Bee・らんちの 音と遊ぼう 赤ちゃんからのわくわくワークショップ

おもに親子や乳幼児を対象に、音と音楽のワークショップを行うBee・らんち。絵本、身体表現、造形などを組み合わせたバリアのない遊びの工夫には保育や親子遊びのヒントがいっぱい。0・1・2歳から楽しめる音遊びのアイデアを探ります。

Bee・らんち

兵庫県在住。特別支援学校講師として出会い、ユニットを結成。右・渡瀬みわ(音楽療法士)、左・土肥朱実(レクリエーション・インストラクター)。音楽を用いたワークショップ「音あーとのひろば」のほか、だれでも楽しめる参加型ファミリーコンサートなどを行っている。

見る ✕ 音

視覚と音で遊びの世界に誘う

ワークショップの始まりの時間。渡瀬さんの歌声と土肥さんのピアノ伴奏が室内に流れ始めます。渡瀬さんの体のまわりには、きれいなちょうちょうがひらひら…。まるでミュージカルが始まるかのよう。そわそわしていた子どもたちも、お母さんにだっこされた赤ちゃんも、メロディーに合わせて飛ぶちょうちょうに興味津々の様子です。

「自分(子ども)と音の世界がシンプルにつながるように」と、音あーとのひろばでは、言葉をあまり使いません。「さあ、遊びましょう」というかわりに、音と音楽、そして目に見えるものを使って、子どもたちを遊びの世界へと誘います。まだ言葉で伝えあうことのできない小さな子どもも、五感を働かせて「楽しいこと」を感じ取っているようです。

春の歌に合わせて、今回はちょうちょうのペープサートを用意。市販のねこじゃらしを改造して制作した。
鳥の鳴き声のような音が鳴る「鳥笛」など、珍しい楽器もたくさん用意している。「いろいろな音があることを知ってほしい。たくさんの選択肢から好きなもの、好きな音を感じ取ってもらいたい」と渡瀬さん。
ワークショップの始まりは、童謡『春よこい』から。歌いながら渡瀬さんが操るちょうちょうに、子どもたちの体も動き出す。

絵本の世界と音とをコラボさせてみよう!

オノマトペの響きが楽しい絵本に、さらにさまざまな音を合わせます。この日のワークショップのテーマは「転がる・転がす」。ころりと転がる「まるちゃん」を描いた絵本を使い、「とっとこ とっとこ…」「どんどこ どんどこ…」など、楽しいオノマトペに合わせて、ピアノや太鼓を鳴らしたり、身近にあるものを振ったりたたいたり。読み手と音を出す人とのコンビネーションもポイントです。

『 ちいさい まるちゃんころり』
La ZOO/作・絵(教育画劇)
月齢の低い赤ちゃんから楽しめる絵本。穴を使った「まるちゃん」のしかけも楽しい。

音を出す

たたく、振る、転がす…
自分の力で音を出す体験

小さな子どもは、たたくのも振るのも力いっぱい。楽器や道具を使うときは必ず保護者と一緒に。

マラカスや太鼓、木琴、音積み木…。ワークショップでは、さまざまな楽器のほか、手作り楽器や小物をたくさん用意し、自由に音を出して遊べるようにしています。

「たたくと音が出るよ」「振ってごらん」と教えなくても、すぐに室内は子どもたちの作り出す音でいっぱいに。大人がやるのをマネしたり、お兄ちゃんお姉ちゃんのマネをしたり。たたくこと、転がすことに夢中になっている子どももいます。

0〜1歳の小さな子どもは、特に、たたくことが大好き。手に伝わる音の振動を感じるのも、大切な体験です。

身近なもので音を作り出してみよう!

身近にあるものを使って、いろいろな音を出してみましょう。マレットやスティックを用意しておくと、どんなものでも、あっという間に楽器おもちゃに早変わりです。

一人ひとりが出す「音」をひとつの「音楽」に編んでいく

子どもたちが思い思いに出す音も、集まればまるでオーケストラのようです。たっぷりと時間をかけて音作りを楽しんだら、楽器を使ったり、歌ったりして、思いつくままに伴奏をつけてみましょう。みんなが知っている曲でもいいし、まるっきり思いつきのメロディーでもいいのです。不思議なもので、この伴奏に合わせるように、バラバラな音がしだいにひとつの「音楽」になっていくことがあります。自分の出す音がみんなの音と一緒になる心地よさを、ぜひ体験してください。

自然に始まる、みんなの演奏会は、大人にとっても楽しい体験。

ぶら下げても楽しい

遊ぶ ✕ 音

「心地よさ」を音とともに感じる

体験したことと、同時に聴いた音や音楽は、感情と密接に結びついて記憶に残っているものです。

音あーとのひろばでは、たくさんの音や音楽を用いています。大好きなお母さんと一緒に過ごす心地よい空間、わくわくする体験。音や音楽は、その「快」の感覚をよりくっきりと心に刻むためのエッセンスにもなります。

ピアノ演奏は即興で。パターンを決めて、くり返し演奏するのがポイントです。この日は、ドキドキ感を盛り上げるような、やや不安定なメロディーに包まれて、布を使った遊びを楽しんでいました。

大きな布を使って

ふわふわと揺れる布の下は気持ちがいい。跳ねるように布の下を動き回る子どもたち。

遊び方
大きな布(ナイロン100%の透ける布を使用)を大人が持ち、ふわふわと揺らす。異年齢で遊ぶ場合は、布を持つ役目を年長児にも手伝ってもらってもよい。

この日のもうひと遊びは「ボール転がし」。布を高く上げたり低く下げたりしてボールを動かし、小さな友達にボールを届けた。

小さな布を使って

初めてのトンネルは、保護者と一緒に。慣れてくるときょうだいと一緒に、またはひとりで駆け抜けていく。

遊び方
大人が2 列に並び、小さな布を手に持ってふわふわと振る。「5、4、3、2、1」のかけ声で、その間を子どもたちが駆け抜ける。ピアノの音で盛り上げよう。

子どもの「大好き」を追求して、たくさんの心地よい体験を!

レジ袋をカサカサ鳴らす音が好きだったり、太鼓の音が大好きだったり。子どもたちとふれあっていると、0歳からすでに音の「好き嫌い」があると感じます。お母さんのおなかの中で聴いた音も関係しているのでしょう。

さまざまな音を出したり、音楽を使って遊んでいると、それぞれの音の好みがわかってきます。「大好き」を発見すると、遊びも広がります。好きな音と過ごす心地よい体験を、たくさん積み重ねてほしいと思います。

[音あーとのひろば]
身体表現、造形、絵画を大きくひとつの表現ととらえ、いろいろな形でこれらを融合させたさまざまな遊びを行うワークショップ。おもに乳幼児(親子)を対象に2015年より年10回程度のペースで開催(兵庫・神戸市)。(※現在は活動休止中)

ときには講師仲間の美術家を招いて「影絵遊び」も。子どもたちが描いた動物や人間の絵を使ってペープサートのようなものを作り、影絵にして発表する。影の動きに寄り添うように、即興でピアノを演奏。

文/木村里恵子
撮影/祐實とも明
楽譜浄書/南舘 健
写真提供/ Bee・らんち

『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2018春より

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