子どもの「あるある!」に寄り添う絵本【児玉ひろ美の注目本棚#1】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
最近出版された絵本のなかから、子どもと一緒に読んでほしい注目作品をピックアップ。今回は、幼児期の子どもの「あるある!」が詰まった、イギリス発の翻訳絵本をご紹介します。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、東京・台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」「絵本論」の講師を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
『こいぬのパッチ』シリーズ2冊!
子どもたちも、パッチの気持ちに思わず共感!?
イギリス・ロンドン生まれのユーモアあふれる絵本作家、デイヴィッド・メリングのシリーズがついに日本にやってきました!(おばけが読み聞かせをせがむ『おばけとしょかん』〈評論社/2005年〉が好きな私は、もう大興奮!)。主人公の「こいぬのパッチ」は、もう赤ちゃんではないけれど、まだ、お兄さんやお姉さんとも言い切れない…。 そう、まるで4~5歳ぐらいの子どものよう! いろいろなことがひとりでできるけれど、そのしぐさはまだあどけなく、目が離せません。ユーモアのある文章は、なかがわちひろさんの和訳により、楽しくリズミカルで読みやすく、読み聞かせ初心者にもおすすめです。
『こいぬのパッチと ちいさいねこ』
作/デイヴィッド・メリング 訳/なかがわ ちひろ
小学館
子犬のパッチには好きなことがいっぱいあります。アウー! と吠えること、ガシガシ掻(か)くこと、食べること…。だけどパッチは小さい猫が好きじゃありません。だって子猫たちは、すりすり ぎゅうぎゅう、どーん! ぐーすかぴー、あっ うんち…。パッチがどこへ行ってもついてきて、なんでも一緒にやりたがるのです。なかでもパッチが一番嫌なのは、お気に入りの大きな青い毛布を子猫たちとシェアすること。だって、パッチはこれがないと眠れないのですから! ところが子猫たちは、すりすり ぐちゃぐちゃ、べろべろ、ぐーすかぴー、あっ うんち…。 パッチはどうしたらよいのでしょう? 友達や自分より小さな子たちとのかかわりのなかで生まれる、少し複雑な気持ち。そんな子どもの気持ちに寄り添い、最後には心地よい満足感を得られます。
『こいぬのパッチと みどりのもこもこ』
作/デイヴィッド・メリング 訳/なかがわ ちひろ
小学館
アウー! と吠えること、ガシガシ掻(か)くこと、食べること。パッチはもう、好きなことが自分でできます。ある日、パッチのお皿に変なものが入っていました。緑色でもこもこしています。初めてのものって、ちょっと怖いけれど、気になりますね。 そーっと近づいて、つんつん、くんくん、じーっ…。そこに犬のラルフが遊びに来ました。ラルフは穴掘りが上手で、大きな垣根もひらりと飛び越ることができ、とてもかっこいいのです。ラルフはお皿の中の緑のもこもこに気がつくと、ぱくっ! それを見ていたパッチも、ぺろぺろ、ぱくっ、あむあむ、ごっくん、あれ?…。 初めて出会うものへの好奇心や不安。友達とのかかわりのなかで生まれる、憧れや競争など。子どもたちはパッチに共感しながら物語を楽しみ、未知のものへの不安を克服して、好きなことが増える喜びに満たされるでしょう。
読み聞かせ〈基本情報とポイント〉
読み聞かせるなら…
- 対象:4歳〜
- 時間☆:『こいぬのパッチと ちいさいねこ』4分/『こいぬのパッチと みどりのもこもこ』3分半
- ポイント:各ページ、間(ま)をとって絵をしっかり見せてあげましょう。たくさんのパッチが描かれているページは指さしをしながら読むとよいですね。裏表紙は絵をしっかりと見せたら文字は読まずに、表紙に戻ります。
☆時間は表紙から裏表紙を経て表紙まで読むのにかかる時間。
イラスト/小泉直子
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