ソウルフードがテーマの絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】

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JPIC読書アドバイザー

児玉ひろ美

ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。

今回のテーマは「ソウルフード」。この言葉を聞いてあなたが思い浮かべる食べ物はなんですか?

児玉ひろ美さん

JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」「絵本論」の講師を担当するなど、幅広く活躍。近著に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。

「ソウルフード」って?

「ソウルフード」と聞くと何を想像なさいますか? 多くの方が、心のどこかにいつもある大切な食べ物、祖母や母(なかには祖父や父?)、故郷を思い出すような食べ物。そんなイメージでしょうか? お手元にスマホがあれば検索してみてください。「ソウルフード」とは、本来アメリカ南部の伝統料理の総称で、「フレンチ」「イタリアン」と同義語なのですね。どうやら私たちが使う「ソウルフード」とは、本来の意味とは別の和製英語のようです。

「Japanese soul food ONIGIRI ってどう作るの?」

と、カウンターにいらしたSさんは、5歳と3歳の女の子のママ。国際結婚を機に、8年前にアメリカから来日され、会話に不便はないものの読むことはまだ不得手です。写真が多い実用書ならと探しましたが、「腐敗を防ぐにはラップで〜」「お椀をふたつ合わせで振るときれいな球形に〜」など、テクニック重視でSさんの望む「どう作るの?」にたどり着きません。

そこで思いついたのが『おにぎり』。「ごはんを たいて/てのひらに、みずを つけて/しおを つけて〜」と、ひとつの動作に短い文と絵が添えられ、幼い子に絵だけでもわかるよう丁寧に経過を描いた絵本は、だれにとってもわかりやすくバリアフリーです。「ぎゅっ。ぎゅっ。」のページを見ながらお子さんたちと「おにぎり」のしぐさをしてうれしそうでした。

『おにぎり』

平山英三/文 平山和子/絵
福音館書店

おとなは さんぼん こどもも さんぼん

「この言葉があれば、Sさん困らなかったな…」と、最近Sさんを思い出すきっかけとなったのが、『おにぎりをつくる』。おにぎりの意味がわかったSさんが、お子さんと一緒に作りながら迷ったのが塩加減だったとのこと。本書の「おとなは さんぼん」「こどもも さんぼん」は、握る人の手の大きさに合わせてできるおにぎりの塩加減を的確に表しています。そのうえ、歌のように楽しくて覚えやすく、著者のプロ意識とやさしい人柄を感じます。そうそう、お米をとぐ手を「くまさんのて」というのも!

『おにぎりをつくる』

高山なおみ/文 長野陽一/写真
ブロンズ新社

おてんとさま、うんまい おにぎり ありがとうございます

「おにぎりって、ソウルフードなんですか?」と、絵本論の課題提出時に学生が『万次郎さんとおにぎり』を手に寄ってきました。質問というより、話をしたいようです。「どこのコンビニでもおにぎりがあって、居酒屋にもあって、絵本にもおにぎりが出てくるのが不思議だったんです」と話し始めた彼女。聞けば、家ではおにぎりを作ってもらったり、食べたりした記憶がないが、彼氏は「これぞソウルフード」という。「意味がわかんない……」と思っていた。でも、課題で絵本をいろいろ探している間にこの本に出会い、「なんか(心に)刺さった」というものでした。レポートにも同様の趣旨で書いていましたが、その文末には「いつか彼氏が私の作ったおにぎりで、万次郎さんのように『ガハハ』と笑ってくれたらうれしいです(汗)」とありました。採点には迷いましたが、子どもにかかわる職に就く者が、食べ物と絵本で幸せな記憶を重ねることはうれしいことです。ごちそうさまでした。

『万次郎さんとおにぎり』

本田いづみ/文 北村 人/絵
福音館書店

4月と5月のおすすめ絵本

テーマ「おべんとう」

『おべんとうばこのうた』

さいとう しのぶ/構成・文
ひさかたチャイルド

4~6歳向け

おなじみのわらべうた「おべんとうばこのうた」の絵本化です。先に歌ってから、読むとよいでしょう。巻末に譜割りがありますので、参考にしてください。

『ぼくのおべんとう』

スギヤマ カナヨ/作
アリス館

4~6歳向け

『おべんとう めしあがれ』

視覚デザイン研究所/作
高原美和/絵
視覚デザイン研究所

2歳から4歳向け

3色弁当、おにぎり、海苔巻きにおいなりさん。さまざまなお弁当をやさしい言葉ですすめます。意味が伝わるよう、心を込めて「めしあがれ」。裏表紙も忘れずに。

『ぺったん! サンドイッチ』

鈴木まもる/作
小峰書店

0歳から2歳向け

いろんなものを食パンにのせ、「はさむよーぺったん」。野菜サンド、卵サンド、ハンバーグサンド! 「両手を開いてペッタン」と遊びながら楽しめます。

『おべんとう たべたいな』

坂本千明/作・絵
岩崎書店

2歳~4歳向け

「おこめと のりで なにできる?」。おにぎり、卵焼き、たこさんウインナー…。問いに答えている間に、大好きな物でいっぱいのお弁当ができあがります。

『わたしのおべんとう』

スギヤマ カナヨ/作
アリス館

4歳から6歳向け

ギンガムチェックの布に包まれたお弁当箱。『ぼくのおべんとう』と一緒に開いて交互に読むことで、ふたりがおしゃべりをしながらお弁当を食べているみたい。途中でおかずの取り換えっこまでして、本当に仲よしです。食育の行事などにふたり掛け合いで読むとよいでしょう。

『まえからも うしろからも よめるえほん おべんとう』

さとう めぐみ/作・絵
ひかりのくに

4歳から6歳向け

前から読むと、お母さんがお弁当を作っていて、ひっくり返して後ろから読むと、子どもがお弁当を食べています。前からと後ろから、人を代えて読むとおもしろいです。

『べべべん べんとう』

さいとう しのぶ/作・絵
教育画劇

4歳から6歳向け

いろんな弁当、だれの弁当? 運動会のは超豪華。でも、一番なのは重箱に入ったおせち料理! お母さん自慢をするように読んでください。一年を通して楽しめます。

『きょうのおべんとう なんだろな』

岸田衿子/作
山脇百合子/絵
福音館書店

2歳から4歳向け

ウサギさんはにんじん。リスさんはくるみ。大きな包みのゾウさんは? お弁当の中身はそれぞれ違っても、みんな一緒に「いった だっき まーす!」。

『おべんとうバス』

真珠まりこ/作・絵
ひさかたチャイルド

0歳から2歳向け

「バスに のってください」「ハンバーグくーん/はーい」と返事を楽しむ作品です。厚紙、角丸の赤ちゃん絵本ですが、サイズは大きめで行事にも使えます。

『新 幼児と保育 増刊』2018年春号より

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