3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~RSウイルス感染症&尿路感染症~

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子どもに起こりがちな体調トラブルに直面したときの対処法を、3ステップでわかりやすく指南。今回は「RSウイルス感染症」と「尿路感染症」を紹介。初期の段階で症状に気付くことで、悪化を未然に防ぎます。

監修

澁谷紀子 先生

総合母子保健センター愛育クリニック 院長兼母子保健科部長。小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。

RSウイルス感染症

多くの子どもがかかる病気ですが、初めて感染したときは重症化することがあるので要注意です。

step1 おもな症状と原因

風邪のような症状から気管支炎を引き起こすことが

「RSウイルス」に感染することによって起こります。最初に見られる症状は、鼻水やせき、発熱など。軽症の場合は数日で治まるため、風邪と見分けがつかないことも少なくありません。ただし、初めて感染した赤ちゃん(特に生後6か月未満)は注意が必要。30%程度が重症化し、気管支炎や肺炎を引き起こすことがあるからです。気管支炎になると呼吸がしにくく、息を吐くときにゼイゼイと音がするようになります。

気管支炎って?

step2 治療の基本

苦しそうな様子に気づいたらすぐに受診を

呼吸が速かったりゼイゼイしたりして苦しそうなときや、水分が摂れないときは、すぐに受診します。RSウイルスから起こりやすいのは、気管支が細かく枝分かれした「細気管支」にウイルスが感染する「細気管支炎」。重症化すると呼吸困難を起こすこともあるので、注意が必要です。病院では、症状に応じて飲み薬が処方されたり、気管支拡張薬の吸入をしたりします。重症の場合は、入院して気管支の炎症を抑える薬の点滴や酸素投与が必要な場合もあります。

step3 予防のためにできること

こまめな手洗い&うがいで感染を防ぐ

感染している人の鼻水などに含まれるウイルスが、せきやくしゃみ、手などを介して広がります。予防するためには、日ごろから、園や家庭で手洗いやうがいをこまめに行うことが大切です。RSウイルスには、1歳までに約70%の子どもが感染するといわれています。一度かかっただけでは十分な免疫ができないため、何度もくり返し感染しますが、成長とともに症状は軽くなっていきます。

予防のために園でできること

尿路感染症

尿の通り道に炎症が起こる病気。赤ちゃんの場合、進行するまで気がつかないこともあります。

step1 おもな症状と原因

排尿時の痛みなどが起こり、進行すると発熱も

腎臓でつくられた尿は膀胱(ぼうこう)へ送られ、尿道を通って体の外に出されます。尿路感染症は、尿の通り道のどこかに炎症が起こる病気です。多くの場合、尿の出口である尿道から大腸菌などが入ってくるために起こります。おもな症状は、排尿時の痛み、尿が近くなる、残尿感など。進行すると、発熱や背中の痛みなどが見られます。大人の場合は感染した部位によって「膀胱炎」「腎盂炎(じんうえん)」などと診断されますが、幼児の場合はまとめて「尿路感染症」と呼ばれます。

尿路感染症が起こる部位

子どもの場合、尿路のどこかに細菌が感染したものを「尿路感染症」と呼ぶ。

step2 治療の基本

症状に応じて飲み薬などで治療

病院では尿検査を行い、顕微鏡で白血球の数を調べたり、細菌の検査をしたりします。尿路感染症と診断された場合、年長児で熱がなければ抗生剤の飲み薬が処方されることもありますが、発熱しているときは腎盂(腎臓でつくられた尿が集まる部位)に炎症が起こっている(=腎盂炎)可能性があるので、尿検査に加えて血液検査をし、抗菌薬の点滴による治療も行うため、数日~1週間の入院が必要になります。

治療の基本

step3 予防のためにできること

風邪症状がないのに熱が出たときは要注意

予防のためには、陰部を清潔に保つことを心がけます。ひとりでトイレに行ける子の場合、女の子には、排便後は前から後ろへ拭くように教えましょう。体調を言葉で伝えられない年齢の場合、排尿時の異常などには気づきにくく、症状が進んでしまうことがあります。風邪の症状がないのに熱が出た場合は、尿路感染症の可能性もあります。放置すると腎障害につながることもあるので、早めに受診しましょう。


構成/野口久美子
イラスト/河合美波

『新 幼児と保育』2018年12/1月号別冊ふろくより

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