0・1・2歳児にぴったりの絵本がズラリ【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
はじめの一歩を歩み出したそのときから、子どもはエネルギー全開に前へ前へと進み続けます。そんな子どもの心に寄り添う絵本集めました。大人にとっても、育ちの理解にきっと役立つことでしょう。
児玉ひろ美さん
公立図書館司書とJPIC(ジェイピック:一般社団法人出版文化産業振興財団)読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)などがあり、雑誌やWEBでも活躍中。
目次
育ちのエネルギー
子どもが初めて自分の足で歩き出すとき、私たち大人は無意識にしゃがみ、両の手を子どもに差し出します。子どもたちの中には、はじめの一歩を保育者に向かって歩み出した子もいることでしょう。そんな子どもたちも、あっという間に、トコトコトコトコ、ときに転びながらも、前へ前へと歩み始めます。『ぼくにげちゃうよ』は、大人の心配をよそに、ピョンピョン前へ行きたい子どもの心に沿って、原書は1942年、日本では1976年から読み継がれる、子どもの本の古典といえる作品です。でも、どんなに子どもが逃げ回っても、お母さんが子どもを追いかけるからこそ(そう、サーカスで綱渡りだってしちゃうのです)、子どもは安心して、エネルギー全開! より広い世界へと歩いていけるのです。歌人の俵万智さんに「一人遊びしつつ 時おり我を見る」に始まる歌がありますが、まさにここに歌われる俵さんのお子さんは、この絵本の主人公だと思いました。そして歌の続きは「いつでもいるよ 大丈夫だよ」。この安心感が育ちのエネルギーを育み、子どもを前へと歩ませるのでしょう。
一方、そのエネルギーで心を動かし始めたのは『いやだいやだ』のルルちゃん。表紙の顔を見ただけでも、その強いパワーを感じますね。こちらも1969年から読み継がれ、今年3月140刷となりました。こうして見ると、子どもの心と体の育ちに寄り添った絵本は、やはり世代を超え、読み継がれているのですね。
出典/『生まれてバンザイ』俵万智(童話屋)
『ぼく にげちゃうよ』
マーガレット・ワイズ・ブラウン/文
クレメント・ハード/絵
岩田みみ/訳
ほるぷ出版
『いやだいやだ』
せな けいこ/作・絵
福音館書店
0・1歳児クラス トコトコのエネルギー
この時期、0歳児クラスの多くのお子さんが誕生日を過ぎ、「目に映ったものに手を伸ばしてさわる」から、「自分の心が動くほうへ近づく・追いかける」をするようになって、喜びに満ちた表情で活発に体を動かしていることでしょう。また、周囲の大人や友達の表情から、うれしい気持ちを共有して体を弾ませ声をあげたり、手をたたいたり、エネルギー全開で感情を表現しますね。その姿に、私たち大人は圧倒されることもしばしば。図書館など、読み聞かせの現場でも、0・1歳児たちの成長は目覚ましく、わずかな期間でも同じ絵本に対する反応が大きく変わることがあります。
下記にご紹介する『がたんごとんがたんごとん』の読み聞かせにじっと見入っていた1歳2か月の子どもが、翌週には自分が電車になって「がたんごとん」と体を動かして、積極的に読み聞かせに参加。途中からは、隣にいた同じ年ごろの子どもと、同じリズムで心地よさそうに揺れながら聞き入っていました。ところが、読み聞かせが終わり本を閉じた途端に、トコトコトコトコ、ふたり一緒に体ごと絵本に突進してきました。でも、おはなし会が終われば、私がかかわれる時間はそこまで。ふたりで再び「がとんごとん」のリズムを楽しむのでしょうか?こんなとき、「園の先生なら、このあともこの子たちを見ていられるのにな…」と、保育者の方に私は少しヤキモチを焼いてしまうのです。
くつくつあるけ
林 明子/作
福音館書店
子どもは靴が大好き。「ぱた ぱた ぱた」「とん とんとん」「ぴょん ぴょん」。軽快なリズムで靴と一緒にお散歩気分を楽しめます。最後は靴が眠くなるので、お昼寝前にもいいですね。
がたん ごとん がたん ごとん
安西水丸/作
福音館書店
ページをめくるごとに、列車が前へ進んでいくことを感じられる作品です。子どもはめくる楽しさに気づくことでしょう。図書館での赤ちゃん向けおはなし会でも大人気の1冊。
こりゃ まてまて
中脇初枝/文
酒井駒子/絵
福音館書店
「こりゃ まてまて」と、子どもが追いかるのは、チョウ・トカゲ・ハト・ネコ。そして、「こりゃ まてまて」と、子どもを追ってきたのは、子どもを包むパパの手。この大きな手がそばにあるから、子どもは安心して、次々に生き物を追いかけていけるのでしょう。
ようい どん
渡辺茂男/文
大友康夫/絵
福音館書店
「ようい どん」で飛び出した動物たち。くまさんは、平均台の橋をわたって…「どすん!」。あれあれ、失敗!鉄棒をぐるりとひとまわ…「どすん!」。がんばれがんばれ。
どんどこ ももんちゃん
とよた かずひこ/作・絵
童心社
20周年を迎えたももんちゃんシリーズの1作目。ももんちゃんは、どんどこ進みます。丸太の橋も大きなクマもものともせず、どんどこ、どんどこ急ぎます。その進んだ先には…。
ぼく つかまらないもん!
マーガレット・ワイズ・ブラウン/文
なかがわ ちひろ/訳
長野ヒデ子/絵
あすなろ書房
冒頭で紹介した『ぼく にげちゃうよ』とは、訳者と絵の作家は違いますが、文は同じ作家です。どちらも人気がありますが、出版年は40年近い差があり(2014年初版)、その語り口や絵は時代による親子の関係性を表していて興味深いものがあります。ぜひ読み比べてみてください。
きんぎょが にげた
五味太郎/作
福音館書店
「きんぎょが にげた」「おや また にげた」。ページを繰るたびに、金魚は逃げ出し隠れます。「どこに にげた」「こんどは どこ」。指さしができるようになったら、読みたい絵本。
とこちゃんはどこ
松岡享子/作
加古里子/絵
福音館書店
とこちゃんは元気な男の子。とことこ駆け出し、すぐどこかへ行ってしまいます。商店街、動物園、海岸、縁日…そして、きょうはデパートへお買い物です。とこちゃん、大丈夫かしら…。
1・2歳児クラス イヤイヤのエネルギー
1・2歳児は、言葉や身ぶりでまわりの人に働きかけることが盛んになるとともに、何かにつけて「いや!」「やだ!」を連発することも増えてきます。子育て中の保護者の間では、「イヤイヤ期」という言葉がよく使われるようになり、育児書や子育て雑誌でも大きく取り上げられます。この時期は、もちろん子ども自身にとっても一大事! 何しろ自分が何かを「思う」「感じる」ということすら、明確に意識できていないのですから、対処することなどできるはずもなく、泣きたくなるのは無理もないこと。「いや」や「やだ」の言葉を発することは、子どもにとって大切な一歩。次の成長へのエネルギーなのですね。
でも、保育者のみなさんならそう思えることも、多くの保護者にとっては「いかに乗り越えるか」という、子育てのハードルになっているようです。WEBの検索エンジンに「イヤイヤ期」と入力すると、検索候補に「いつから」「いつまで」「なぜ?」などがあがることからも、その悩みの深さを感じます。その一方、検索候補のひとつに「絵本」の文字もあがってきました。検索する方々は、絵本が単に子どもを喜ばせたり、遊ばせたりするものではなく、子どもの心の動きに沿う力を持っていることをご存じなのでしょう。そこに、絵本に対する信頼を感じることができ、とてもうれしくなりました。
あめふり あっくん
浜田桂子/作
佼成出版社
おひさま保育園のあっくん。「いやだよう」と泣いています。ひなちゃんがいいこいいこをしても、しょうちゃんが涙を拭いても、あきちゃんがケーキをくれても「いやだよう」。とうとう雨も降ってきました。あっくんとお空、どちらが先に泣きやむのでしょう?
やだ!
ジェズ・オールバラ/作・絵
徳間書店
ジョジョはお母さんの「お昼寝の時間よ」に「やだ、やだ、やだっ」と逃げ回ります。するとお母さんは「じゃさよなら ジョジョ」と、隠れてしまいました。ジョジョ、どうする?
ノンタン ぱっぱら ぱなし
キヨノ サチコ/作・絵
偕成社
やりたい放題のノンタン。お友達に「いーけないんだ いけないんだ!」と怒られても、へっちゃらです。なんだかちょっと、うらやましい?でも、最後にはちゃんとお片づけしますよ。
ぞうちゃんのいやいや
三浦太郎/作
講談社
赤ちゃんだけど少ししゃべるぞうちゃん。嫌いなものには「いやいや」。好きなものには「もっかい」と自己主張。プリン、おうどん、ぼうし、すべりだい…。次々身近なモノが現れては「いやいや」と「もっかい」をくり返します。人気の『ぞうちゃん』シリーズ2作目です。
ふうせんねこ
せな けいこ/作・絵
福音館書店
おねこさんがおこってぷー。ふくれてぷー。わがままいっぱいぷー。あれあれ、顔がふくらんで、まるで風船のようにお空に飛んで行ってしまいます。おねこさんどこへ行ったのでしょう?
いやいや にゃんこ
東 君平/文・絵
復刊ドットコム
いやいやにゃんこはお風呂が嫌いな困った子です。石鹸でじゃぶじゃぶ遊んでばかりで入りません。すると、魔法使いのおばあさんがやってきて、仲よくしてといいます。なぜでしょう?
どうすればいいのかな?
渡辺茂男/文
大友康夫/絵
福音館書店
「 しゃつを はいたら どうなる?」に始まり、パンツ、帽子、靴など身のまわりのものが次々出てきますが、くまさん、素直には身につけません。0・1歳児クラスのコーナーでも紹介した『ようい どん』と同シリーズです。
こわくない こわくない
内田麟太郎/文
大島妙子/絵
マーくんは、このごろ反対のことばかりいいます。ある夜、マーくんの夢にオバケが出てきました。「こわくない こわくない」。おや、まーくん、夢でも反対のことをいっていますね。すると…。
『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2021秋冬より
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