かとーゆーこさん「絵本への落書き」【表紙絵本館】

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『新 幼児と保育』は、毎号絵本作家さんの描きおろしの絵が表紙となっています。表紙を飾った絵本作家さんの幼年期のエッセイを紹介していきます。今回は、かとーゆーこさんです。

絵本への落書き

4歳のころ。福島の祖父母の家を訪れるときもいつも何かを作って遊んでいました。この写真では手作りの獅子舞の格好をしています。

私は平成の始まりに生まれました。遊びといえばテレビキャラクターのごっこ遊びやおままごと、お人形遊び。テレビゲームもメジャーになりつつある時代でしたが、私は絵を描いたり、紙や粘土で工作することに何よりも夢中になる子どもでした。

園ではきれいな宝物や泥団子を作って先生に見つからないよう雑木林の中に隠したり、魚の絵をたくさん描いて部屋中に放ち、魚釣りごっこをしたりして過ごしていました。いつも何かしら手を動かしていたおかげで人と会話が生まれ、友達ができました。それは大人になった今でも変わりません。

毎日、家中が落書きであふれていました。階段や押し入れの裏、チラシ、家具、柱。落書きをする場所の中でも、本棚にたくさん並んでいる絵本が一番特別なものでした。

絵本の世界に浸りながら、ページが進むのに合わせて自分の姿を描き入れていると、登場人物たちと一緒に冒険している気持ちになれたのです。落書きによる空想と現実の行き来が私にとっての絵本との出会いであり、本の中の登場人物たちは大切な友達や先生でした。今になって、両親は絵本にまで絵を描きたがる私をなぜ叱らなかったのだろうと不思議に思います。

そんな両親はケーキ屋を営んでおり、店内にはふたりが集めたこだわりのかわいい小物や雑貨が飾られていました。かわいいものを見ると心がわくわくする気持ちの原点は、その空間だったのでしょう。

好きだったものに対するときめき感は、絵の仕事をしている現在も変わらないどころかますます強くなり、好きなものを描いている時間は子ども時代に戻っているような感覚になります。この先も心の中にいる子どもの自分が迷子にならないよう、好きな気持ちを貫いて描き続けていきたいです。

かとーゆーこ

1989年福島県生まれ、静岡県育ち。神奈川県在住。女子美術大学修士課程デザイン専攻修了。2009年第15回小学館おひさま大賞優秀賞、2012年白泉社MOE絵本グランプリ佳作などを受賞。イラスト、絵本、デザイン、商品開発など幅広く活躍中。作品は、『おこめくんとママのおにぎりやさん』(えほんトイっしょエド・インター)など多数。

『新 幼児と保育』2020年12/1月号より

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