0・1・2歳児向け「乗り物」がテーマの絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は、0・1・2歳児の子どもたちが大好きな「乗り物」が主役の絵本を集めました。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」の講師を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
だいすきなのりもの
『でんしゃは うたう』
三宮麻由子/文
みねお みつ/絵
福音館書店
Mくんは「でっ! でっ! でっ〜! ででででで〜」と口ずさみながら、乗り物に見立てた積み木を敷物の縁に走らせていました。「集団行動が苦手で」と園の方からのお話もあり、Mくんを自由なままに、保護者対象の「家庭教育学級」を始めました。テーマは「親子で楽しむ絵本の世界」。
講座の主役は発達段階に合わせ紹介するたくさんの絵本です。その1冊として『でんしゃは うたう』はありました。この絵本、最初の「でんしゃがまいりまあす」「はっしゃしまあす」と、最後の「おあしもとに ごちゅういくださあい」のほかは、音とパノラマのような絵で、9見開きが構成されています。
「たたっ つつっつつ たたっ つつっつつ ねん ねん ねん ねん ごごだだっだだ」「ぎぃー ぎょぎょぎょぎょ だだっ だだどどん」「ととててかかっ つたつたかかん ぐぐぐぐぐー」と、実際のひと駅分のあいだの音を丁寧に集めた作品ですから、読み手はたいへん!
そのときも、電車らしく読めるか緊張して読み始めました。すると、それまで会場の後方で遊んでいたMくんが駆けてきて「ぼっ しょんしょんしょん ふっ しょんしょんしょん たったっ」と、大きな声で諳(そら)んじ始めました。
そのままMくんは一言半句違えず諳んじ、「おあしもとに ごちゅういくださあい」というが早いか、再び元の場所に戻ると、拍手も耳に届かぬ様子で「でっ! ででで〜」と積み木を走らせ始めました。
講座終了後、恐縮するMくんのお母さんからお話をうかがいました。Mくんが、あまりにもこの絵本に魅かれていたので、描かれた1駅分を体験してみたところ、本当に絵本のとおりの音が聞こえて感激。その後は毎晩のように、家族で絵本を楽しんでいるとのことでした。素敵なご家族ですね。
帰り際、Mくんにお礼を伝えに話しかけると、「しってる? ”で“は、でんしゃの”で“だよ」と、絵本の「で」の文字を指さしで教えてくれました。子どもはこんなふうに、好きなことから文字を覚えていくのですね。
タイヤ
『ころりん タイヤくん』
新井洋行/作・絵
フレーベル館
タイヤくんが、ころころころ…と転がって、いろんな車のお友達に会いに行きます。「こんにちは。きみは なんの くるま?」。会話を楽しめる、厚紙角丸のかたぬき絵本です。
『タイヤタイヤ だれのタイヤ』
そく・ちょるうぉん/作
アリス館
タイヤがふたつ。「タイヤ タイヤ だれの タイヤ?」。次のページは青い車が「ぶっぷっー ぷっぷー」。おーきなタイヤ、ビュンビュンタイヤ、たくさんの…。想像が広がる絵本です。
のりもの
『のりものいっぱい』
柳原良平/作・絵
こぐま社
ギリギリまでシンプルにデザインされた切り絵と、単純な言葉が美しい絵本です。性別に関係なく、子どもは乗り物が大好き。0歳児さんもじっと絵本を見つめます。中でも「ひこうき」「ヘリコプター」の見開きページは人気があって、「プ」の音に反応して「ぷ~っ」と真似をする子もいました。
『のび~る しかけえほん のりものいっぱい』
きむら ゆういち/作
くさか みなこ/絵
東京書店
ページをめくると乗用車、開くとトラックになって、バイクがいて、もう一度開くと、バスが続きます。1ページで3展開の伸びるしかけは、そのページごとに完結した楽しさです。
『のりもの なあにかな?』
かきもと こうぞう/絵
はせがわ さとみ/文
学研プラス
乗り物絵本の中では異色の、柔らかくやさしいタッチの作品は、『どうぞのいす』で人気の柿本幸造さんのもの。バス停へお父さんを迎えに行く親子の優しい時間が流れます。
バス
『もぐらバス』
佐藤雅彦/原案
うちの ますみ/文・絵
偕成社
プップー。もぐらバスは地面の下のトンネルを、マーケットまで走ります。少人数で、指さしをしながら内緒話のように読んでください。車同様トンネルも、子どもたちの人気者です。
『いろいろバス』
tupera tupera/作
大日本図書
赤、黄、緑、黒。次々にやってくるカラフルなバスから降りるのは、トマト、オムレツ、かっぱに、クジラ! では乗り込んでいくのはだれでしょう? 色やシルエットが想像を広げます。
でんしゃ
『でんしゃがきました』
三浦太郎/作・絵
童心社
ねずみさんが待っている三角駅にはチーズ電車。うさぎさんの待っているサラダ駅には野菜たっぷり電車。らいおんさんの…。次々にみんなの大好きな電車がやってきます。
『でんしゃにのったよ』
岡本雄司/作
福音館書店
電車好きな男の子が、お母さんと一緒に電車を乗り継いで東京まで旅をします。物語は親子の会話でわかりやすく展開し、絵の中で「ぼく」がどこにいるのか、探す楽しみもあります。
『わくわく でんしゃ しゅっぱつ』
視覚デザイン研究所/作
くにすえ たくし/絵
視覚デザイン研究所
けんたとおかあさんは電車で山のおじいさんの家へ出かけます。「ゴトン ゴトン」と走りだした電車は、「カーンカンカン」と鳴る踏切を抜け、山では「ガッシャン プシュー」とディーゼル機関車と連結します。乗り物の絵本の多くは、鮮やかな絵とリズミカルな音が作る世界で子どもたちを魅了するのですね。
『あかくん でんしゃと はしる』
あんどう としひこ/作
福音館書店
車の「あかくん」が電車と一緒に走ります。子どもが「あかくん」になって走れるよう、「あかくん」の視線のように電車やトンネルなどを指さしします。2歳児、少人数がおすすめです。
『しゅっ しゅっ ぽっぽ トンネルですよ』
林なつこ/作・絵
教育画劇
穴あき表紙の中の機関車くんが線路を行くと、「あ、うさぎさん」。すると、うさぎさんがトンネルになって通してくれます。次々出会うお友達それぞれが楽しいトンネルに。
くるま
『がんばれ! パトカー』
竹下文子/作
鈴木まもる/絵
偕成社
この物語を楽しめるのは4歳児ごろからですが、鈴木まもるさんの絵本は、0歳児が表紙に抱きつくほどの人気者です。子どもたちとパトカーを見つけ、会話を楽しんでください。
『くるくる くるま』
木坂 涼/作
キャビネッツ/絵
フレーベル館
「 くるくる くるま なにする くるま?」。詩人の木坂涼さんらしい、リズミカルでやさしい言葉で問いかけをします。子どもの好きな働く車が5種類登場し、何回読んでも飽きません。
『おはよう、はたらく くるまたち』
シェリー・ダスキー・リンカー/作
トム・リヒテンヘルド/絵
福本友美子/訳
ひさかたチャイルド
人気の『おやすみ、はたらくくるまたち』シリーズの第3弾。朝の身支度シーンが子どもたちを元気にしてくれます。0・1歳児さんより2歳児さんのお昼寝前におすすめの1冊です。少し大判の本ですので、読み手は持ち通せるよう、しっかり準備をしてください。大きい子たちと一緒のときにも活躍する1冊。
『しゅつどう!しょうぼうたい』
鎌田 歩/作・絵
金の星社
車ではなく働く人と仕事に焦点を合わせた作品は小学生向きです。でも幼い子は働く車で働く人も大好きです。前掲の鈴木まもるさんの作品同様、絵( 人)に注目して会話を楽しんでください。
『おとどけものでーす!』
間瀬なおかた/作・絵
ひさかたチャイルド
子どもの好きな「宅配便屋さん」が、間瀬なおかたさんの「乗り物しかけ絵本シリーズ」にあります。雪の残る山村の子どもたちに、宅配便やさんが薄緑色の箱を届けます。何が入っているのでしょう?
『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2019夏より
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