ささきみおさん「小さな庭のついたアパートでの思い出」【表紙絵本館】
『新 幼児と保育』は、毎号絵本作家さんの描きおろしの絵が表紙となっています。表紙を飾った絵本作家さんの幼年期のエッセイを紹介していきます。今回は、ささきみおさんです。
目次
小さな庭のついたアパートでの思い出
絵を描かせていただくことを仕事にしていますが、幼年期、恥ずかしながら絵を描いた記憶がありません。絵の記憶は、もっとあと、小学生3~4年生くらいからです。
それなら幼年期は、何をしていたかしら? 何十年ぶりに頭の中の深いところの記憶をたどてみました。そのころ、両親とふたりの兄と私の5人で東京都青梅市で暮らしていました。
小さな庭のついた縦割りのアパート。そこでの最初の記憶は、庭で遊んだあと、窓辺にいた母に「きょう4さい」と話したことです。
敷地内にはいくつかアパートが建っていました。アパートとアパートの真ん中に広いスペースがあり、そこはコンクリートで固めておらず砂利か土だったと思います。人や車の通り道でした。
雨が降るとそこに大きくて立派な水たまりができました。その真ん中を子どもたちがきゃあきゃあ言いながら順番にバシャバシャバシャッ! と思い切り駆け抜けます。この遊びがものすごく楽しかったのを覚えています。身近な場所で体を使って経験した遊びは強く心に残るものですね。
「絵」といえばひとつだけ思い出しました。自宅の急で暗い階段を2階へ上りきった突き当たりの壁に、1枚の印象的な絵が飾られていました。女の人の上半身で暗い目、沈んだ表情、しかし嫌な感じはなく、見入ってしまうような絵でした。たぶん両親がカレンダーなどから切り抜いて額に入れて飾っていたのだと思います。その絵との出会いがあったためかわかりませんがそういえば現在も人ばかり描いています。後に、それはモディリアーニの描いた肖像画だとわかりました。
ささきみお
東京都出身。作品に『ウッソースやきそば』(ひさかたチャイルド)、『しょくぱんちゃん6しまい』(鈴木出版)、『おかあさん、おみやげ』(フレーベル館)、『パンパンパンパン パンダパン』『みてみて おばけ』(以上、国土社)、『おぶぎょうざさま』(文研出版)。挿絵に、『ぼく、トイレ』(作/ 飯野由希代・ひさかたチャイルド)などがある。
『新 幼児と保育』2023年春号より
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