3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~B型肝炎・小さなけがの応急手当て~

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子どもに起こりがちな体調トラブルに直面したときの対処法を、3ステップでわかりやすく指南。今回は「B型肝炎」と「小さなけがの応急手当て」を紹介。初期段階の迅速な対応で、悪化を未然に防ぎます。

監修

澁谷紀子 先生

総合母子保健センター愛育クリニック 院長兼母子保健科部長。小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。

B型肝炎

母親から感染することがほとんどですが、人からうつることも。ワクチンで予防することが大切です。

step1 おもな症状と原因

母親から子どもへの感染が多い

子どものB型肝炎の多くは、出産の際、母親から子どもに感染するものです。このほか、血液などを介して人から人へうつることもあります。感染すると急性肝炎を発症し、食欲不振、体がだるい、皮膚や粘膜が黄色っぽくなる黄疸(おうだん)などの症状が現れますが、子どもの場合、9割は症状が出ないか、出てもかぜ程度の軽いものです。ウイルスが排出されれば治りますが、乳幼児の場合は慢性化しやすいので注意が必要です。

step2 母子感染予防

母親が感染している場合は生まれた直後から予防

母親は妊娠中に、B型肝炎ウイルスの抗原の検査を行います。母親が抗原陽性(体内に抗原を持っている)の場合、子どもに感染する可能性があるので、生まれた直後から発症予防の処置を行います(下図参照)。子どもが3歳以下で感染すると、ウイルスを排除できず体内に持ち続ける「キャリア」になる確率が80%といわれています。キャリアは将来、肝硬変や肝がんになるリスクがあるため、乳幼児期に感染しない予防措置が重要です。

B型肝炎を予防するために

B型肝炎を予防するためのワクチンスケジュール
※父親や家庭でのおもな養育者が感染している場合は、接種時期を早めるとよい。

step3 予防のためにできること

定期接種のワクチンで確実に予防する

B型肝炎は、ワクチンで予防することができます。母親が感染していない場合、「定期接種」としてワクチンを接種することができます(接種のスケジュールは上図参照)。父親や、家庭でのおもな養育者が感染していることがわかっている場合は、接種のタイミングを早めることがすすめられます。園での感染を防ぐためには、血液や体液(傷口からしみ出す浸出液など)に触れさせないようにすることが大切です。

園で注意したいこと

※血液や体液、唾液などから感染するが、プールなどで水を介してうつることはない。

小さなけがの応急手当て

園で多い小さなけがは応急手当てをした後、経過を観察し、必要に応じて病院へ行きましょう。

step1 すり傷や切り傷の応急手当て

消毒はせず、洗って傷口を保湿

浅いすり傷や切り傷は、まず流水で傷口をよく洗い、どろや砂をとり除きます。その後、ハイドロコロイド素材のばんそうこう(「傷を治す」などの効果が表示されている市販のばんそうこう)を貼ります。消毒をすると正常な細胞も壊され、治りが遅くなってしまうため、消毒薬を使う必要はありません。このように、傷口を覆って乾かさない治療法を「湿潤(しつじゅん)療法」といいます。体に備わった自然治癒力を生かすもので、早く治って痛みが少なく、傷跡も残りにくいことがわかっています。

小さな傷口の手当ての基本

小さな傷口の手当ての基本

step2 病院へ行ったほうがよい場合

傷口に異物が残るときなどは病院へ

傷口が大きい、深い、出血がなかなか止まらない、といった場合は、病院で治療を受けます。傷口を流水で洗ってもとれない異物(小石やガラスなど)が残っていたり、目の近くなどデリケートな部位を傷つけたりしたときも、すぐに受診しましょう。応急手当てをした後、傷口が化膿してしまった場合も早めに病院へ行きましょう。

step3 体や頭を打った場合に注意すること

頭を打った後は、慎重に見守って

腕や足を打ったりひねったりしたときは、痛むところを冷やします。腫れがどんどん悪化したり、痛むところが動かせなかったりする場合は病院へ行きましょう。鼻血を出した場合は、うつむかせ、鼻を両側からつまんで止血します。頭を打ったときは、まず意識に異常がないかどうかを確認し、緊急時(下参照)には病院へ。直後に変わった様子がなくても、当日は入浴を控えて24~48時間はできるだけ目を離さないようにし、その後1週間ほどは注意して見守ります。

鼻血の応急手当ての基本

鼻血の応急手当ての基本
※出血がおさまったら、脱脂綿やティッシュを詰めてもよい。

頭を打った! こんなときは病院へ

・(一時的にでも)意識がない
・ぼんやりして反応が悪い
・顔色が悪い
・けいれんした
・おう吐をくり返す
・打ったところが陥没している
・高いところから落ちて頭を打った

転んで頭を打ってしまった子ども

構成/野口久美子
イラスト/河合美波

『新 幼児と保育』2019年2/3月号別冊ふろくより

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