連絡帳のポイント【入園・進級シーズンの保護者とのかかわり方 #3】

特集
入園・進級シーズンの保育のヒント

入園・進級の季節は保護者との信頼関係の土台を築く大切な時期。シーン別に心得ておきたい保護者とのかかわり方を渡邊暢子先生にアドバイスしてもらいました。

第3回は連絡帳のポイントです。

(この記事は、『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2019春 に掲載されたものを元に再構成しました)

お話

渡邊暢子先生
NPO法人 保育パラ・ピアカウンセラー協会理事。東京都の公立保育園に37年勤務した後、保育士養成校講師、電話相談員などを経て現職。編著書に『おとなに人気のふれあいあそび 保護者会・子育てひろば…おとなのためのアイスブレーキング集』(ひとなる書房)ほか。

どんな様子で過ごしていたか、短くても事実の記録を

保育中に子どもがどんな様子で過ごしているのかを知ることは、保護者にとって大きな安心材料になります。とはいえ、降園時は慌ただしいし、当番体制であればその時間は勤務外ということも。連絡帳はその補完にもなるものといえるでしょう。

「楽しそうに遊んでいました」というような保育者の主観で終わらず、一場面でもいいので、その日のエピソードを具体的に書きましょう。どんなところを見ているか、保育者として、人としての視点や感覚が伝わることも案外大切なことです。

週の間に必ず1日は、具体的な様子を記すというのでもいいと思います。クラス全員分を毎日同じように書くのは大変ですが、1日2〜3人分なら、負担もそう大きくはありません。子どもをよく見て文章にすることで、自分自身の「子どもを見る視点」も定まっていきますから、保育もますます楽しくなってくると思います。


文章を書くのが苦手という人は、子どもの言葉を並べるというだけでもいいのです。とある2歳児クラスでは、子どもの言葉や子ども同士のやりとりをクラス便りで発信していたところ、お母さんたちも家庭での言葉を連絡帳に書いてくれるようになったそうです。「これを書き始めたら、子どものことをちゃんと見るようになった」「すごく楽しくなった」と書いているお母さんもいて、とてもいい効果だなと思いました。連絡帳でこのようなやりとりができると、保護者との信頼関係もより深まるのではないでしょうか。

連絡帳で保護者が質問をしてきた場合は、必ず答えを返します。うまく返答できない内容の場合は、先輩保育者に相談したり、同僚に下書きを見てもらって意見を聞くといいでしょう。

「かみつき」「ひっかき」のトラブルは時期を見て、事前にお知らせをする

同じ年齢の子どもが過ごす保育園は、集団であるがゆえに摩擦も起きやすい場所。2歳ごろに多い「かみつき」「ひっかき」も発達上起こりうることとして、保護者には年度始めに伝えておくようにします。
最近は、春の保護者会で伝える園が増えてきましたが、クラスのお便りで伝える方法もあります。いずれにしても「なぜこういうことが起こるのか」ということと、起こった場合の対応方針を具体的に伝えることが大事。


かまれた子にはきちんと伝えるとして、かんだ子の保護者に伝えるかどうかは、園の方針を決めておきます。ただし、伝えないと決めていたとしても、子どもの口から伝わってしまうことはよくあること。発達上やむを得ないとしても、自分の子がかんでしまった場合には相手の保護者にあやまりたいと考える保護者もいます。

こちらも事前に、「どういう方法がいいと思いますか?」と、保護者会のときなどに意見を聞いておくといいでしょう。その意向をもとに園の対応方針を決めるようにすると、保護者の納得も得られやすいと思います。

文/木村里恵子 イラスト/ホリナルミ

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