朝・夕の送り迎え対応のポイント【入園・進級シーズンの保護者とのかかわり方 #2】
入園・進級の季節は保護者との信頼関係の土台を築く大切な時期。シーン別に心得ておきたい保護者とのかかわり方を渡邊暢子先生にアドバイスしてもらいました。
第2回は、朝・夕の送り迎えのポイントです。
(この記事は、『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2019春 に掲載されたものを元に再構成しました)
目次
お話
渡邊暢子先生
NPO法人 保育パラ・ピアカウンセラー協会理事。東京都の公立保育園に37年勤務した後、保育士養成校講師、電話相談員などを経て現職。編著書に『おとなに人気のふれあいあそび 保護者会・子育てひろば…おとなのためのアイスブレーキング集』(ひとなる書房)ほか。
忙しくても必ず目を合わせる立ち位置が重要です
「保育者があいさつをしてくれない」「あいさつを返してくれなかった」という不満の声は、意外と多く聞かれます。登園、降園時は人の出入りが多くなるうえに人手も足りない時間帯。保育者側にも事情があるはずですが、保護者側はそうは思いません。「無視された」「受け入れてもらえなかった」と感じてしまうものなのです。
「おはようございます」「おかえりなさい」がいえないときでも、目を合わせて頭を下げるだけで印象はずいぶん違います。言葉は交わさなくても「ああ、忙しいんだな」とわかってもらえるはずです。
あいさつのタイミングを逃さないためには、立ち位置にも工夫をしましょう。入ってくる保護者の顔が見えるような位置にいれば、忙しくしていても瞬時に反応できます。
登園時、子どもが泣いていたりして、あまりいい状態ではないときには、たとえ忙しくても、きちんと抱きとめて迎え入れます。泣きやまない子どもを預けていくことに不安を覚える保護者は多いもの。出がけに怒ってしまって、後悔の気持ちを抱いていることもあるかもしれません。子どもを抱きとめることは、それらの思いも含めて「受けとめましたよ」というメッセージになるのではないかと思います。「安心して子どもを任せられる」と思ってもらうことが大事。
この場合、その後子どもがどうやって過ごしたのか、保護者は気になっているはずです。お迎えのときに詳しく伝えたいところですが、当番が代わってしまう場合は担当の保育者に伝言を頼むか、あるいは連絡帳に記すのもいいでしょう。
保育者同士の連携のよさが園への信頼につながる
当番体制の保育では、送り迎え時にクラス担任が不在ということがあります。このとき、「担任じゃないからわからない」では、保護者は納得しません。たとえば朝の迎え入れのときに保護者から聞き取ったことがあれば、必ずメモをして確実に担任に伝えます。「知らなかった」というようなことが重なると「職員間の人間関係がうまくいっていないのかしら?」などと思われることにも。これは園に対する不信感につながります。
夕方の当番に入ったときには、その間の子どもの様子をひと言伝えるだけでも違います。複数の保育者がさまざまな視点で子どもの様子を伝えてくれると、保護者は子どものことをより多角的に知ることができますし、「園全体で自分の子どもを見てくれている」と感じることは大きな安心になります。担任にこだわらず「どの先生でも安心」と思ってもらうことは、とても大事なことなのです。
文/木村里恵子 イラスト/ホリナルミ
【関連記事】
入園・進級シーズンの保育のヒントシリーズはこちら!
・年度はじめの子ども・保護者が安心する わが園のウエルカムアイテム&アイデア
・発達が気になる新入園児への支援のポイント
・かかわり方の提案【ほかの子と遊ぼうとしない新入園児の援助 #3】
・卒園や入園を迎える春の製作遊びアイデア~迎える春・送る春の部屋飾り~
・情報を集めて背景を理解しよう【ほかの子と遊ぼうとしない新入園児の援助 #2】
・連絡帳のポイント【入園・進級シーズンの保護者とのかかわり方 #3】
・入園説明会、入園前の面談【入園・進級シーズンの保護者とのかかわり方 #1】
・朝・夕の送り迎え対応のポイント【入園・進級シーズンの保護者とのかかわり方 #2】
・保護者との信頼関係のベースを築く【入園・進級シーズンの保護者とのかかわり方 #4】
・「子どもが困っていることは何か?」を見極めよう【ほかの子と遊ぼうとしない新入園児の援助 #1】
>>もっと見る