子どもが大好きな乗り物の絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】

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JPIC読書アドバイザー

児玉ひろ美

ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は、子どもが大好きな乗り物が登場する絵本を集めました。

児玉ひろ美さん

JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。

やっぱり乗り物が好き!

『のせて のせて』

文/松谷みよ子
絵/東光寺 啓
童心社

「行ったら、ちゃんと帰るんだよ」

当時のK君は大の乗り物好きの5歳。そのうえ負けず嫌いな男の子でした。子ども図書室の乗り物の絵本は「ぜんぶ、読んだ!」と豪語したあと、絵本の新しい読み方を教えてくれました。それは、『のせて のせて』を最初から終わりまで読んだら、続けて後ろのページから逆行して表紙まで戻るという荒業です。

「だってさぁ、行ったら、ちゃんと帰るんだよ」といいながら、「のせてのせて」を「バイバイ バイバイ」に、「てをあげて」を「てをふって」に言い換えて、「ストップ! バイバイバイバイ くまが てをふっています」と、まるで車がバックで順々に同乗者を降ろしながら、出発地まで帰るように読むのでした。

子どもの物語はよく、「行きて帰りし物語」といわれます。出かけては戻り(戻る場所があるからこそ、出かけていけるのですが)、主人公はその間に何かが変わる=成長を遂げます。まさにK君は、その潜在的欲求に導かれたかのように、行って帰っての読み方がお気に入りでした。

その後も、K君は小学校1年生の夏休みごろまで、快調に図書館内の乗り物絵本を読み続けていたように記憶していますが、私自身もそのころから子ども図書室のカウンターにつくチャンスが減り、K君の大胆な読み聞かせを見聞きすることもなくなっていました。

『でんしゃは うたう』

文/三宮麻由子
絵/みねお みつ
福音館書店

「ぷしゅーっとか、 絵本と同じだ! って なんだか、テンションが 上がるんですって」

今年のGWの最中、閉館間際の図書館で久々にお会いしたK君のお母さんにそういわれて思い出したのは、『でんしゃは うたう』でした。ちょうどK君が小学校に入学した春、月刊誌から待望のハードカバー化となった1冊で、ある私鉄沿線の駅から駅の間の電車や信号、踏切などの音をすべて、作家の三宮麻由子さんが聞いたとおりを文字にした作品です。

K君は、乗り物好きが高じて、この春から鉄道の専門の高校に進学し、運転のシミュレーションで練習をするたびに、効果音が「絵本と同じ」と思い、うれしくなっているそうです。それを聞いて、私のテンションも上がったことはいうまでもありません。

『ぎったん ばっこん』

文/なかえよしを
絵/上野紀子
文化出版局

「♪ぎったんばっこん ♪ぎったんばっこん」

乗り物と聞くと大人はすぐに車や電車、船や飛行機など、どこかへ移動するものを考えがちですが、幼い子にとって乗り物は、乗ることそのものに意味があって、くり返す動きと音が加わればそれで十分満足なのでしょう。

『ぎったん ばっこん』は、動物たちがシーソーに乗って「ぎったん ばっこん」と楽しむ作品です。最近は公園でシーソーを見かけることも少なくなり残念なのですが、今でもこの絵本は貸し出しも多く、独特の節回しで「♪ぎったん ばっこん」と、親しまれているようです。ときどき、わらべうたの「♪ギッコン バッコン ヨイショブネ」と混同されている方も見かけますが、親子で楽しめれば、どちらでもそれが一番と思うのです。

『おとうさん あそぼう』

文/渡辺茂男
絵/大友康夫
福音館書店

「とうとう 娘たちの専用車になりました」

相好をくずしながら『おとうさん あそぼう』を返却にいらしたのは、2歳の双子SちゃんとNちゃんのお父さん。絵本のとおりに、肩車やおんぶ、お馬…と、お父さんを乗り物に変える、すべての方法をふたり分実践したとのこと。いいお父さんですね。Sちゃん、Nちゃんが自慢げな面持ちでお父さんの両側にぴったりくっついていました。

『つんつくせんせいと まほうのじゅうたん』

作・絵/たかどの ほうこ
フレーベル館

子どもはそれが想像であれ、実際のものであれ、乗り物が大好きです。ですから、こんな不思議な物語『つんつくせんせいと まほうのじゅうたん』も大好きです。そのじゅうたんは、必要なとき、必要な大きさになり魔法の言葉を唱えれば、ふわふわっと浮かび上がって、空を飛び始めます。つんつく先生の保育園はなんて楽しそう! 新刊棚にあったこの本を見つけた4歳のT君がいいに来ました。

「児玉さん、これでお話の世界にもいけるよね」

8月と9月のおすすめ絵本

テーマ「もうすぐ運動会」

『 よーいどん!』

【参加型】2歳から4歳向け

文/中川ひろたか
絵/村上康成
童心社

「 いちについて よーい うどん!」「かけっこ かけっこ こけこっこ こけこっこ」と声に出して読むと、なお一層、楽しい作品。大真面目に緊張感を持って「よーい!」のあと、十分間(ま)をとってから軽快に「うどん!」。子どもたちは大喜びしますが、読み手は平然と読むのがコツ。後半の探し物も人気があり、何回も「読んで」といわれます。

『ぺんぎんたいそう』

【参加型】0歳から2歳向け

作/齋藤 槙
福音館書店

「ぺんぎんたいそう はじめるよ いきを すって~」。ペンギンと一緒に楽しく体操ができます。首を伸ばしたり、羽をパタパタさせたり、単純な動きですから0歳から大丈夫。最初は「ぱたぱた」「ぴったんこ」などの音を楽しむことから始めてもよいでしょう。福音館書店のH P で体操の動画や楽譜を見ることができます。

『できるかな? あたまからつまさきまで』

【参加型】異年齢向け

作/エリック・カール
訳/工藤直子
偕成社

『はらぺこあおむし』の作者エリック・カールさんの作品。ペンギンと一緒に頭をくるん、キリンと一緒に首をぐいん。頭からつま先まで、動物と一緒に体操です。ワニとお尻をくいくいするときは潔く照れずにしましょう。足を「どしん」や「ぼーん」のところは、お互いにぶつからないよう「お手てで(やって)」「そっとね」と臨機応変に。

『さかさことばでうんどうかい【新版】』

【ことば遊び】4歳から6歳向け

作/西村敏雄
福音館書店

上から読んでも、下から読んでも同じ言葉でできている、逆さ言葉の絵本です。最初は素直に読んでください。最後にタネあかしのように書いてある説明もそのまま読み、子どもたちの反応を受けとめてから、再び表紙に戻って読みます。文字を読める子は先を急ぎますが、読めない子に合わせ、文字を指でたどるとよいでしょう。

『新 幼児と保育』2018年8/9月号より

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