もっと知りたい!セミの世界(前編)【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#4】

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佐々木洋

ささき隊長  こんにちは。ささき隊長です。今日は夏の主役、セミの世界を探検しちゃいますよ。準備はいいかな? じゃあ、出発進行!

ささき隊長/佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト)

豊かな森がある日本は「セミ王国!」 

さて、みんな。日本にはセミが何種類いると思いますか?

「5種類?」「10種類?」

実はね、なんと30種類以上もいるんです! びっくりでしょう?

日本は「セミ王国」って呼べるくらい、セミの種類が豊富なんです。北海道から沖縄まで、日本中でセミが鳴いています。これってすごいことなんです。

どうしてこんなにセミがいるのかって? それはね、日本にはたくさんの種類の木があるからなんです。セミによって、好みの木の種類が違うんですよ。

たとえば、アブラゼミはケヤキやソメイヨシノが好きだし、ツクツクボウシはカキノキが好き。ヒグラシはスギやヒノキが好きなんです。

日本では2~3歳ぐらいの小さい子どもでもセミを知っていますが、これは実は世界的に見ても珍しいこと。ぼくはね、これってすごく大切なことだと思っています。なぜなら、小さいころから身近な自然に触れられるって、とってもラッキーなことだからです。

日本は「森の国」だってことを、セミが教えてくれます。だから、セミの声を聞くたびに、「ああ、日本には豊かな森があるんだな」って思い出してみてください。

セミ時計で「いま何時ごろ?」

セミの鳴き声を聞いていると、いま何時ごろかが、だいだいわかります。これをぼくは「セミ時計」って言っています。おもしろいでしょう?

たとえば、朝と夕方はヒグラシが「カナカナカナ」って鳴くんです。これを聞くと「あ、夜明けだな」あるいは「もう夕方だな」ってわかるんですよ。午前中はクマゼミがよく鳴くし、午後になるとアブラゼミが「ジリジリジリ」って鳴き始めるんです。そして、午後3時ごろからはツクツクボウシの声が聞こえてきます。

でもね、最近は気温が高くなりすぎて、セミも暑くて鳴けなくなっちゃうことがあるんですよ。35℃を超えると、セミもピタッと鳴きやんじゃうんです。だから、セミが鳴いてないときは、「暑すぎるのかな?」って考えてみるのもおもしろいですね。

みんなも耳を澄ませて、どんなセミが鳴いているか聞いてみてくださいね。そして、いま何時ごろかを当ててみるのも楽しいでしょう。セミの声で時間がわかるなんて、すごいと思いませんか?

鳴いているのは、セミのオスとメス、どっち?

さて、ここで問題ですよ。セミの鳴き声、オスとメスどっちが出しているでしょう? 

正解は、オス

びっくりしたかな? 実はメスのセミは鳴きたくても鳴けないんです。オスのおなかには「腹弁」という特別な器官があって、これを使って音を出しているんですよ。クマゼミのオスのおなかを見ると、オレンジ色の腹弁がはっきり見えます。これは、サングラスみたいな形をしているんですよ。

だから、セミの鳴き声を聞いたら、それはオスのセミだってことがわかるんです。

でも、メスが鳴けないからって悲しむ必要はありません。なぜなら、メスにはメスの大切な役割があるから。卵を産んで、次の世代のセミを育てる大事な仕事があるんです。

クマゼミのオスの腹面。オレンジの部分が腹弁

セミの寿命は「1週間」ってホント?

みんなは「セミは1週間で死んじゃう」って聞いたことありませんか? でも、これは間違いなんです。

実は、セミは平均で3週間も生きるんですよ。1週間どころか、1か月近く生きられるんですね。長寿のセミだと2か月近く生きるセミもいます。すごいでしょう?

しかもね、これは大人になってからの話。実はセミは、卵から大人になるまでに何年もかかるんです。地面の下で幼虫として過ごす時間が長くて、その年数は4年から7年くらい。中には17年もかかる種類もいるんです。アメリカにいるあるセミの種類は、人間でいうと高校生くらいの年齢まで地中で過ごすんですよ!

だから、セミは短い命なんかじゃなくて、むしろ昆虫の中では長生きなんです。セミを見たら「きみたちは、ぼくたちより年上なんだね」って、先輩に敬意を示しましょう。

ちなみに、セミの幼虫は地中で木の根っこの汁を吸って生きているんです。だから、セミがたくさんいるってことは、その土地に健康な木がたくさんあるってことなんですね。

セミは森の健康診断をしてくれる、大切な生き物なんです。

(#5「もっと知りたい!セミの世界(後編)」に続く)

文/神﨑典子 写真/佐々木 洋

佐々木 洋ささき隊長)

ささき ひろし 1961年、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。(財)日本自然保護協会の自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などを経て、プロの自然案内人として自然解説活動を展開。子どもたちへの自然観察指導など、自然のおもしろさや大切さを案内している。近著に『生きものハイウェイ』(雷鳥社)がある。

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