雨の日や水遊びの日に読みたい絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。水の感触が心地よい季節。雨の日に、水遊びの前後にも読みたい絵本を集めました。見るだけでも楽しい科学絵本もご紹介します。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
みんなの大好きな「みず」
『じゃぐちを あけると』
作/しんぐう すすむ
福音館書店
表紙をご覧になって、「もう何回読んだことか!」と、思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。『じゃぐちを あけると』は、最初から終わりまで、絵本の見開き中央の綴じの部分に、蛇口から流れる水を描いたシンプルな作品です。でも、水を前にした子どもがやってみたいと思いつくこと、すべて(!)をやって見せます。結果…、
「やってくれました! 園の廊下が水浸しになりました(笑)」
と、絵本の表紙に付箋でメッセージをくださったのは、図書館の近くにある保育園の園長先生。いつも「何かおもしろい絵本ない?」とお寄りくださるので、ご紹介した数日後のことでした。
「絵本を持って、洗面所に一目散! 慌てて追いかけました」
と、笑顔でカウンター返却にいらしたのは、3歳と5歳の兄弟のおじいさま。その後は庭に場を移し、おじいさまが絵本を高く掲げ、ひと通り絵本と同じように、お孫さんたちを遊ばせたとのこと。流石! この余裕は「おじいちゃん」ならではのことです。
このほかにも、尽きないエピソードが多々あるのですが、それは、この絵本がいかに科学絵本として優れているかを示すものでもあるのです。1回読んでもらう、あるいは絵を見るだけでも、子ども自身が、「やってみたい、やれそう、しかも簡単(=安全)に!(それが大人にとっては困ったことであっても…)」。
そして、最後には「じゃぐちを しめて はい おしまい」と、よい科学絵本の大切な要素の、終わり方まで子どもたちに提示し、ペーパーバックの初版からあと数年でロングセラー入りです。昨今は蛇口をひねるという動作が不要な生活になってきましたが、それでも、大好きな水に子どもたちは魅(み)せられることでしょう。
『よあけ』
作・画/ユリ―・シュルヴィッツ
訳/瀬田貞二
福音館書店
「水たまりに、お山がはいっているの」
3歳のSちゃんが探している絵本です。保育園で友達が見ていたらしく、園でなかなか「見せて」がいえないSちゃんは、絵本探しのレファレンスの常連でした。その日も「水たまり」をキーワードに、同僚の司書と一緒に絵本を探しましたが、Sちゃんの欲しい絵本は見つかりません。
ほかの手がかりを、Sちゃんに聞いてみると…。「(絵本を)開けると、青いしましまがある」とのこと! ならば、『よあけ』に違いない。と、Sちゃんに絵本を手渡すと、「ほらね」と開いてくれたのが、上掲のページなのでした。そう、Sちゃんにとって大切なのは、湖でも水たまりでもなく、水面に映り込んだ世界だったのです。
子どもの興味・関心のありかを知らないと、子どものレファレンスは本当に難しいと思い知らされる出来事でした。
『きっとみずのそば』
文/石津ちひろ
絵/荒井良二
文化出版局
「最初は水だけど、最後は水じゃなかった」
と、小学3年生のTくんが返却してきた絵本は『きっとみずのそば』。宿題で水を調べていたとき、「水 本」をキーワードにインターネット検索でヒット。紹介されていた「アフリカっぽい絵が突き抜けていておもしろかった」そうです。
最後に「きっとみずのそば」が絶妙な変身を遂げて、Tくんのいうように水じゃなくなりますが、いったい何に変身するのでしょう? 気になる方はぜひ、荒井良二さんの独特な世界を楽しんでください。1999年から読み継がれている作品です。
6月と7月のおすすめ絵本
テーマ「水」
『 こぐまちゃんのみずあそび』
0歳から2歳向け
著/もり ひさし、わだ よしおみ、わかやま けん
こぐま社
懐かしいと思う方も多いことでしょう。今年で50周年となるこぐまちゃんたちです。文章が短いその分、絵が語る絵本です。十分に間(ま)をとり、絵を見せましょう。
『みず』
2歳から4歳向け
作/五味太郎
絵本館
表紙をリニューアルしたシリーズ10冊のうち、出版40年を迎える『みず』。やはり一番人気かも。読んだあと、子どもが意味を確認できるよう、絵をよく見せましょう。
『みずたまり』
2歳から4歳向け
作/アデレイド・ホール
絵/ロジャー・デュボアザン
訳/こみや ゆう
好学社
水たまりに映った自分の姿に驚くことから物語が始まります。雨降りのあと、水たまりに自分の顔を映す体験をしてから読むと、より楽しめます。
『ガンピーさんのふなあそび〈新版〉』
2歳から4歳向け
作/ジョン・バーニンガム
訳/みつよし なつや
ほるぷ出版
終わりよければすべてよし。ガンピーさんの動じない態度がユーモアを感じさせます。船がひっくり返るシーン以外は淡々と読むのがよいでしょう。
『マンモスのみずあび』
4歳から6歳向け
作/市川里美
BL出版
近年は日本でもゲリラ豪雨があり、モンスーンも想像に難くないのかもしれませんね。雨のあとの土の匂いや草木の匂いがしそうな五感に訴える作品です。
『ケイティのゆかいな水あそび』
4歳から6歳向け
作/ジェイムズ・メイヒュー
訳/西村秀一
監修/結城昌子
サイエンティスト社
ケイティは、美術館で絵の中に入って水遊び。なんて楽しいのでしょう。ところが、額が傾き、絵から水があふれます。さあ、どうなるのでしょう?
『海とそらがであうばしょ』
4歳から6歳向け
作/テリー・ファン&エリック・ファン
訳/増子久美
化学同人
タイトルからもわかるよう、ファンタスティックで美しい絵本です。あらかじめ絵本をしっかり開き、絵を存分に楽しみましょう。ページ数は多めですが、各ページの文章は、短く読みやすいと思います。本がぐらつかないよう、しっかり支えます。巻末見返し部分の「感謝の言葉」は、読まずにゆっくり絵本を閉じてください。
『ピチャン、ボチャン、ザブーン! 水ってふしぎ!』
科学絵本
作/マイク・マニング、ブライタ・クランストローム
訳/せな あいこ
評論社
『ふしぎだな? 知らないこといっぱい』シリーズの1冊。自然界での水の循環を、平明な言葉でやさしく描いています。文章は本文のみを読みましょう。
『のぞいてみよう しぜんかがく みず』
科学絵本
絵・文/てづか あけみ
パイ インターナショナル
貼り絵で描かれた科学絵本です。「みずはつながっている」というシンプルな文章で始まります。各ページ下部の本文だけを読み進めてください。
『まほうのコップ』
科学絵本
原案/藤田千枝
写真/川島敏生
文/長谷川摂子
福音館書店
なんておもしろいのでしょう! すぐにでもやってみたくなります。科学者・写真家・保育士が一緒に制作した、水の屈折をテーマにした科学絵本です。
『みずたまレンズ』
科学絵本
作/今森光彦
福音館書店
布の模様などで子どもたちにもおなじみの水玉。本物があることにも驚く子もいます。読み終えたあと、子どもが何度でも読めるよう、本は手の届く場所に。
『新 幼児と保育』2021年6/7月号より
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