子どもの居場所を考える3冊【児玉ひろ美のこだま文庫】

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児玉ひろ美の絵本ガイド
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記憶の隅にある懐かしい1冊、気になりながらも読まないままの1冊、まだ出会っていない1冊。
ここは、そんな本を見つけるためのオンライン図書館です。

今回は、子どもの居場所を考える3冊を選んでみました。

(この記事は、『新 幼児と保育』2021年4/5月号に掲載されたものを元に再構成しました)

児玉ひろ美さん
公立図書館司書とJ P I C(ジェイピック:一般社団法人出版文化産業振興財団) 読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023 年度ブックスタート赤ちゃん絵本選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)などがあり、雑誌やW E B でも活躍中。

『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)

『ぼくがラーメンたべてるとき』

『ぼくがラーメンたべてるとき』
長谷川義史/作・絵
教育画劇 1300円+税

「ぼくが ラーメン たべてるとき、となりで ミケが あくびした」
続いて、
「となりの みっちゃん」
「となりの となりの だいちゃん」
「その となりの ゆうちゃん」
と、隣の家、隣の町、隣の国、そのまた…と、『ぼくがラーメンたべてるとき』と同じ時間軸にいる世界の子どもたちを描いています。

終盤では、
「やまの むこうの くにで おとこのこが たおれ…」
砂漠を思わせる色合いの見開きに風が吹き、風はやがて、冒頭のラーメンを食べている男の子の家の窓に…。大人はさまざまなことを連想し、胸が痛くなりますが、子どもは
「ラーメンのおわん(丼)の絵が上手」
「(大人が見ると児童労働の絵に)私も一緒に水を運びたい」
「(倒れた男の子に)あんなとこで、寝ちゃうの?」
など、年齢や経験によりさまざまな反応を示します。

『ひみつだからね』

『ひみつだからね』
軽部武宏/作・絵
偕成社
1400円+税

子どものときにしかわからない秘密を、いくつ覚えていますか? それは、子どもの居場所にいる者にしか見えない世界。『ひみつだからね』は、そんな世界を描いた作品です。

「ほんとうはぼくだけのひみつなんだけどね」
と言いながら、柵を越えた場所で男の子が缶ポックリでポクポク歩くと、納屋から大きなわらの馬が飛び出してきて競走。「スピピー」と草笛を吹けば、タヌキが車掌のペットボトル電車が動物を乗せてやってきたり、池のほとりでかめたろうに電話をすると、ナマズのお姫様が待つ不思議なお城に案内されたり…。

読み手はあっという間に「ぼくだけのひみつのばしょ」に連れていかれます。もしかしたら、表紙に描かれた男の子の表情も、普段は見せない秘密の表情なのかもしれませんね。

『世界のまんなかの島〜わたしのオラーニ〜』

『世界のまんなかの島〜わたしのオラーニ〜』
クレア・A・ニヴォラ/作
伊東晶子/訳
きじとら出版
1800円+税

『世界のまんなかの島〜わたしのオラーニ〜』に出会ったとき、なぜか「懐かしい」と思いました。その島では、子どもは自由に路地を駆け回り、生まれたばかりの赤ちゃんのいる家で赤ちゃんに触れ、食事時には誰かの家で大勢の人と食卓を囲みます。

「死んだ人を見たことある? え、ないの?」
と、亡くなった人の家をのぞきにも行きます。生と死、喜びと悲しみ、すべてが子どもたちの居場所のすぐ隣にあります。そこは地中海に浮かぶイタリア・サルデーニャ島の小さな美しい村です。

子どもは幼ければ幼いほど、自分の居場所以外を想像することは難しく、すべての価値観が自分の経験とイコールの時間。それはその先の長い人生に比べると、本当に短い期間です。すべての子どもにとって、その時間がどうか安心で幸せな時間でありますように。

© 2011 by Claire A. Nivola

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