わらべうたと絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
記憶の隅にある懐かしい1冊、気になりながらも読まないままの1冊、まだ出会っていない1冊。ここは、そんな本を見つけるためのオンライン図書館です。今回はわらべうたの絵本から。日常の素朴な言葉から生まれたわらべうた遊びには、子どもの「心地よい」ことがギュッと詰まっているのです。
児玉ひろ美さん
公立図書館司書とJPIC(ジェイピック:一般社団法人出版文化産業振興財団)読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。お話会の実践のほか、近年は大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当。「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本選考委員」。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)などがあり、雑誌やWEBでも活躍中。
目次
わらべうたと絵本
「わらべうた」というと、どんなイメージでしょうか? もしかしたら、子ども時代にわらべうた遊びをした記憶がない…という方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、本来わらべうたは、特別なものではなく、子どもたちの日常の「あーそーぼ」「あーとで」「いーれて」「いーいよ」などから生まれた、素朴な言葉の集まりです。
「『あーぼーそ』って、いってみて」
2歳のRちゃんがニコニコしながら寄ってきました。本当は「あーそーぼ」だと気づきながらも、Rちゃんの口調そのままに「あーぼーそ」。すると間髪入れずに「あーとーで」の声。Rちゃんは得意げにニコニコしています。お母さんによると、保育園で『あーそーぼ』に出会ってから、Rちゃんはこの遊びに夢中とのこと。「どうぞ」「いいよ」ではなく、「あーとで」がいいたくて、家族みんなに「あーぼーそ」をいわせているそうです。そう、Rちゃんの興味の対象は言葉そのものではなく、言葉のキャッチボールなのでしょう。その後に続く絵本の言葉「いーまは ごはんの まっさいちゅう」を、Rちゃんはしっかり覚え、私に向かって「いーまは〜」と、気持ちよさそうに唱えてくれました。
「まごは いぬを よんで きました」
「いーれーて!」
おはなし会で『おおきなかぶ』を読んでいたときのことでした。次々にかぶの抜き手が加わるシーンでのことです。幼稚園に入園したてのTくんが、大きな声で「いーれーて!」。周囲には大人の和やかな笑いが広がりましたが、Tくんは居心地悪げ。私がTくんにアイコンタクトを送り、読み続けようとした瞬間、「いーいよ」「どーぞ」と、まわりの子どもたちから声があがりました。Tくんはホッとした表情になり、その場の空気がふわりとひとつに。読み聞かせは、そのまま続けることができました。
「わらべうたと絵本の読み聞かせはとてもよく似ています」
私が図書館でわらべうたを歌う意味を話す際、最初に伝える言葉です。どちらも子どもが人生で初めて出会う歌や文学であり、日常生活で使われるテンポやフレーズ、狭い音域で発する言葉のくり返しが、心地よく心を落ち着かせます。そして、わらべうたや絵本の読み聞かせは、子どもの望むこと、ふれあいやまなざし、声かけが、自然なかたちでギュッと詰まっています。それゆえ、Rちゃんの口の端に乗り、Tくんや周囲の子から声があがったのでしょう。
「楽しさがわかりません」
「そんなことで、子どもがよろこぶでしょうか?」
ご自身がわらべうたで楽しまれた経験のない方々から届く正直な声です。無理のないことです。そこで最近はこんな絵本が出版され、若い世代を応援しています。『あかちゃんとわらべうたであそびましょ!』は保育の現場でも生かせる基本的な乳児向けわらべうたを7つ紹介。表紙画からもわかりますが、子育て中の夫婦を対象としていますので、男性保育者も参考になります。3歳児以上でしたら、少し判型の大きい『わらべうたで遊びましょ!』を。読み聞かせをしながら、7つのわらべうたを自然に楽しむことができます。どちらも譜面がありますが、好きなフレーズで遊んでもよいでしょう。
12月と1月のおすすめ絵本|テーマ「わらべうた・昔話」
0歳から2歳向け
『どんどんばし わたれ』
2・3歳児向けの歩く喜びに満ちたわらべうた絵本ですが、抱っこやハイハイの0・1歳児も喜びます。ぬいぐるみを動かしながら読むのもいいですね。
『おせんべ やけたかな』
読み聞かせだけでも楽しめますが、手のひらをおせんべいに見立てて遊びます。乳児は手をトントンさわってあげましょう。
『おしくら・まんじゅう』
大勢の運動遊びというイメージですが、絵本で遊んでみましょう。子どもが自分のほっぺに両手を当てて遊べます。
2歳から4歳向け
『ちゅうちゅうたこかいな』
ニノシノロノヤノト(2の4の6の8の10)のリズムの数え歌ですが、「いない いない ばあ!」の楽しさです。
『おならうた』
「いもくって ぶ」「くりくって ぼ」「あるいて び」…「ぶぼびへぴゅぽぴすぱぷぴょ」。表紙から裏表紙まで、ぜーんぶ「おなら」です。ここは子どもたちの期待に応え、はっきり、朗らかに読みましょう。
『てぶくろ』
いまは恋しい「密」を楽しむ作品。手袋の中が混めば混むほど、子どもたちはうれしそうに顔を見合わせ、絵本を見詰めます。
『三びきのやぎのがらがらどん』
ノルウェーでは父親が子どもに語るといわれている昔話。瀬田貞二さんの翻訳は五七調でわらべうたの心地よさです。
4歳から6歳向け
『三びきのこぶた』
昔話に込められた先人からの教えや知恵は、ときとしてまったく違う形となって伝わりがちです。この機会にぜひ、おさらいを。
『どんぶら どんぶら 七福神(しちふくじん)』
宝船に乗る七福神。日本の神さまの名前と特徴を「どんぶら どんぶら」の楽しいリズムにのせて紹介します。
『さよなら さんかく』
「とうふはしろい しろいはうさぎ…」。言葉の意味と語感を楽しむわらべうた絵本。1981年からのロングセラーです。
『ねこくん いちばで ケーキを かった』
ロシアのお母さんたちがくり返し子どもたちに読み継いできた、わらべうた14編と昔話1編がやさしい日本語で楽しめます。それぞれ文と絵の見開き一場面の構成で、たくさんの動物たちが美しくも力強いタッチで描かれています。
『新 幼児と保育』2021年12/1月号より
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