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「質の高い保育」って何?【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】

連載
保育マメマメQ&Hints! 保育の悩み、立ち話 with 大豆生田啓友先生
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玉川大学教授

大豆生田啓友

大豆生田 今回の質問は、「質の高い保育」についてです。答えはひとつじゃありません。ぼくの考えるいくつかの対応例をあげます。みんなで対話して、考えていきたいですね。

※公式Instagramで今回のテーマの動画(約1分45秒)が見られます。←文字をタップorクリックしてください)右下は、リール動画撮影中の様子(写真左は小学館編集スタッフ)

大豆生田啓友先生

玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。最新刊は、『愛子先生と大豆生田先生の「保育はやっぱりおもしろい!!」』(柴田愛子先生との対談集・小学館)。

保育は、子どもの生活に丸ごとかかわるお仕事。
そして、同僚や保護者との関係も複雑に交ざり合って、
なかなか個人の思ったとおりにはいきません。
「こんな場合、どうしたら?」
そんな現場の保育者が抱える悩みや疑問に対して、
大豆生田啓友先生から、考え方のヒントをいただきました。
これをもとに、仲間とぜひ話し合ってみてください。

Q太

Q太 ずばり聞きたいです。大豆生田先生が「質の高い保育」の条件をあげるとしたら、どんなものがありますか? ベスト3で教えてください。

マメ先生

国の会議で話し合われたこと

マメ先生 2020年に厚生労働省が「保育所などにおける保育の質の確保・向上に関する検討会」の「議論のとりまとめ」を出しています。

ぼくもその検討会のメンバーだったのだけど、その資料に、検討会で2年間かけて話し合った内容がまとめられています。

そのポイントを要約するなら、「保育で、子どもに豊かな経験を保障しよう。そのためにそれを支えるさまざまな実践や人・環境などを用意しよう」というもの。

一度、オリジナルに目を通してもらえたら、うれしいですね(下のをタップすると見られます)。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_554389.html

子ども主体、遊び中心!

マメ先生 このまとめから、ぼくの考える質の高い保育の条件をあげてみます。まず1番目は、

子ども主体の、遊びを通した豊かな経験・学びが得られる保育であること。

自分からワクワクできることを見つけて、それに没頭して遊ぶ──それは人にとって、幸せな時間ですよね。

そういう経験をたくさん積めば、「この世界は生きていく価値がある」と思えてくるんじゃないかな。

さらに、それらの経験から多くの学びが得られます。遊びは乳幼児にとって、学びそのもの。それを意識した保育ができるかどうかが、保育の質の高さに直結すると思っています。

大人が目的を定め、大人主導で知識を与えたり、スキルを上げていくことよりも、遊びの中でさまざまな学びを獲得する。これを中心にすえるのが「質の高い保育」と考える。

豊かな「環境」への配慮を

マメ先生 2番目の保育の質のポイントは、

豊かな人的環境・物的環境が大切にされること。

「豊かな人的環境」とは、主にその環境での遊びや生活を支える保育者のこと。

「豊かな」というのは、

・必要十分な人数がいる

・保育の専門性が高い保育者が揃っている

──こんな意味です。

そして、そういう豊かな保育者と子どもたちの間には「信頼関係」が生まれて、子ども同士の「育ち合い」が生じます。あるいは、生じるように保育者が“努力”する〟。

これらが質の高い保育の条件です。

相手を理解したり、ポジティブにとらえようとすることが、「信頼関係」や「育ち合い」のスタートでしょうか。

信頼関係・育ち合いが「豊かに」起こっている環境も、「豊かな人的環境」といえそうです。

【園内における二重性を帯びる「豊かな人的環境の概略図】

専門性の高い保育者が必要十分いて、職員間の同僚性が高い職場が「豊かな人的環境」のある園といえる(Ⅰ)。
さらに、その大人の豊かな人的環境が、大人と子どもとの信頼関係をつくり、また子どもの育ち合いを支援することで、園全体に「豊かな人的環境」が醸成されると期待できそう(Ⅱ)。

子どもたちの代わりに環境を設定

マメ先生 一方で「豊かな物的環境」とは、1番目で触れたように、子どもたちがワクワク遊べるために用意される園内外の空間、保育材などのこと。

小さい子どもたちは、まだ守られるべき存在で、自由に外に欲しいものを探しに行ったり、購入したりすることはできないですよね。 だから園では、大人が子どもたちに代わって、「やりたいことは何か」を探って、「豊かな物的環境」を準備するわけです。それは1回設定すれば終わりではなく、子どもの様子から再構成されることが条件です。

実践者が大切にされてこそ

Q太 あの、環境が「大切にされること」と言われていましたが、環境を「大切にすること」ではないのですね? 

マメ先生 いいところに気がつきました。

現場の先生たちによって園の環境が大切され、また、その環境を運用する人たちがお互いに大切にされあう、という意味もあります。

でも、主には保育者や環境が、園の経営者、自治体、さらには国からも「大切にされる」ことを指しています。保護者や地域の人たちからも大切にされたいですね。

保育者がどんなに園の環境や、互いを大切にしあおうとしても、条件が悪ければ限界がある。だから、本来まず保育者や園の環境が、「大切にされ」なくてはならないんです。ただ、まだそうはなっていないのが実情です。

だからといって、「自分たちが大切にされないのだから、私たちも大切にする必要がない」のかというと、そうはいきませんよね。それはどの業界でも同じです。改善できるよう、お互いに努力を重ねていくしかないんですよ。

質の高い保育の実践には、保育者だけでなく、社会の理解と努力も不可欠。

子どもを尊重するための指針として

マメ先生 そして、質の高い保育の条件、3番目はですが、

「子どもにとってどうか」という視点で振り返ること。

先に紹介した報告書にも、保育の質をとらえるとき、「子どもにとってどうか」という視点を基本とするとあります。

園は、子どもが生活する子どものための施設です。「子どもにとってどうか」という観点で振り返ることで、大人の好みや園の都合などで、ものごとを決めすぎていないかを確認するんですね。

このフレーズは、「子どもを尊重する」ために具体的に動くときの指針になります。

「子どもにとってどうか」。──口癖にしてほしいくらいです(笑)。

さらにその視点をもって対話できる職場風土が必須だと考えています。それは保護者など、地域の人たちも巻き込んだものが理想ですね。

条件にかなう保育を行うには?

マメ先生 では、こうした「質の高い保育の確保・向上」のためにはどうしたらいいか? むしろ、そちらのほうが重要かもしれません。

いくつか方法はあるけれど、「日々、保育を記録し、振り返り、省察、対話し、明日以降への保育の展開を計画する」──このサイクルが不可欠だと思っています。

・子ども主体の遊びを通した学びの提供

・豊かな環境の保障

・「子どもにとってどうか」という視点の所持

こういう保育を実現できているか、記録し、振り返り、次に展開するというサイクルですね。

逆にいうと、このサイクルの実践ができていること自体、「質の高い保育の条件」ともいえそうです。

障壁をあぶり出して改善していく

マメ先生 いろいろ欲張って言いましたが、これがボクの考える条件です。

Q太 わかりました。

ただ、そうはいっても、自分たちが大切にされていないと感じるなど、障壁があると質向上は難しいんですよね。

マメ先生 そうですね。それが取り除かれていかないと、質向上は看板だけになってしまいかねません。たとえば、障壁になるものには、


・限られた予算
・運営者の理解不足
・保育者の人員不足
・同僚との温度差
・保護者との価値観のズレ
・記録時間による負担
・限られた内外の環境
・自分の余裕のなさ

などの項目があるでしょうか。

この中で、自分たちの保育で一番ネックになっているものは何なのかをあぶり出して、協議を通して要請や業務改善を行ったり、研修で保育観のとらえ直しをしていかないと。

Q太 なかなかハードルが高そうです。でも、お話にあった「子どもにとってどうか」という視点で振り返ることは、すぐにでも取り組めるかな。

マメ先生 はい。そんなふうにできることから進めていけたらいいですね。

今回のマメマメヒント

★この記事は、小学館『新 幼児と保育』公式Instagram←こちらをタップorクリック!)でリール動画を配信した内容にweb版として加筆・再構成したものです。また、小学館の雑誌『新 幼児と保育』では、ほかのリール動画で配信した内容に加筆・再構成し掲載していますので、どうぞご覧ください。また、このコーナーへの質問、疑問も募集中です。下から投稿できます。

お話/大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)、『保育の「ヘンな文化」そのままでいいんですか!?』『愛子先生と大豆生田先生の「保育はやっぱりおもしろい!!」』(以上共著・小学館)など多数。

構成・イラスト/おおえだ けいこ

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