0~2歳児 食物アレルギーの基礎知識【園で気になる子どもの病気 #3】

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園で気になる子どもの病気
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食物アレルギーは、重症になると命にかかわることもあります。園と家庭が連携し、正しく治療・予防に取り組むことが大切。万が一のときに備えて、緊急時の対処法も知っておきましょう。

監修

澁谷紀子 先生

総合母子保健センター愛育クリニック 院長兼母子保健科部長。小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーは、特定の食品に対してアレルギー反応が起こる病気。多くの場合、原因となる食品を食べたり飲んだりしてから(※1)、2時間以内に症状が現れます。症状はさまざまですが、最も多く見られるのは、じんましんなどの皮膚症状。

さらに、せきやぜん鳴(めい)(呼吸するときにゼイゼイと音がする)などの呼吸器症状、目が赤くなるなどの粘膜症状、おう吐、腹痛などの消化器症状の順に多くなっています。また、まれにアナフィラキシーショック(後掲参照)を起こすこともあります。

※1 原因となる食品に触れたり、成分を吸い込んだりしたことで症状が出る場合もあります。

食物アレルギーによるさまざまな症状

食物アレルギーが起こる仕組み

アレルギー反応には、人の体に備わった「免疫」の働きがかかわっています。免疫は本来、体内に入ったウイルスなどの「異物」を排除するためのものですが、アレルギー体質の場合、無害な食品の成分が異物とみなされてしまうことがあるのです。

食物アレルギーのほとんどは、原因となる食品(=アレルゲン)を初めて食べたときに症状が現れます。アレルゲンは人によって異なりますが、小児で多いのが、卵、牛乳・乳製品、小麦です。離乳食開始後はアレルギーの有無を知るため、初めての食品は一度に1種類、まずは少量から食べさせるようにするとよいでしょう。

病院での治療

食物アレルギーが疑われる症状が出たときは、早めに病院へ。その際、食べたものの種類や量、どのぐらい時間がたってから症状が出たのか、などを記録しておくと診察に役立ちます。問診に加え、必要に応じて皮膚検査や血液検査、原因と思われる食品を少量食べさせる検査などを行うこともあります。

治療が必要な場合は、医師の指示に従って食品の除去などを行いますが、成長とともに食べられるようになることがあるので(下の表参照)、定期的に再評価することが大切です。

年齢別食物アレルギー有病率

厚生労働省平成27年度子ども・子育て支援推進調査研究事業補助型調査研究
保育所入所児童のアレルギー疾患罹患状況と保育所におけるアレルギー対策に関する実態調査
(平成28年2~3月実施 回答施設数15,722 回答率48.8%)

検査の結果は「 目安」と考える

病院での検査の結果、複数の食品がアレルゲンと推定されることがあります。ただし、こうした結果はあくまで「アレルギー反応を起こす可能性」を示す目安。実際には、食べても症状が出ないことも多いのです。

医師は、検査の数値から症状が出る可能性を予測したうえで、食べさせ方などを指示しています。家庭では、自己判断で食品の除去などを行わないようにしましょう。食物アレルギーを心配する保護者は多いのですが、原則として、症状が見られないのに検査をする必要はありません(※2)。

※2 重度のアトピー性皮膚炎がある場合、医師から離乳食開始前の検査をすすめられることもあります。

食物アレルギーは「 食べて発症予防する」ことが大切

以前は、アレルゲンとなりやすい食品は消化機能が発達するまで食べさせないほうがよい、とされていました。でも最近では、いろいろな食品を早い時期から食べさせることが食物アレルギーの発症予防に役立つといわれています。これは、食物アレルギーが起こる仕組みについての考え方が変わってきたため(後掲参照)。

たとえば卵なら、生後7~8か月ごろから食べさせることがすすめられています(※3)。ただし重度のアトピー性皮膚炎がある場合は、医師に相談しながら離乳食を進めるようにしましょう。

※3 「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)(厚生労働省) 

食物アレルギーの予防にはスキンケアも有効

アレルギー反応は、原因となる物質が初めて体内に入ったときに「抗体(特定のものを異物と認識する物質)」がつくられ、2回目以降に入ってきた原因物質に反応するために起こります。でも食物アレルギーの多くは、初めてその食品を食べたときにアレルギー反応が現れるのはなぜでしょう。

近年の研究によって、アレルゲンとなる食品を食べる前に、傷ついた皮膚を通してアレルゲンが体内に入っていると考えられるようになりました。そして同じ食品でも、最初に「食べた」場合は、「異物」とみなされにくいことがわかっているのです。

つまり肌を健康に保つことが、食物アレルギーの予防に役立つということです。日ごろから保湿を心がけ、湿疹や肌あれはすぐにケアを。アトピー性皮膚炎は、医師の指示に従って正しく治療することが大切です。

食物アレルギーの原因

園で症状が出たときは

園でアレルギー症状が現れたときは、経過を観察・記録しながら子どもの様子を見守ります。下の表の「中等症」以上の症状がある場合は、すぐに病院で受診します。「重症」にあてはまる症状がひとつでも見られたら「アナフィラキシーショック」が疑われるので、救急車を呼びましょう。

「アナフィラキシーショック」とは、アレルギー反応による複数の症状が急激に現れ、意識や血圧の異常が見られる状態のこと。命にかかわることもあるので、すぐに適切な処置をする必要があります。病院で処方される「エピペン」を預かっている場合、重症の症状が現れたらすぐに使うことが大切です。

アレルギー反応の重症度

救急車の到着を待つときは……

※4 重度でリスクが高い場合、体重15キロ以下でも処方されることがある。

エピペン(アドレナリン自己注射薬)の使い方

エピペンの副反応は軽く、使うタイミングが遅れるほうがよくありません。迷ったときは、中等症でも使ってかまいません。

文/野口久美子
イラスト/河合美波

『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2019夏

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