児童発達支援センターってどんなところ?【発達に偏りのある子どもへの支援】

特集
発達が気になる子どもへのかかわり方

今回は臨床心理士の桑野恵介先生に地域の児童発達支援センターで行われている療育や、大切にしていることを教えていただきます。

お話

桑野恵介 先生

株式会社スペクトラムライフ代表。臨床心理士、ESDM認定セラピスト。埼玉県入間市児童発達支援センターうぃずの受託事業者。2019年埼玉県立上尾特別支援学校特別非常勤講師、東京大学高度医療人材養成プログラム「職域・地域架橋型・価値に基づく支援者育成」講師。

どのような子どもが支援を受けている?

乳幼児健診などで療育(発達支援)の必要があると認められた子どもや、保育園や幼稚園に通いながら障がいの特性に合った専門的な療育・訓練が必要と認められた子どもが通っています。療育手帳や身体障害者手帳の有無は問わず、児童相談所、市区町村保健センター、医師などによって必要性が認められた児童も対象となります。必要性が認められれば、「通所受給者証」が市区町村から発行されます。この受給者証を取得することで申し込みができ、費用は1割負担でサービスを受けることができます。3・4・5歳児は幼児教育・保育無償化の対象です 。

ここでは、入間市児童発達支援センターを例に、児童発達支援の内容を解説します。

入間市児童発達支援センターの概要

臨床心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、公認心理師、音楽療法士、看護師などの専門家が、個別支援計画に基づき日常生活動作などを指導します。児童発達支援センターは、地域の家庭や施設からの子育てや子どもの発達に関する相談や、保育園への訪問指導などの機能も担っています。

毎日通うことになる?

保育園や幼稚園の代わりとして毎日のように通って保育・教育を受ける場合もあれば、習い事のように週に何回か通う場合もあり、個々の状況や施設のタイプによって異なります。入間市児童発達支援センターの場合、上表のように決められています。

そこで行われている療育は、「丁寧な保育」とほぼイコールだといってよいのではないでしょうか。これから述べる内容は、保育者のみなさんにとっても参考にしていただける活動が多いと思っています。

1.言語の能力と社会性を伸ばす0・1・2歳児クラス

0歳から受け入れ可能ですが、1歳前後になってから通うケースが多く、現在は自閉スペクトラム症や多動の傾向がみられる1歳児と2歳児ふたりが、保護者と一緒に通っています。

このクラスで重視していることがふたつあります。ひとつ目は言語能力を伸ばすこと。それは言語獲得の臨界期(*1)にあたる年齢だからです。

言語力を伸ばすために、療育において心がけていることを2点紹介します。

「ナレーション」

遊びや生活の場などで、子どもが関心を向けている事物の様子を言語化します。「ナレーション」と呼んでいます。クマのぬいぐるみで遊んでいる子どもを見ながら「クマさん、ジャーンプ!」などと子どもの遊びに言葉を乗せるのです。

「ワンナップルール」(one-up rule)

ナレーションなど、子どもに言葉をかける際に、現在子どもが話せる語数プラス1で話しかけるようにしています。単語が出ている子どもには2語文で、2語文が出ている子どもには3語文で話しかけます。たとえばミニカーを走らせて遊んでいるときに、大人が「あかい・くるまが・はしる」などと、3語文でナレーションします。

0・1・2歳児のクラスで重視していることのふたつ目は、社会性を育むことです。「人とかかわるといいことがある」と感じられる場面をたくさん提供します。指導に当たっては、私たちのセンターではESDM(*2)=「アーリー・スタート・デンバー・モデル」の知見を取り入れています。たとえば、子どもとは常に真正面から向かい合うようにしています。子どもの視線の中に人を入れて、ひとり遊びにならないようにするのです。

*1「臨界期」とは…発達の比較的初期において、ある刺激 (経験) が与えられたとき、その効果が最もよく表れる時期。ある時期を中心にして、その前後の一定範囲をいう。
*2「ESDM」とは…Early Start Denver Model の略で、自閉スペクトラム症などの発達障がいを持つ子ども向けの超早期介入指導プログラム。アメリカで開発され、世界に広まりつつある。

0・1・2歳児クラス定員5人の療育室。平均的な大きさの乳児室に比べてやや広く、壁面などしつらえは比較的シンプル。

おもちゃを通した「社会的やりとり」

このクラスにはESDMの考えに基づいて職員が手作りしたおもちゃが用意されています。市販のおもちゃを置く場合でも、ひとり遊びにならないものを選んでいます。たとえば鉄道模型や、音の出る絵本は発達障がいのある子が好む傾向がありますが、これらのひとりで遊べてしまうおもちゃは避けるようにしています。塗り絵も、あえて大人が一緒にやるようにします。胴体を子どもが塗って先生が頭を塗るなどと分担します。

塗り絵は子どもと大人が一緒に取り組んで完成させる。
大人との協力や順番交替、模倣などの社会的やりとりを、おもちゃで遊ぶ中で引き出す。

2.就学に向けて自立を後押しする3・4・5歳児クラス

3・4・5歳児は定員8名のクラスがふたつあります。それぞれ常勤の3人の先生に、非常勤で音楽療法士や作業療法士も加わって多彩な活動を行います。

このクラスでは、子どもの自立を促し、自分で行動ができるように後押しします。0・1・2歳児の段階では「人とかかわるといいことがある」と伝えることが大事であったのに対して、3・4・5歳児ではひとりで行動できることも重視しています。教室のしつらえも、見れば何をすればいいのかがわかるようにしてあります。部屋に入ると、すぐに床に貼った足形が目に入るのですが、その足形で順路(行くべき方向)を誘導しているのです。

この部屋では、子どもの手の届く場所におもちゃが置かれていません。自由遊びの時間は、子どもが使いたいものを、おもちゃの写真のカードを使って先生に伝えます。子ども自身で「選択」「要求」することを促すしくみです。どうして子どもが自由におもちゃを手にできないようにしているのでしょうか?

「遊びの時間が終わって、おもちゃを取り上げるときにだけ大人がかかわるのだと、子どもにとって、大人が『いやな存在』に思えてしまいます。それは『嫌悪刺激』となって、攻撃的衝動性が増すことにもつながりかねません。一方、大人に要求しておもちゃを出してもらうしくみだと、『大人はおもちゃを出してくれる、利益のある存在』と子どもは感じます。それは発達障がいの有無にはかかわらないことなので、保育園や幼稚園でも試してみてはいかがでしょう」

子どもが写真カードを使っておもちゃを要求したら、おもちゃを渡してパーティションで囲まれたコーナーに連れていきます。そのあとは、大人は邪魔をしないように自由遊びを見守ります。

遊んだおもちゃを片づける箱を設置しておき、自由遊びが終わったら、子どもは自分で箱に片づけます。おもちゃを手放すときは子どもが自力で行うのです。

部屋の入り口付近から中を眺めた様子。
床に貼られた白い足形。
立ち寄ってほしい場所(教材を受け取る棚)には足を揃えた足形が貼られ、その後に進んでほしい方向はビニールテープで作った矢印で示されている。

就学を見据えて、机にすわって勉強をするコーナーが設けられているのも3・4・5歳児室の特徴です。遊びのコーナーとは離れた部屋の隅に1席あります。ここでは机上の引き出しから自分で勉強の道具を取り出して使います。

その日の予定は、ホワイトボードに文字と絵で示されている。自由遊びの時間に使うおもちゃの候補もカードで示されている。
それぞれのおもちゃの写真カードには、ラミネート加工がしてある。
廊下に面した机は、正面に白いパーティションが立てられて集中できるしつらえになっている。

3.重度の心身障がい児には多様な刺激を

年齢にかかわらず、痰(たん)の吸引などの医療を必要とする子ども向けのクラスを設けています。視覚、聴覚など重複で障がいを持つ子どももいます。このクラスでは、視覚、聴覚、触覚など多様な感覚を刺激するおもちゃを揃えています。

重度の障がいのあるクラスでは、特に子どもと向き合う保護者の気持ちへのケアを大事にしています。障がいが重いがゆえに、子どもの育ちを実感しづらい保護者の気持ちを支えることをいつも考えています。たとえば下の写真のような手作りの教材にも決して手を抜きません。そのような職員の姿勢を見せることも、保護者へのメッセージになると思うからです。

凹凸があるボールや、振ると音が出るボールなど。
さわっても楽しめるペープサート。スポンジや毛糸などを貼っている。

日々の活動のねらいを個人別「療育記録」に

このセンターでは、保育園の「指導計画」に相当するものとして「通所支援計画」を、「日誌」に相当するものとして「療育記録」という書類を運用しています。また、活動の詳細を職員間で共有する「活動計画書」もあります。
 
3・4・5歳児を含めて、通所支援計画はクラスごとではなく、個人ごとに作られます。クラスで同じ活動をする場合でも、ねらいは一人ひとり違うものだからです。活動計画書を作成したら、それをもとにあらかじめ職員でシミュレーションを行います。

日々の保育のあとに、それぞれの活動の達成度合いに応じて療育記録に「正答率」を記入します。さらに子どもの「行動」を記入し、「意欲」の欄に、5段階で評価を書きます。活動が予定どおりに実施できていたとしても、子どもの意欲がみられないものは「正答」とはいえないからです。療育記録は保護者にも共有されます。活動の翌日に保護者に渡しています。

通所支援計画

通所を開始するにあたって、長期目標と短期目標、その根拠や手立て、達成できたかどうかを見極める基準などを提案し、保護者の同意を得る。

活動計画書

活動の目標や流れ、場所の設定などを詳細に記述したもの。

療育記録

活動ごとに子どもがどのように行動し、意欲を見せたのかを日々記す。

構成/佐藤暢子
協力/入間市児童発達支援センターうぃず(埼玉県)
写真提供/入間市児童発達支援センターうぃず、桑野恵介

『新 幼児と保育』2020年8/9月号より

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