21世紀生まれの「ロングセラー」絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】

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児玉ひろ美

ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は子どもがいて、読み手である大人がいて20年以上読み継がれてきたロングセラー絵本を紹介します。年間のおすすめ絵本として、五領域を意識した選書もあわせてご覧ください。

児玉ひろ美さん

JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」の講師を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。

親子が集う場に必携の1冊

『ぴょーん』

まつおか たつひで/作・絵
ポプラ社

「ロングセラー」は、絵本を含む児童書の特徴のひとつ。出版から20年を経て、今なお出版され続けて、ようやく一人前=評価が定まった本、といわれます。その背景には、たくさんの絵本を読んであげた大人、絵本を読んでもらった子どもたちが存在します。

「人生で初めて出会った絵本で今でも大好きな絵本です」

と、学生が掲げたのは『ぴょーん』の見慣れた表紙。児童文化の授業2回目で「思い出の絵本」を発表していたときのことです。このテーマで学生が『ぴょーん』を挙げたのは、昨春が初めてのことでした。発表の最後は、著者名、出版社に続き「出版は2000年です。私の両親はこの年に結婚し、なぜか結婚の記念にこの絵本を買ったそうです」と締めくくり、2002年生まれが大半の教室は健康的な笑いに満たされました。

そう、絵本はこんなふうに親から子へ、家庭内で読み継がれ、ロングセラーとなってきました。そして近い将来、この学生が保育の現場で出会う子どもたちや、いずれは我が子に読み継ぎ、ロングセラーは刷りを重ねていくのでしょう。ちなみに、今この原稿を書くために、改めて購入した『ぴょーん』の奥付( 巻末)には、「2021年11月第93刷」と記されています。一方、この絵本は幼い子どもにかかわる大概の方が、子どもと一緒に楽しんだ経験があることでしょう。

私にとっても、家庭教育学級など親子の集まる場には必携の1冊です。2000年の「子ども読書年」以降、園や学校、図書館などをはじめとする公共の場における読み聞かせの広がりも、ロングセラーを生み出しているといっても過言ではないでしょう。

ロングセラー入りをした人気作家による絵本

『くれよんの くろくん』

なかや みわ/作・絵
童心社

「シャープペンのおにいさんにキュンキュンしてました」

そのひとことに「わかる〜」「刺さったよね」「水色のシャーペン買ってもらった」と声があがったのは、『くれよんのくろくん』です。ほかの色のクレヨンから仲間はずれにされた”くろくん“に、「げんきだせよ」と声をかけ、思いがけない知恵を授けてくれたのが”シャープペンのおにいさん“なのでした。

おもしろいことに、数年前は同じ作家の『そらまめくん』が思い出の絵本の一番の人気でしたが、昨年度からは『くろくん』シリーズが目立ち始め、今年度は完璧に入れ替わった印象です。改めて出版年を見ると2001年10月。ちょうど昨年でロングセラー入りを果たしていました。まさに、子どもたちの熱い視線で、読み継がれてきた作品なのですね。

声を出して一緒に楽しむ言葉遊び絵本

『へんしんトンネル』

あきやま ただし/作・絵
金の星社

「”かっぱかっぱらった“より、かっぱ かっぱ かっぱ… ぱっか ぱっか ぱっか なんです」

国語の教科書で出会う谷川俊太郎さんの『ことばあそびうた』より、印象深い絵本として学生が紹介したのは『へんしんトンネル』。今や大人気の言葉遊び絵本『へんしん』シリーズの1作目です。言葉を覚え始めた小さな子や、日本語が苦手な外国籍の子も、読み聞かせを聞くとすぐに一緒になって声を出して楽しめます。

読み手の中には苦手意識を持っている方もいらっしゃいますが、この絵本の変身言葉を知らない学生はほとんどいません。『へんしんトンネル』が、読み聞かせを「静かに聞く」から「声に出して参加する」に変え、今年の9月でロングセラー入りすることに、大きな拍手を送ります。

年間のおすすめ絵本「五領域で選ぶロングセラー絵本」

【言葉】

『コッコさんのおみせ』

2歳から4歳向け

片山 健/作・絵
福音館書店

~ごっこ遊びを通して~
コッコさんはカレー屋さんを開きます。自分が体験したことを、身近なものや道具を使って再現するごっこ遊びは、会話の模倣も楽しい遊びです。

『もう おきるかな?』

0歳から2歳向け

まつの まさこ/文 やぶうち まさゆき/絵
福音館書店

~指さし会話から~
動物の親子の姿に子どもが指さしで自分の興味を示したり、大人の指さしに視線を合わせたりして楽しみます。

『からすのパンやさん』

4歳から6歳向け

かこ さとし/作・絵
偕成社

~言葉のやりとりを楽しむ~
ずらりとたくさん並んだパン。身近な食べものが出てくる絵本は、子どもたちの笑顔と自由な会話を導きます。

【健康】

『ペレのあたらしいふく』

4歳から6歳向け

エルサ・ベスコフ/作・絵 おのでら ゆりこ/訳
福音館書店

~心の健やかな成長~
ペレは育てた羊の毛を刈り、すいてもらう代わりに草取りを、糸にしてもらう代わりに牛の番を…と、できないことは人に頼み、代わりの仕事を一生懸命します。ペレの表情の変化に成長が感じられます。

『いちご』

異年齢

平山和子/作
福音館書店

~食育として~
いちごを擬人化して描くことで、いちごの成長を見守り、育てることや食べることへの興味・関心を促す科学絵本です。

【人間関係】

『ごぶごぶ ごぼごぼ』

0歳から2歳向け

駒形克己/作
福音館書店

~人の声への興味に応える~
言葉を発し始めると人の声にも興味が高まります。中でも、リズム感のある濁音に楽しそうに反応します。

『いい おかお』

0歳から2歳向け

松谷みよ子/文 瀬川康男/絵
童心社

~表情への興味に応える~
乳児は目を見て言葉をかけてもらうことが大好き。そして、7~8か月ごろからは表情にも興味を持ち始めます。

【環境】

『こいぬが うまれるよ』

4歳から6歳向け

ジョアンナ・コール/文 ジェローム・ウェクスラー/写真
つぼい いくみ/訳
福音館書店

~身近な生きものに親しむ~
子犬の誕生の瞬間から、目が開き、乳を飲み、得意げに歩きだし…。語り手の女の子に引き取られるまでの成長を追った写真絵本。子犬が袋に入って生まれたときの写真も、モノクロならではの効果でひきつけられます。

『はらぺこあおむし』

2歳から4歳向け

エリック・カール/作 もり ひさし/訳
偕成社

~身近な生きものへの興味・関心~
葉の上の卵から生まれたあおむし。いろいろなものを食べ、蝶になるまでを美しい色彩で描いたしかけ絵本です。

【表現】

『てぶくろ(ウクライナ民話)』

2歳から4歳向け

エウゲーニ―・M・ラチョフ/絵 うちだ りさこ/訳
福音館書店

~想像する楽しさを体験~
次々動物がやってくるたびに、同じ会話をくり返し、手袋はどんどん大きくなって家の形になっていきます。

『おおきなかぶ(ロシアの昔話)』

異年齢

A・トルストイ/再話 内田莉莎子/訳
佐藤忠良/画
福音館書店

~声や力を合わせる楽しさを味わう~
大きなかぶを抜くために、次々に加わる小さいものたち。力を合わせたからこそ、抜けた瞬間がとてもうれしい。

『新 幼児と保育』2022年春号より

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