RSウイルス感染症・気管支ぜんそく【園で気になる子どもの病気 #4】

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園で気になる子どもの病気
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監修

澁谷紀子 先生

総合母子保健センター愛育クリニック 院長兼母子保健科部長。小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。

RSウイルス感染症

かぜのような症状から重症化することがあります。2歳までにほぼ100%が感染するといわれています。

【おもな症状と原因】重症化すると気管支炎などを起こす

RSウイルスの感染によって起こります。鼻水やせき、発熱といったかぜに似た症状から始まり、軽症の場合はそのまま治まります。

ただし年齢が低いほど重症化しやすく、特に初めて感染した生後6か月未満の赤ちゃんは、30%ほどの確率で気管支炎や肺炎を起こします。気管支炎や細気管支炎になると、息を吐くときにゼイゼイと音がするようになります。

【ホームケア】苦しそうなときは上体を起こした姿勢に

乾いた空気は気管を刺激するので、室内は適度な湿度を保ちます。激しくせき込んだり呼吸が苦しそうだったりするときは、すわらせて体を支えたり枕などを使って上体を高くしたりします。

のどからつながる空気の通り道が乾燥すると、たんが出にくくなって苦しいので、少量ずつ水分補給をして、たんを出しやすくします。呼吸が浅くて速い、激しくゼイゼイする、水分がとれない、などの場合は、すぐに病院へ行きましょう。

【治療の基本】吸入薬や飲み薬で呼吸を楽にする

気管が左右の肺へ向けて分かれる部分より先を「気管支」、気管支が細かく枝分かれした部分を「細気管支」といいます。RSウイルスが気管支や細気管支に感染すると症状が悪化するので、病院での治療が必要になります。病院では、症状に応じて気管を広げる薬の吸入などを行い、飲み薬も処方されます。重症の場合は、入院が必要になることもあります。

【予防のためにできること】こまめな手洗い&うがいが基本

感染している人の鼻水などにはウイルスが含まれており、せきやくしゃみをしたときに飛びちったものを吸い込んだり、手を介して体内に入ったりすることでうつります。予防の基本は、こまめに手洗いやうがいをすること。かぜのような症状が見られる子どもは、病気を広げないためにマスクをつけるのが理想です。

RSウイルスは一度の感染では十分な免疫ができないため、くり返しかかりますが、成長とともに症状は軽くなっていきます。

Dr.より
赤ちゃんの場合、症状が急速に悪化することがあります。RSウイルスの流行期には、かぜだと思っても油断せず、注意して様子を見守りましょう。

気管支ぜんそく

ふだんは元気にしていても、発作が起こると呼吸が苦しくなったり、せき込んだりします。

【おもな症状と原因】呼吸が苦しくなる発作をくり返す

気管支(前述参照)に慢性的な炎症が起こり、呼吸が苦しくなる発作をくり返します。発作が起こると、息を吐くときにゼイゼイ、ヒューヒューと音(ぜん鳴)がしたり、激しくせき込んだりします。アレルギー反応によって起こる「アトピー型」が多く見られますが、そのほかにもいくつかのタイプがあります。

3歳ぐらいまでの子どもの場合、RSウイルスなどの感染が関係するものが多く、それ以降はアトピー型が増えていきます。

【ホームケア】激しい発作を起こした場合は病院へ

病院で処方される薬を正しく使い、症状をコントロールすることが大切です。発作を起こしたときは、寝かせるとかえって呼吸がしにくくなります。すわらせて体を支え、上体を起こした姿勢を保ちましょう。ゆっくりと腹式呼吸をさせ、飲めるようなら少しずつ水分補給を。

処方された薬がある場合は、薬を飲んだり吸入したりしたうえで、そばを離れずに様子を見守ります。激しい発作を起こした場合(下参照)は、すぐに受診しましょう。

【発作を防ぐためにできること】発作のきっかけとなる刺激を防ぐ

ぜんそくの発作は、炎症を起こして敏感になっている気管支が刺激されることで起こります。発作を防ぐためには、発作の原因を遠ざけることが大切です。

アトピー型の場合、ダニやハウスダスト、ペットの毛などがアレルゲン(アレルギーの原因物質)であることが多いようです。アトピー型以外にも共通するものとしては、かぜなどの感染症や運動、急な気温の変化、空気の汚れなどがあります。気管支の炎症を改善していくためには、薬を正しく使うことに加え、発作を防ぐ工夫を続けることも大切です。

受診の目安

ぜん鳴、せき込み
→上の「 ホームケア」の対処をして改善しなければ病院へ

ぜん鳴、せき込みに加え、息を吸うときに胸がへこむ など
→すぐに病院へ

唇が紫色、呼吸が苦しく話ができない、呼びかけても反応がない など
→救急車で病院へ

Dr.より
アスリートにも、ぜんそくの人は多くいます。時間はかかりますが、きちんと治療すれば、十分に症状をコントロールしていくことができる病気です。

文/野口久美子
イラスト/河合美波

『新 幼児と保育』2019年10/11月号より

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