虐待や不適切な保育の当事者ならないために、今すぐできること

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「猪熊弘子先生が指摘する『保育現場に潜む虐待の芽』」 の記事で、保育者が「当たり前」だと思っている園の文化や伝統の中に、虐待まがいのことや、虐待につながり得る要素があることをお伝えしました。意図せずに虐待や不適切な保育の当事者になってしまうことを防ぐために、今、保育者ができることは何でしょうか。

お話

猪熊弘子先生
駒沢女子短期大学教授、ジャーナリスト。元・明福寺ルンビニー学園幼稚園・ルンビニー保育園副園長、Yahoo!ニュース個人オーサー。『死を招いた保育』(ひとなる書房)で日本保育学会日私幼賞・保育学文献賞受賞。近著に『重大事故を防ぐ園づくり』(ひとなる書房/共著)などがある。

職員全員で、人権擁護のためのセルフチェック

全国保育士会が作成し、公開している「保育所・認定こども園等における 人権擁護のためのセルフチェックリスト」がとてもわかりやすいので、ぜひ、園の職員全員で取り組んでください。

「保育所・認定こども園等における 人権擁護のためのセルフチェックリスト」表紙

(2017年3月作成 2019年4月一部改訂 監修:山縣 文治/関西大学教授)

たとえば、母親に抱かれて登園してきた2歳児が、なかなか母親から離れられないとき、
「ずっと抱っこしてもらっていると恥ずかしいよ」
「いつまでも泣いている子は、赤ちゃん組に戻しちゃうよ」
などと保育者が言うのを聞いたことはありませんか。これは言われた子どもの心を傷つける、心の暴力です。このように保育者が何気なく言ったりしたりしていることが、実は子どもの人権への配慮に欠けていたという事例がきっと見つかると思います。

チェックリストは下記からダウンロードできます。園での活用事例なども紹介されています。

全国保育士会ホームページ 「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」
https://www.z-hoikushikai.com/book/pamphlet.html#pamph_checklist

チェックリストに園の職員全員で取り組む

「子どもの権利条約」を読む

「子どもの権利条約」(児童の権利に関する条約)は1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しています。条文の全文や抄訳がインターネットサイトで公開されています。

外務省ホームページ 「児童の権利に関する条約」全文
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html

抄訳や、わかりやすい解説を日本ユニセフのホームページで読むことができます。

日本ユニセフ協会ホームページ 子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳
https://www.unicef.or.jp/kodomo/kenri/syouyaku.html

日本ユニセフ協会ホームページ 「子どもの権利条約」
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html
「子どもの権利条約 4つの原則」の項目は、職員会議の場などで職員全員で読み合わせをしてみましょう。

本で学ぶなら『ポジティブ・ディシプリンのすすめ』

本で体系的に学ぶなら、最初の1冊として私が推薦したいのが『親力をのばす0歳から18歳までの子育てガイド~ポジティブ・ディシプリンのすすめ』です。「ポジティブ・ディシプリン」は、「肯定的なしつけ」という意味。体罰で子どもをしつけるのではなく、子どもと同じ目線で子育てをしようという本で、保育者にとっても学ぶことが多いと思います。

監修を行ったセーブ・ザ・チルドレンは、1919年に発足した子ども支援活動を行う民間・非営利の国際組織です。

「ポジティブ・ディシプリン」表紙

(2009年5月発刊 明石書店 ジョーン・E・デュラント/著、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン/監修、柳沢 圭子/訳)

セーブ・ザ・チルドレン ホームページ
https://www.savechildren.or.jp/sc_activity/japan/pd-book.html


文/佐藤 暢子 イラスト/上島 愛子

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