寒さも吹き飛ぶ!雪遊び・氷遊びのヒント
各園から雪遊び・氷遊びの実践をレポート! 冬の自然に親しむヒントにいかがですか?
目次
ダイナミック雪遊び
北の国ならではの環境を生かした取り組みを紹介します。
札幌トモエ幼稚園(北海道・札幌市)
その1 雪中旗取りゲーム
砂浜で楽しむビーチフラッグのように雪原に旗を立てて、よーいどん!うつぶせの姿勢から一斉にお目当ての旗に向かって駆け出す子どもたち。雪の上は転んでも柔らかいので痛くないし、汚れることもないので、旗に思いっきり飛びついて楽しむことができます。ふわふわの雪が深く積もった広場では、両手両足で雪の上を泳ぐように進むところも楽しみのひとつ。思いっきり身体を動かすことで心もわくわく動き出します。年齢の小さい子には人数分の旗を並べて満足感を大事に、年長の子が競い合う楽しみを求めるときには少なくしたり、一列ではなく遠く近くへ分散して立てたり、子どもの年齢や状況に合わせて旗の数や並べ方を工夫するとより盛り上がります。
その2 わくわくケーキ作り
砂や土を使って、草花で飾ったケーキやプリン作り、ごっこ遊びの中で子どもたちは自分のイメージを形に表現することを楽しんでいます。そんな場面で「このケーキ本当に食べられたらいいのにね…」という子どもたちのつぶやきがヒントになって始まったのが雪のケーキ作り。雪で大きな土台を作り、そこにイチゴ、ミカン、バナナなどフルーツを飾りつけます。準備ができたら「みんなでいただきまーす!」。本当に食べられるところがこの遊びの醍醐味。冷たい雪で冷やされたフルーツの味でみんな笑顔に。
その3 雪ブロックでお城作り
降り積もって踏み固められた雪は、かたく締まり、のこぎりで切ってブロック状に取り出すことができます。積み木よりもずっと大きなブロックですが、子どもの力でも運んで積み上げることができます。どんな形にしようか、どうしたら崩れないか、相談しながら作業を進める子どもたちの様子はまるで建築家のようです。
雪遊び・氷遊びが子どもの表現を引き出してくれます
11月から4月まで、1年の半分近くが寒くて雪のある環境ですが、それはとてもラッキーなことだと思っています。ある日、朝起きると一面の銀世界になっていて、その日から外遊びが大きく変わります。雪がない時期のブロック遊びのイメージを、雪のお城作りなどの遊びでさらに大きくふくらませて形にできたり、ソリ滑りや雪山登りなど全身を使った遊びも広がります。雪は子どもたちの心も身体も豊かに育ててくれる、空から降ってくるプレゼントだと思っています。
札幌トモエ幼稚園 宮武大和さん(保育者)
滑るって楽しいな!
雪氷の上を滑るスピード感は冬ならではの経験です。身近なものを利用したスキーやソリが活躍します。
「タライ」で滑るよ
宇都宮大学教育学部附属幼稚園(栃木・宇都宮市)
プラスチック製のタライがソリの代わりに。定員は子ども1名です。タライの中にちょこんとすわると、スリルを期待してわくわくの子もいれば、怖さと好奇心が半々で神妙な面持ちの子も。そばで見守る保育者が後ろからそっと押し、タライが止まるとホッと一息。笑顔がこぼれます。近くで様子を見ていた子どもたちが「ぼくも」「わたしも」と集まってきて、ソリ遊び待ちの列ができました。結構スピードが出るので、年長さんを中心に体験させています。
「牛乳パック」で滑るよ
山梨大学教育学部附属幼稚園(山梨・甲府市)
数年前の大雪が積もった日、家族とスキーに行ったことのある子どもが「スキーをしたい」と言い出したのがきっかけです。園で以前、牛乳パックを靴のようにはいて遊んだ経験がヒントになりました。牛乳パックの一部を切り落としたものを2個組み合わせて、ガムテープでとめたら出来上がり。長靴の上から牛乳パックスキーをはいて、園庭に落ちていた枝を切り揃えたものをストック代わりに滑ります。牛乳パックのコーティングは滑りがよく、保育者も一緒になって楽しみました。
「 ダンボール」で滑るよ
名古屋市立猪高幼稚園(愛知・名古屋市)
雪が積もった日、ダンボール板をおしりの下に敷いて園庭の築山を滑りました。ダンボール板をビニールでくるむというひと工夫をすれば、より滑りやすくなり、大人の背丈ほどの小さな築山でも、十分にスピード感を味わうことができます。また、ぬれ防止にもなるので壊れにくくなり、何度もくり返し使って遊ぶことができます。
雪に色をつけて「ごっこ遊び」
雪に想像力を刺激された子どもたち。色とりどりのごっこ遊びを展開していきます。
雪のキャンバスで色を楽しむ
たかとり幼稚園(神奈川・横須賀市)
園庭の残雪に直接色づけする遊びをしました。雪に筆先を当てると、雪がジュッと溶けて色水が染み込んでいく様子がおもしろかったようです。絵の具を溶いた色水を数種類作って大きな容器に入れておくと、子どもたちは小さな容器に取り分け、自由に雪を染めていきます。一面の雪をキャンバスにした共同製作のようです。色づいた雪を丸めてお団子にし、ポップな色のアイスクリームに見立てる子もいました。
かき氷屋さん、いらっしゃい!
菜の花こども園(山梨・甲府市)
「いらっしゃいませ」――。寒い冬になぜか、かき氷屋さんごっこで遊ぶ子どもたち。子どもたちは冷え込みそうな日には園庭で氷を作っておき、翌日、ハンドル式のかき氷器を回します。かき氷屋さんごっこのために園で1台用意したものです。
大雪に見舞われた一昨年、園児の「かき氷屋さんができるね」とのつぶやきから、雪に色水を注いでかき氷に見立てるごっこ遊びが始まりました。昨年、一昨年と色水作りが子どもたちの間で大ブーム。夏に摘んだアサガオの花びらから作ったピンクの色水を凍らせておいたものを、かき氷のシロップ代わりにしてみました。子どもたちはおいしそうに食べる「まねっこ」がとても上手。園では夏場に食育の一環としてかき氷を楽しんでいるので、子どもたちの中で強く印象に残っていたのかもしれません。
雪遊びの定番はこれ!
雪が降ったらじっとしてはいられない!子どもたちは寒さも忘れ、全身を使って雪に親しみます。
小立野善隣館こども園(石川・金沢市)
その1 やっぱり雪合戦
まずは雪玉作りから。手袋をはめたまま、ふわっとした新雪を固めるのはなかなか大変です。また、大きすぎても小さすぎてもうまく飛びません。子どもたちは投げやすい大きさの雪玉を作ろうと試行錯誤しつつ、投げ合いっこを楽しんでいました。
その2 やっぱりその雪だるま
年少さんはひざ下ほどの小さな雪だるま、年中・年長さんは自分の背丈ほどの大きな雪だるま作りに挑戦しました。ひとりで転がせないほど雪玉が大きくなったら、お友達と協力して、大玉転がし競技のように転がします。本体ができたら、スコップや枝で手を、木の実などで表情をつけます。
夢の雪国を室内に
真っ白な雪景色はあこがれの世界。想像をふくらませながら、室内に冬の風物詩を再現してみました。
積み木を使って「 かまくら」作り
たけのこども園(兵庫・神戸市)
造形用の積み木を積み上げ、大人の背丈よりも高い「かまくら」を作りました。ろうそくのつ代わりに暖色系のライトを点けると、気分はもう雪国です。見立て遊びが大好きな子どもたちは、「お餅を食べたいな」と、ダンボールで作った七輪の上に赤い布を広げて火を表現。紙粘土で作ったお餅を焼いて食べるまねをするなど、想像力豊かに遊んでいました。
幻想的な空間に
レイモンド庄中保育園(愛知・尾張旭市)
多目的室に入ると、まるで雪の結晶がひらひらと舞い降りるよう。ある年長クラスが、壁面のガラスに描かれたレモンの木を冬らしく飾ろうと、折り紙で雪の結晶を作ったことが製作のきっかけです。それが型紙を使った紋切り遊びへと発展しました。雪が降ることを願いながら、みんなで大量の雪の結晶を作り、ひもでつなげて天井から吊るしました。子どもたちの雪へのあこがれが生んだ作品です。
水が凍るとどうなるのかな?
冬だけの不思議な現象に、子どもたちの探究心はスイッチオン。わくわくが止まりません。
キラキラ光るオーナメント
大和保育所[現・青葉やまと保育園](福岡・春日市)
浅めの容器(植木鉢の受け皿など)と、絵の具を溶いた色水を用意。容器に色水を入れ、毛糸を垂らしたら、風通しのよい場所に置いておきます。翌朝、そっと氷を外せばオーナメントの完成です。木の枝に吊るすと、日の光に当たってキラキラと光ります。また、氷が溶けて水滴がポタポタと落ちる様子を、子どもたちは興味深く観察していました。
花びらのアイスキャンディー
ときわ保育園(静岡・周智郡森町)
ペットボトルで作った容器や紙コップの中に、水と花びらや木の実などの自然物を入れ、園庭に置いておきます。待つこと一晩。翌朝には氷の芸術品が完成しています。氷に枝をさしたら、まるでアイスキャンディーのようになりました。子どもたちは互いに見せ合い、氷を太陽の光に当ててキラキラさせては歓声を上げていました。
地球を作ったよ
山梨大学教育学部附属幼稚園(山梨・甲府市)
「地球のように真ん丸な氷」に挑戦。ボウルを使って2個の半球氷を作り、合体させて球体にしました。継ぎ目をなくすことにこだわる子がいたため、さらに工夫し、継ぎ目を水でぬらして、再び冷凍庫の中へ入れました。それは、氷遊びを通して、「溶けた氷同士が再び凍ると、しっかりくっつくこと」を学んだ彼のアイデアでした。
氷、できるかな?
京都教育大学附属幼稚園(京都・京都市伏見区)
身近な道具で氷を作ろうと試してみました。牛乳パック、バケツ、ペットボトルなどの容器に水を入れたり、ぞうきんやスポンジに水を含ませたりして日陰に置いておくと、翌朝にはいろいろな形の氷ができます。水の中に絵の具を入れると、氷に模様がつくことに気づいた子や、氷のでき方に違いがあることに気づき、「風に当てるとよく凍る」という発見をした子もいました。水が氷に変化する不思議を感じつつ、工夫する姿がありました。
文/エディット(小川真美、中根里香、古屋雅敏)
『新 幼児と保育』2018年12/1月号より