「もふもふ」な絵本！【児玉ひろ美の注目本棚＃６】

最近出版された絵本を中心に、子どもと一緒に読んでほしい注目作品をピックアップ。今回は、かわいらしいうさぎがいっぱいの写真絵本と、さまざまな形の雲が描かれた絵本。共通するキーワードは「もふもふ」です。

児玉ひろ美さん

JPIC読書アドバイザー、東京・台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」を担当するなど、幅広く活躍。著書に『０～５歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』（小学館）。

オノマトペいっぱい、うさぎの写真絵本

みなさんは「もふもふ」をご存じですか？　犬や猫などように、柔らかい毛で覆われているものの感触を表すとして、今や日本のオノマトペ（音象徴語）として多く用いられていますね。なかにはインターネット上のスラングと言い切る方もいますが、子どもたちにとっては身近な言葉のひとつのようで、その活用の広がりは私の予想以上！　先日、知人のお孫さん（4歳児）が「もふもふの絵本が好きなの」と2冊の絵本を教えてくれました。

そのうちの1冊がこちら。

表紙のうさぎの「ぴこん！」と立った耳。「ぴこん」というのは珍しいオノマトペですが、躍動感があって、まさにうさぎの耳が立ち上がった瞬間の表現として、ピッタリですね。「ぴこん！」と立った耳、「ふっかふか」の体は、「もふもふ」のほか、「ぱふっ」「ふっくら」「ふくふく」「ふんわり」「ふわふわ」と複数のオノマトペで表されています。

『うさぎ　ぴこん！』

松橋利光／写真　池田菜津美／文

アリス館

うさぎ年の2023年は、猫や犬の絵本には数が及ばぬものの、やはりたくさんのうさぎ絵本が出版されています。どれも「もふもふ」としてかわいいのですが、この1冊は背景が白一色なので、0歳児さんにも見やすく楽しめそうです。

また、写真は「生きものカメラマン」として親しまれている松橋利光さんによるもの。生き物の特性を的確にとらえた写真は、保育園や幼稚園でうさぎの飼育をしているという子どもたちにとっても、自分の体験と重ねて楽しめることでしょう。

読み聞かせ〈基本情報とポイント〉

読み聞かせるなら…

• 対象：0歳児～
• 時間☆：２分30秒
• ポイント：写真で伝える部分を読み取れるよう、間（ま）をしっかりとって読んでください。オノマトペと呼応するうさぎを、指で示しながら読むとわかりやすいですね。読む順番は、読み手が自然に感じる順でOK。最後が「おやすみなさい…」で終わりますので、お昼寝前の絵本にするのも一案です。

☆時間は表紙から裏表紙を経て、表紙まで読むのにかかる時間。

見た目が「もふもふ」な、雲の絵本

そして、もう１冊。「もふもふ」な絵本として挙げてくれたのがこちら。

『あのくも　なあに？』

富安陽子／文　山村浩二／絵
福音館書店

まさか、この絵本が「もふもふの絵本」入りするとは思いませんでした（笑）。でも確かに、子どもにとって「雲」は「もふもふ」なのでしょう。

ときどきこんなふうに、絵本を通して子どもの感覚を思い出させてもらいます。そして、この絵本も子どもの感覚にピタッと寄り添い、世の中の不思議や感動=センスオブワンダーを呼び起こしてくれます。

「あのくも　なあに？　なんだろね」

「カーテンぐもだよ、あのくもは」

「たかい　おやまの　てっぺんに　

ねぼすけきょじんが　すんでてさ、

あさの　ひかりが　まぶしくて　～～」

ね、素敵でしょう？ 　このあとも、「なあに？」の問いかけに、「ざぶとんぐも」「リボンぐも」と素敵なネーミングが続きます。

読み聞かせ〈基本情報とポイント〉

読み聞かせるなら…

• 対象：３歳児～
• 時間☆：２分30秒
• ポイント：文章がきれいな七五調になっています。下読みの際、意識して読んでみてください。とても読みやすいことに気づかれることでしょう。「きっと　そうだよ。そうかもね」の部分では、くり返しのように自然と子どもたちから声が出るかもしれません。その場合はゆったりと間（ま）をとってかけ合いを楽しんでください。

☆時間は表紙から裏表紙を経て、表紙まで読むのにかかる時間。

イラスト／小泉直子

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