赤ちゃんに贈りたい絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は、赤ちゃんに絵本をプレゼントする事業「ブックスタート」にリスト入りした18冊をご紹介します。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」の講師を担当するなど、幅広く活躍。近著に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
シェアブックスってなに?
「ブックスタート」をご存じですか? 0歳児健診などの機会に、絵本を開く「体験」と「絵本」をセットで親子にプレゼントする活動で、その目的は、赤ちゃんに絵本を読むこと(readbooks)ではなく、赤ちゃんが絵本を周囲の人とともにすること(share books)にあります。
この活動は1992年にイギリスで始まり、日本では2000年の「こども読書年」に広く紹介され、現在では多くの市区町村(※)で赤ちゃんの幸せと健やかな成長を願う気持ちを軸に、ボランティアの協力により運営されています。
※自治体の事業として1066の市区町村で実施。(2020年12月、NPOブックスタート調べ)
赤ちゃんの声を絵本にした1冊
『まんまん ぱっ!』
長野麻子/作 長野ヒデ子/絵
童心社
まるで音楽を奏でるように、うれしそうに言葉を発する赤ちゃんの声がそのまま絵本になった『まんまん ぱっ!』は、絵本作家の母・長野ヒデ子さんと、その娘・長野麻子さんの育児経験と音楽の研究による共作。ブックスタートの会場でも、よく読まれています。
私自身は、子育て支援講座などで保護者と赤ちゃんに読み聞かせをしますが、お日さまがいっぱいに広がる「ぱっ!」の見開きページで、赤ちゃんがかわいい口を大きく開いて「ぱっ!」。会場全体に笑顔が広がり、「まんまん ぱっ!」がくり返されます。
なかには赤ちゃんを真ん中に、パパとママがおでこを寄せて「まんまんって、ママだね〜」「ぱっ、ぱっ? パパ?」と大はしゃぎのご家族もあり、会場全体に会話の花が開きます。
この絵本の出版時、著名な教育学者の方が、作者にこんな言葉を贈ったそうです。
「あかちゃんにかわって お礼をいいたい
ことば|オノマトペやくり返しが楽しい絵本
『まる まる』
中辻悦子/作
福音館書店
「まるまるさんかく まるまるしかく」。「まるまる」がついた言葉のくり返しに、だんだん表情が加わ
ります。月齢に応じて言葉・色・形とさまざまに楽しみましょう。
『ぺろ ぺろ ぺろ』
長 新太/作
B L出版
乳児の大好きな「ぺろ ぺろぺろ」。子どもが一番はじめに世の中を知る手段なのかもしれません。読んでいる間に自然と舌を出す子もいて、素朴に読むだけで楽しい作品。
『ごぶごぶ ごぼごぼ』
駒形克己/作
福音館書店
鮮やかな色と水や泡をイメージさせる言葉のリズムが楽しい、穴あき絵本。濁音や半濁音に興味を持つ子が多く、すぐ真似をします。何回読んでも、新鮮な反応が楽しい。
『みず ちゃぽん』
新井洋行/作
童心社
沐浴などで、乳児のときから身近で大好きな水。リズムあるくり返しのさまざまな音と、形が変化する様子がおもしろい作品。異年齢でも楽しめるので、雨の日の読み聞かせにも。
『まる さんかく ぞう』
及川賢治・竹内繭子/作
文溪堂
乳児には、形の認識を目的とせず、言葉遊びとして読むとよいでしょう。発する言葉のスピードにより子どもの反応は変わり、さまざまな楽しみ方ができます。
「ブックスタート」絵本リスト
ブックスタート事業で手渡される絵本の候補として選ばれた30タイトルのリストです。今回はこの中から、新たに加わった18冊を紹介しています。
ふれあい|遊びにつながる絵本
『ぎゅう ぎゅう ぎゅう』
おーなり由子/文 はた こうしろう/絵
講談社
できれば少人数で、読みながら「ぎゅう」をして遊ぶのにぴったりの作品です。「おててを~」「ぎゅう~」など、語尾を必要以上に伸ばさないほうがリズミカルで楽しい。
『さわらせて』
みやまつ ともみ/作
アリス館
あれあれあれ? あ! 殻を割って出てきたひよこ。とことことこと、まっしぐらに走った先は、そう、大好きなお母さん! シンプルで春らしい色彩の絵をじっくり見せてあげましょう。
『あっぷっぷ』
中川ひろたか/文 村上康成/絵
ひかりのくに
タイトルどおりの単純なフレーズの遊びですが、にらめっこがゆるんだ瞬間に生まれる笑顔を、子どもたちは喜びます。笑顔の時間をたっぷりとると、満足感が得られます。
『まねっこ おやこ』
おくむら けんいち/文マッティ・ピックヤムサ/絵
ブロンズ新社
お母さん、お父さん、赤ちゃんの三者でまねっこ遊び。3回のくり返しのリズムが、とても心地よい
です。赤ちゃん絵本でお父さんが登場するのも珍しく、ご家庭にもおすすめ。
『へっこ ぷっと たれた』
こが ようこ/構成・文 降矢なな/絵
童心社
「 へっこ」は「おなら」の意。タイトルと同名のわらべうたをモチーフにした絵本です。大人でも楽しくなりますね。巻末に譜例がありますが、どうぞ自由に遊んでください。
『よこむいて にこっ』
高畠 純/作
絵本館
正面の顔は怖く感じるのに、横を向くと「にこっ」とした笑顔に。「いないいないばあ」の遊びの要領で読んでも楽しく、0 歳児は「ばあ」と同様、「にこっ」も大好き。
生活|身近なものが主役の絵本
『おひさま さんさん おはようさん』
なかじま かおり/作
岩崎書店
朝の柔らかな日差しのような淡いクリームの見返しが印象的。全体の文章は、かな学習歌と同じ「4・4・5型」の定型詩がリズムを生んで、声に出して読むのが心地よい絵本です。
『かん かん かん』
のむら さやか/文 川本 幸/制作 塩田正幸/写真
福音館書店
赤ちゃんの絵本としては異色の黒い表紙の目新しい写真絵本。どちらかといえばデザイン性のある動物や食物が次々登場し、子どもの視線を集めます。「んまん ままん」食べ物の列車。「ぶぶう ぶぶう」車の列車。「にゃにゃん にゃにゃん」ネコの列車。音のくり返しを楽しみましょう。
『いろいろ ばあ』
新井洋行/作
えほんの杜
色、音(ことば)にシンプルながらも単純で心地よい刺激があります。基本的には「いないいないばあ」遊びのアレンジですから、異年齢でも一緒に楽しめます。
『バナナです』
川端 誠/作
文化出版局
子どもの大好きなバナナをひたすら紹介。大人が「またぁ?」と思っても、子どもは「もっと!」と思うようです。28ページに掲載の『よこむいて にこっ』のあとに読んでも楽しい。
『ぎったん ばっこん』
なかえ よしを/文 上野紀子/絵
文化出版局
色合いが美しくシンプルな構成の中に「ぎったんばっこん」のリズミカルなくり返しと、動物が次々やってくる単純なストーリーがあり、シーソー体験がなくても楽しめます。
『はなび ドーン』
カズコ G・ストーン/作
童心社
キラキラした美しい絵とリズム感のある擬音語(ことば)の楽しさで、花火を知らない子でも楽しめます。反対に、実際の花火は音が怖いけれど「絵本の花火は好き!」な子も。
『新 幼児と保育』2021年増刊春号より
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