「子どもの姿」 うまく書けている?「日誌」「記録」78%が苦手と回答!|アンケート結果&アドバイス

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NPO法人 子ども家庭リソースセンター副理事長

渡邊暢子

「日誌」や「日記」「連絡帳」など、保育の営みとして欠かせないのが「子どもの姿を書き残す」ということ。にもかかわらず、アンケート調査では約8割が「あまり好き(得意)ではない」「嫌い(不得手)と答えています。苦手を克服して、楽しく書くコツってあるの? 渡邊暢子先生にアドバイスしてもらいました。

★記事中の統計&コメントは『新 幼児と保育』webアンケート(2021年2月19日~3月19日実施)の結果より一部抜粋・編集しています。

監修

渡邊暢子 先生

わたなべ・のぶこ。元東京都公立保育園園長。退職後、保育士養成校講師、電話相談員などを経て、NPO法人 子ども家庭リソースセンター副理事長。

Q 「日誌」「記録」を書くことは好き(得意)? 嫌い(不得手)?

その理由は?

【好き(得意)】
【まあまあ好き(得意)】

  • その日の出来事など、子ども一人ひとりの姿を思い出しながら書くのが楽しい。(保育歴5年・地域型保育施設)
  • 子どもの様子とこちらのかかわり、それによってどんな姿が見られたかなど、その日のうちに書けば簡単。(保育歴10年・公立認定こども園)
  • 文章を書くことが好き。(保育歴17年・私立認定こども園)
  • 何か特記するようなエピソードがあれば書くのも容易なのですが、淡々と遊んでいたり、ほんの少ししか見ていられなかった子については書くのがとても困ることがあります。(保育歴14年・私立認定こども園)

【あまり(得意)好きではない】
【嫌い(不得手)】

  • 言葉の選び方や表現の仕方、自分の思いなど踏まえて書きたいのですが、すんなり出てこないことのほうが多い。いつも似たような文章になってしまう。(保育歴8年・地域型保育施設)
  • 重視しているからこそ、きちんと書かないといけないというプレッシャーがあるからです。(保育歴10年・私立認定こども園)
  • 子どもの姿を端的に記入できない。(保育歴11年・私立保育園)
  • 表現力が難しい。的確な言葉が出ない。(保育歴25年・公立保育園)
  • 書くことに時間を多く取られてしまい、ほかのことに手が回らないので、書かなくてよいなら書きたくないなぁって思ってしまいます。(保育歴10年・私立保育園)
  • あったことがその書くときに思い出せず、うまく書き進まない。(保育歴6年・公立保育園)
  • とにかく文章書くのが苦手。要点がまとまらずダラダラ書いてしまう。(保育歴10年・地域型保育施設)
  • 自分の書いたことが正しいか不安になる。(保育歴1年・私立保育園)

「文章力がない」からこそ、「書くことがない」ときこそ。「子どものおもしろさ」にアンテナを張ってみましょう

日々の記録、またそれを重ねた一定期間の記録は、子ども理解を深めてくうえでの大きな手がかりになるものです。保育者として子どもにどうかかわっていくか、問題をどう意識していくかを明確にし、結果として保育の質にも大きく影響していきます。

ですが、そうとわかってはいても、日誌や記録を書くことに苦手意識を持つ人は少なくありません。 「一人ひとりの子どもの姿をうまく書けているか?」の問いには、およそ7割の人が「あまりうまく書けていない」「書けていない」と答えています。

「うまく書く」ということを意識しすぎると、文章が得意でない人は、日誌や記録を書くのも苦手に感じてしまうかもしれませんが、文章に自信がなければ、箇条書きでもいいのです。真に大事なのは、子どもの姿をありのままにとらえること。

「書くことがなくて困る」という声もありましたが、毎日の生活において、ドラマチックな出来事ばかりは起こりません。当たり前の日常のなにげない姿に子どもの変化や成長を発見できたとき、子ども理解がより深まるだろうと思います。

書く「エピソード」は、劇的なストーリーである必要はない。子どもの視線の先、言葉に目を向けて、書きたくなる特別なエピソードを発見しよう。

Q 「日誌」「記録」「連絡帳」一人ひとりの「子どもの姿」を書けていると思う?

Q 「 子どもの姿」をうまく書けていないと思う理由は?
(複数回答あり)

「視点」を意識して書いてみましょう

子どもの姿をとらえて記録に残すとき、ぜひ意識してほしいのが、「どういう視点で書くか」ということです。厚生労働省による「保育所における自己評価ガイドライン(2020年改訂版)」に、「保育における子どもの理解」という項目があります。そこに示された「子どもの理解にあたって意識したいこと」が大いに参考になりますので、一部抜粋します。

年齢によって、また集団の中でクリアしていきたい課題もあり、ねらいを考えれば「こうなってほしい」という思いもあるでしょう。ですが、その視点から子どもを見ていると、どうしても「(こうあってほしいように)できた・できなかった」といったとらえ方になりがちです。

たとえば、絵本に夢中になって活動に参加しなかった子どもについて、「みんなと一緒にできなかった」と書くか、「絵本を読むことに夢中だった」と書くかでそのあとの書き方、読み手への伝わり方も変わります。「みんなと一緒にできなかった」というのは保育者側の都合にすぎません。その子らしさを理解してありのままに書くとするなら、やはり「絵本に夢中になっていた」ところに主軸をおいてその状況を記録していくことが大事なのだろうと思います。計画どおりにできなかったのは課題に問題があったということ。子どもにふさわしい計画に立て直していくためにも、記録が役に立つのです。

短い文でも、保育者の視点によって伝わる印象は大きく違う。子どもの姿をどう書くかは、「子どもをどうとらえるか」ということ。

Q 「日誌」「記録」を 書くとき、おもにどのようなことを大切にしていますか?

  • 子どもの姿をありのままに書く。 自分の感じたことを素直に表現したうえで決めつけるのではなく、次の日の保育の手立てとなるように書く。(保育歴10年・私立保育園 )
  • 読んだ人がイメージしやすい、簡潔に伝えられる文にすること。(保育歴1年・そのほか )
  • できないことでなく、できるようになったことを書きたい。 毎日、同じ子にならないようにしたい。(保育歴25年・公立保育園 )
  • 見た事実を書く。自分の気持ちを事実にのせずに分けて書く。(保育歴11年・地域型保育施設 )
  • まずは、事実を残すこと。次に、他人に伝わる、読める、わかる文章。 子ども主体の保育にこだわりたいので、文章からも子ども主体が伝わるような視点。(保育歴25年・そのほか)
  • ねらいに沿った活動で、子どもたちはどのように反応していたかを必ず書く。今後の振り返りや改善に役立つとともに、一人ひとりの特徴もわかると思うので。(保育歴5年・地域型保育施設)
  • あまり抽象的な表現にならないようにし、極力改善点を挙げる。(保育歴8年・地域型保育施設)
  • きょうの活動からの子どもの姿を、読んで想像できるような文面で書くように気をつけている。子どものちょっとした変化を、必ず入れる。(保育歴19年・地域型保育施設)

前述したように、文章で残す記録には、書く人の「子どもの見方」が大きく映し出されるものです。子どもの姿そのままを書く秘訣は、文章力よりなにより、「視点」をどこにおくかを意識すること。書くためのポイントをまとめました。

ポイント1 まず最初にタイトルを書いてみよう

日誌や記録を書くとき、タイトルを先に書くと文章を作りやすくなります。私自身、報告書などをまとめるときは、真っ先にタイトルを書き出します。タイトルを決めると、どうやってまとめるかを整理しやすくなるからです。

タイトルには、子どものつぶやきや、切り取った場面を表現するといいでしょう。

「雨上がりの園庭で…」「水遊び」といった抽象的なタイトルではなく、子どもの言葉をそのまま拾って「水がびっくりしているよ!」「パシャパシャ、おもしろい!」などとすると、その後の書き方も変わってくるはずです。

抽象的な言葉より、つぶやきを拾ってみる。

Q 一人ひとりの子どもについて、特にどんなところを気にかけて見ることが多い?
(複数回答あり)

Q 「連絡帳」を書くことは好き(得意)? 嫌い(不得手)?


連絡帳は日常の記録をもとに書く。さらに、保育の読み取りを加えていきましょう

連絡帳は、保護者という「読み手」と共有するもの。事実の記録を書くことのほかに、その裏にある育ち、保育の読み取りなどを書き加えます。自分の子どもを理解してくれる人が家族以外にいると思ってもらうこと、保護者自身の子ども理解にもつなげていくことが求められます。「かわいい部分を書くと喜ばれる」などと考えていると、必ず見抜かれますから、ご注意を。

ポイント2 「事実」を丁寧に書こう。主観は分けて書くと◎

日記にしても連絡帳にしても「事実が書けていること」そして、「読み手に伝わること」がすべてです。子どもの姿を見たまま、ありのまま書けていれば大丈夫。

「どういう状況で」「だれが」「どういう行動をしたか」を、書きとめていきましょう。

このとき、「〇〇をしてうれしそうだった」など、自分の感じたこと、主観を同じ文に混ぜてしまうと事実がぼけてしまいます。事実の記述とは分けて、最後にまとめることがポイントです。

ポイント3 言葉や固有名詞は、できるだけ具体的に

「図鑑を見せると、ページを開くたびに、子どもたちは思い思いに動物を指さして盛り上がっていた」

このようなシーンでは、だれがなにを言ったか、一人ひとりの言葉を具体的に記録しておくと、個別の連絡帳に書くときにも役立ちます。「動物」といった抽象的な表現でなく、できるだけ固有名詞を記すことも大切。

「動物の図鑑を見せると、Bちゃんはライオンを指さして“知ってるよ”と言っていた。Cちゃんはキリンが気に入ったようで、じっと見入っていた」

それぞれの保護者はこれを読んで、「この間、テレビでライオンを見たから、覚えていたんだな」「うちの子、キリンが好きなんです」となるかもしれません。年齢が低い場合は特に、その子どもが興味を示したのが、ライオンなのかキリンなのかを知ることは子ども理解において大きな意味を持ちます。

ポイント4 子どもの言葉、やりとり。その一瞬をメモしよう

アンケートでは、「書きたいことを忘れてしまう」という声もありました。自分が心に残った場面、気にかかったこと、いつもと違うなと思ったこと。その瞬間は、すかさずメモをとる習慣をつけるようにするといいでしょう。保育者が投げかけた言葉に対して返ってきた言葉、子ども同士のやりとりなどを書きとめておけば、それをきっかけに思い出すことができます。

ここを書こう!と思ったときにメモ帳でも手のひらでもOK。ひと言メモをしておきましょう。

ポイント5 積極的に「見つける」。意識して観察しよう

子どもをよく観察できていない、ということも「書けない」原因のひとつ。「子どもによって書くことがある子とない子がいる」という声が少なからずありましたが、よく見ていれば、必ず「書きたいこと」が見つかります。「きょうは〇〇ちゃんのことをよく見てみよう」と課題を設けて取り組んでみるといいでしょう。

子どもの言葉を聞こう、表情を読み取ってみようとすると、かける言葉はおのずと少なくなっていくはずです。笑っているとき、怒っているときに「なんで笑っているの?」「なんで怒っているの?」とは聞かないで、まずはよく観察してみる。そのことは、子どもの主体的な活動を引き出すことにもつながっていくのではないかと思います。

Q 「子どもの姿」を書き記すことは、保育にどう役立っていると思いますか?

  • ひとりの子どものことをよく見ていて、その子のことが理解できる。(保育歴13 年・私立認定こども園)
  • 自分の保育のストックとして蓄えられている気がする。(保育歴10 年・私立保育園)
  • のちの姿がどのようになるか想像しやすくなる。 過去を振り返るときに、必要になる。(保育歴1 年・私立保育園)
  • 日々を怒涛のように過ごしていく中で、一人ひとりの成長やサポートしていかなければならない点に気づく。(保育歴10 年・地域型保育施設)
  • 次のステップの目標を立てやすい。(保育歴3年・公立保育園)
  • 興味を持ったら活動内容を膨らませ工夫したり、反省が出たら何がいけなかったのか見直し、環境設定や導入のやり方、活動内容を見直す。(保育歴10 年・地域型保育施設)
  •  記録に残すことで後日振り返りができる。 次月のねらいにつなげられる。 子どもを見るという力がつく。(保育歴4 年・私立保育園)
  • 一人ひとり違うことに気づいたり、かかわり方を見直すきっかけになると思う。また、姿を書きにくい子に対してもう少し深くかかわろうと思うきっかけになるので役立っていると思う。(保育歴2年・私立保育園)

ポイント6 どんなシーンにもプラスの側面を探してみよう

「書けない」理由として、「マイナス面ばかりが見えてしまう」ということはありませんか? マイナスのことばかり書いていると、書くことが憂うつになるのも当然。ですが、マイナスに見えるシーンのなかにも、プラス要素はいっぱいあります。そこを見逃さずにとらえることが大切です。

「いつものようにAちゃんは自分の言い分だけを言っていた」

自分の主張を押し通しがちな子どもについて、このように書くと保育者側の「困った」という思いばかりが伝わってきます。その「いつもと同じような」シーンの中に、いつもと違う瞬間はありませんでしたか?

「きょうは、Aちゃんの主張に一瞬の間(ま)があった!」

わずかな変化をとらえ、それを主軸に書くことができたら、子どもの姿がより鮮やかに伝わる記録になるだろうと思います。

ポイント7 同僚間で読み合って共有するとさらに子どもの姿が見えてくる

保育者のそれぞれの価値観で子どもを見ていると、子どものほかの面が見えないということがよくあります。とはいえ、視点を変えるというのは、実はなかなか難しいもの。「こんな姿もあるよ」「もっと違った視点もあるよ」と言ってくれる人が近くにいると理想的。だからこそ、記録を共有して、ともに振り返る時間が有効なのです。

ポイント8 文章力は経験の積み重ね。小説やエッセイもヒントに

書いた文章がうまく伝わるかどうかを確認するには、一度、声に出して読むことがおすすめです。耳で聞いてみると、「ここがわかりにくい」「表現がしっくりこない」ということが見えてくるもの。

文章力は、経験の積み重ねで磨かれていくものです。小説やエッセイを読んで、書き方や表現の仕方のヒントを得るのもいいでしょう。

文/木村里恵子
イラスト/奥 まほみ

『新 幼児と保育』2021年6/7月号より

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