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発達がゆっくりな子がほかの子と遊べません。どうしたらよいでしょうか?【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】

連載
保育マメマメQ&Hints! 保育の悩み、立ち話 with 大豆生田啓友先生
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玉川大学教授

大豆生田啓友

大豆生田 今回の質問は、「発達がゆっくりな子について」です。答えはひとつじゃありません。ぼくの考えるいくつかの対応例をあげます。みんなで対話して、考えていきたいですね。

公式Instagramで今回のテーマの動画(約1分30秒)が見られます。(←文字をタップorクリックしてください)右下は、リール動画撮影中の様子(写真左は小学館編集スタッフ)

大豆生田啓友先生

玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。最新刊は、『愛子先生と大豆生田先生の「保育はやっぱりおもしろい!!」』(柴田愛子先生との対談集・小学館)。

保育は、子どもの生活に丸ごとかかわるお仕事。
そして、同僚や保護者との関係も複雑に交ざり合って、
なかなか個人の思ったとおりにはいきません。
「こんな場合、どうしたら?」
そんな現場の保育者が抱える悩みや疑問に対して、
大豆生田啓友先生から、考え方のヒントをいただきました。
これをもとに、仲間とぜひ話し合ってみてください。

Q夢

Q夢 質問です。4歳の子の加配の担当です。「インクルージョン」ということで、できるだけクラスの友達との遊びに参加したいんですが、衝動性もあり、ほかの子をたたいてしまったり、たびたびトラブルになります。どうしたらいいでしょう?

※インクルージョン:発達の差や国籍の違いなどに関係なく、子どもの個々の特性を踏まえて、集団の中でともに生活し学ぶこと。

マメ先生

保護者の要望もあり…

マメ先生 インクルージョンの視点を持てている園は、時代の先端をいっているなあと感じます。さらに、加配の先生をつけてもらえるというのは、かなり恵まれていますよね。

Q夢 はい。それは保護者が、診断名を医療機関から受けたのが大きいのですが。

 それと、ほかの子と遊んでほしいというのは保護者の要望でもあるんです。

マメ先生 その子自身はどうでしょう?

Q夢 最近、友達と遊びたいのかなと思うことはあるけれど、まだそれほどではないように見えます。

「集団遊び」だけを美徳としない

マメ先生 なるほど。

 日本の場合、「集団遊び」をよしとする空気が強くて、どうしてもそれを強く求めがちでしょう? 人とつながることは必要だけど、ひとりで遊ぶことだって、けっして悪いわけじゃないですよね。発達段階もあるし。ですからまず、その子はどう思っていそうなのかを知ろうとするのがよいかなと思いますね。

ひとり遊びと共同遊び。どちらが優れているかではなく、「今、その子が必要としているのはどっち?」で考えては?

保護者や子どもの気持ちは?

マメ先生 ただ、子どもを加配の先生がずーっと囲い込んでいればいいかというと、それも違いますよね。それでは、クラスの子どもたちに「いろいろな子がいて、その子たちとどうかかわるか」を知る機会がなくなってしまいます。そこはインクルーシブ保育の、極めて重要な要素ですから。

 そのためには──常套手段ですが──その子がどんな場面で衝動的になりやすいかを調べて、事前の対策を担任の先生などと一緒にチームで考えられたらと思います。

遊びの見通しを伝えてみる

マメ先生 衝動性が起こりやすいのは、通常、順番のある遊びや、みんなで遊具を使うシーン。「自分が! 自分が!」となってしまうんですよね。

 遊具を使う前に、「これはみんなのモノだから、友達にも貸してあげようね」と話したり、「今からこんな遊びをするけど、順番があるからね。待てるかな?」と見通しを伝える。そうすることで、少し変わる子がいるようです。

 あるいは、友達の言ったことが理解できなかったり、遊びのルールがわからず、イライラして手が出てしまうケースもあると聞きます。

意地悪でたたいているのではない

マメ先生 でも乳幼児の場合、ほとんどは「たたいてやる!」と考えてやっているわけではないですよね。これは障がいの有無に関係がなく、反射的な行動だと思う。いわば一種の防衛本能。順番やモノを「とられたらイヤだ!」と、つい無意識に手が出てしまう。それを自分で抑えられるようになるには、脳の発達を待つしかありません。

 それを理解したうえで、手が出るような展開が予想されるときには先生がそばについて、いざというときに介入できるようにするんですよね。

「過剰反応」がクセにならないように

マメ先生 そしてその行動が起こったとき、大人が「過剰に反応しない」のがよいようです。子どもによっては、友達とトラブルを起こせば、先生が構ってくれる、注目してくれると思って、クセになってしまうことがあるのだそうです。

 友達とのトラブルは、行動を制しながら、短く、「やめようね。友達が困ってるよ」とだけ伝える。

 逆に、友達にモノを貸してあげられたり、手を出さずにすんだときに、「できたね! えらいね!」と褒めるのほうが効果が高いとする専門家が多いですね。

友達とかかわって、「うまくいった」成功体験だけじゃなく、「失敗しなかった」ことも成功体験として褒める。他者の感情が気づきにくい子の場合は、成功体験の称賛はちょっと大げさでもよいともいわれます。

「落ち着いている状態」を記憶させる

Q夢 落ち着きがなくなってきて、衝動性が心配なときは、どうしたらいいでしょうか。

マメ先生 集団から離れて、気持ちを落ち着かせたほうがいいですよね。よく聞く方法は、

・トランポリンの上をピョンピョン跳ねる

・プライベートコーナーに行く(パーティションで囲った中に、その子の好きなモノや、手触りのよい布やぬいぐるみを置いたりする)

・深呼吸や、ゆったり歌を歌うことで、呼吸によって、自律神経をコントロールする

など。

 もしこれで少しでも落ち着けたら、「落ち着けたね。よかったね」と声をかけて、落ち着いている状態がどういうものなのかをその子に知ってもらうのがいいようです。

「今日はこれができたね」を積み重ねる

マメ先生 ただ、どんな手立てもそんなに簡単に効くわけじゃありませんよね。

 行動の抑制がうまく効かないようなら、「ほかの子と一緒に遊ばせなくては!」と思わずに、ともすれば、1日数回、かかわれただけでもOKと考えたほうがいいと思います。発達がゆっくりなんですから、こちらも少しずつかかわれるようにすることを目標にしてはどうでしょう?

 「今日はこれが一緒にできたね!」を積み重ねていけたらいいですね。

Q夢 焦らずに「少しずつ」、友達と関係性を持てるようにするということですね。

今回のマメマメヒント

★この記事は小学館『新 幼児と保育』公式Instagram←こちらをタップorクリック!)でリール動画を配信した内容にweb版として加筆・再構成したものです。また、小学館の雑誌『新 幼児と保育』では、ほかのリール動画で配信した内容に加筆・再構成し掲載していますので、どうぞご覧ください。また、このコーナーへの質問、疑問も募集中です。下から投稿できます。

お話/大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)、『保育の「ヘンな文化」そのままでいいんですか!?』『愛子先生と大豆生田先生の「保育はやっぱりおもしろい!!」』(以上共著・小学館)など多数。

構成・イラスト/おおえだ けいこ

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