水面を滑る小さな生き物アメンボの不思議【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#7】
ささき隊長 こんにちは、ささき隊長です! きょうは、水面を滑るように動く不思議な生き物、アメンボについてお話しします。園庭の池や使われていないプールなど、身近な水辺で見かけるアメンボ。実はとってもおもしろい特徴を持っているんです。
ささき隊長/佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト)
目次
アメンボってどんな虫?
アメンボは、セミの親戚です。
こんなことを突然いわれたら、びっくりしますよね。うそ〜と思わず口にしてしまう人もいるかもしれません。
でもね、セミやカメムシとは似ても似つかないように見えますが、広い意味では、セミやカメムシの仲間なんです。
アメンボという名前も、なんだか不思議な響きがしますよね。その由来は、においを嗅ぐと甘いアメのようなにおいがすることからきているんですよ。これも冗談みたいなホントの話。今度、捕まえてにおいを嗅いでみてください。カルメ焼きみたいなほんのり甘い香りがします。
アメンボという名前から、多くの人が「雨の日の生き物」だと勘違いしていますが、実際には晴れの日に活動する生き物なんです。昼間は池の上にたくさん浮かんでいますが、夜になると数が少なくなります。
アメンボは、夜になると、どこへ行く?
では、夜のアメンボは、どこに行くと思いますか? なんと、自動販売機や街灯のまわりに集まるんです!
実は、アメンボは飛べるので、夜になると明かりに引き寄せられて飛んでいくんですね。みなさんも夜道などで、「蚊にしては少し大きいな」と思う虫を見たことがあるかもしれませんが、もしかしたらそれはアメンボかもしれません。機会があったら、街灯などをチェックしてみてくださいね。
アメンボは影を見るべし!
アメンボの体をよーく見ると、足が4本に見えることがあります。でも、アメンボは昆虫なので6本足なんです。あとの2本がどこにあるのかというと、頭のすぐ下にあります。短い足なので見逃してしまうことが多いんですね。
6本の足をしっかり確認するには、晴れた日の浅い水辺がベストです。水面を滑るアメンボを観察しましょう。そのとき、本体だけでなく影を見ます。影を見ると6本の足がしっかり確認できるでしょう。
この影の写真、よく見てください。丸い影ができています。まるで、プードルみたい。かわいいですね。
なぜ丸い影ができるのでしょうか? それは、アメンボの足が水をグッと押しているからなんですよ。想像以上にグッと水を押しているから、その部分が丸になって影として映っているんです。
そして、なぜ水に浮いていられるのかというと、足の先端に細かい毛が生えているからなんです。表面張力が働いているんですね。さらに少量の油も分泌されているので、沈むことなく水面を滑るように移動ができるんです。まるで忍者みたい。すごいですよね。
アメンボは怖~い、虫界のワニ的存在⁉
アメンボは意外と簡単に捕まえることができます。ぼくは、アメンボをだまして捕まえます。その方法は…、音叉(おんさ/楽器の調律などに使うU字形の金属製の器具)を振動させて水面にそっとつけるだけ。すると細かい波が起こります。
その波をアメンボが「エサが来た」と勘違いして集まってくるんですね。もし音叉がない場合は、電動歯ブラシでも同じようにアメンボをだますことができます。
指や棒で水面をたたいても、波が大きすぎてアメンボにはバレてしまうので、音叉のように微細な振動を作ることがポイントです。
アメンボは、まるでワニのように、じっとエサが来るのを待っているのです。虫が水面に落ちたときの微細な波が、アメンボの足先に伝わり、獲物にスーッと近づいて、口をプスっと刺してチューっと体液を吸うわけです。肉食なので、ほかの小さな虫にとっては、ワニのような恐ろしい存在なんですよ。
アメンボを捕まえる際の注意点を少々。アメンボは、セミやカメムシと同じように、口が針状になっているので、握り方によっては刺さってしまうことがあります。
刺されても毒はなく、ほんの少しチクッと感じる程度なので極端に心配する必要はありませんが、気をつけてくださいね。アメンボを観察する際には、胴体をやさしくつかむようにすると安心です。
アメンボは一年中見かけることができます。幼虫も大人とほとんど同じ姿をしており、違いははねがないことくらい。大人になるとはねが生えて飛べるようになります。実際、アメンボが飛べることを知らない人も多いですが、捕まえて乾いた地面の上に置いてみると、パーっとすぐに飛び立ちます。はねは、あの細い体にたたんで格納しているんですよ。
その見た目からは想像できないほど、アメンボはおもしろくて奥深い生き物。そんなアメンボが大好きなぼくは、親愛を込めて「陸海空を制覇する小さなワニ」と呼んでいます。
文/神﨑典子 写真/佐々木 洋
佐々木 洋(ささき隊長)
ささき ひろし 1961年、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。(財)日本自然保護協会の自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などを経て、プロの自然案内人として自然解説活動を展開。子どもたちへの自然観察指導など、自然のおもしろさや大切さを案内している。近著に『生きものハイウェイ』(雷鳥社)がある。
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