

 園では、子ども主体の遊びや協働的な活動を通して、資質・能力が育ちやすいように保育していますよね? そして、小学校に進学したら、その育ってきた資質・能力のままに、子どもたちを受け入れて、その姿に即して1年生をスタートさせる。それが今の方針なんです。


ちょっと詳しく──
資質・能力を「そのまま」受け入れるって?

              ●目指されている園と学校の関係は?

園で、自分の発達段階に合った、いろいろな経験をしている子どもたち。
これによって、資質・能力は、自然に伸びていきます。
そうした子どもたちを、「そのまま」学校が、体制を整えて受け入れます
(後出の「接続の要」を参照)。

                  ●園の役割は?

もし、子どもたちが園に通っていなかったら? 
園の豊かな遊び環境や、集団生活での経験が得られず、
資質・能力(知識や思考力、学びに向かう力など)の育ちが不十分になります。
 こうした子どもが大勢小学校に入学したら、 
「そのまま」受け入れるのはとても厳しくなりますよね。子どもたちも困ります。
 子どもの成長に応じた育ちを引き出し、小学校へつなぐ。
そこに園が存在する理由のひとつがあるのは確かです。
園を“準備機関”と呼ぶのは言いすぎですが、小学校が関係ないわけではありません。

                  ●学校の役割は?

園でどんなに成長しても、カリキュラムなど、
園と学校の環境には「違い」があります。
そこで、「幼児期から学校と同じ環境に慣れさせて!」という意見が出てくるのですね。 
 でもまだ、集中が続かない子どもたちに、
学校の教育のやり方を強いたら、負担になってしまいます。
 さらに、6~7歳までは今までの学校のような一斉指導するより、
「先生がサポートする遊びを通した学び」のほうが、
後伸びするという科学的根拠がたくさん出てきています。
 「学校も遊びや体験学習の要素を増やすこと」
それが学校の役割として求められているんです。


接続させるのは、主体的で対話的で深い学びの体制!

マメ先生 「子どもが時間内にすわっていられるような態度」を接続させるのではない。では、何を接続させるのかというと、先生たちが用意する、主体的で、対話的で、深い学びができる体制、保育・教育のあり方です。

      【連携の要は、先生による「主体的で・対話的で深い学び」の体制の接続】

園と学校の活動を共有化したい

マメ先生 さらに園と学校では、文化やカリキュラムが違うのですから、お互い、どんなことをやっているかを共有化する。ここが幼保小連携の本質だと思います。参観しあうのが、一番いいのだけど…。

Q奈 子どもたちはあちこちの学校へ散っていくので、全部の学校との共有化って難しくて。

マメ先生 ですよね。行き来する時間がないなら、それぞれ簡単な動画を作って、それをオンライン会議で見せあって、説明しあうのもよい手かもしれない。

Q奈 10個の学校から来るとしたら、5分程度にまとまってると助かります。会議をせずとも動画を見るだけでも、どうやってるか知ることはできそう。

マメ先生 子どもたちと一緒に視聴できるといいな。園の動画も、ぜひ、学校で生徒と一緒に見てほしいですね。

今回のマメマメヒント

★この記事は、小学館『新 幼児と保育』公式Instagram←こちらをタップorクリック!)でリール動画を配信した内容にweb版として加筆・再構成したものです。また、小学館の雑誌『新 幼児と保育』では、ほかのリール動画で配信した内容に加筆・再構成し掲載していますので、どうぞご覧ください。また、このコーナーへの質問、疑問も募集中です。下から投稿できます。

お話/大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)、『保育の「ヘンな文化」そのままでいいんですか!?』『愛子先生と大豆生田先生の「保育はやっぱりおもしろい!!」』(以上共著・小学館)など多数。

構成・イラスト/おおえだ けいこ

【関連記事】
保育マメマメQ&Hints! 保育の悩み、立ち話 with 大豆生田啓友先生シリーズはこちら!
・幼保小連携ってどうしたらよいのでしょうか?【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・発達がゆっくりな子がほかの子と遊べません。どうしたらよいでしょうか?【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「お客様保育」に疑問を持っています。どうしたらよいでしょうか?【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・絵本の園内研修のやり方について教えてください【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「塗り絵だけ」の活動に違和感が…【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「こども誰でも通園制度が不安です」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「業務改善がうまくいきません」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「男性保育士に戸惑いがあります」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「パソコンが苦手で困っています」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
・「園で待ち時間などに子どもにビデオを見せたくないと思っています」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
>>もっと見る

保育者のみなさんに役立つ情報を配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
保育マメマメQ&Hints! 保育の悩み、立ち話 with 大豆生田啓友先生
関連タグ

玉川大学教授

大豆生田啓友

保育者の学びの記事一覧

フッターです。

雑誌最新号