3.11を経た、新しい園舎での備え【災害時の停電に備える #3】

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保育園の災害対策記事まとめ

鶴見大学短期大学部保育科教授

天野珠路

2011年の東日本大震災では津波が岩手県の沿岸部を襲い、たくさんの園舎が全壊・半壊しました。
避難先や仮設の園舎においても、しばらくは電源を発電機に頼る生活を余儀なくされました。

「災害時の停電に備える」連載第3回は「3.11を経た、新しい園舎での備え」。
天野珠路先生が岩手県のふたつの保育園を訪問し、お話を聞きました。

両園とも東日本大震災で園舎が全壊し、現在は別の場所に園舎を再建して保育を行っています。
新しい園舎ではいずれも蓄電システムを備えていました。

(この記事は、『新 幼児と保育』2020年2/3月号に掲載されたものを元に再構成しました)

レポートする人

天野珠路(あまの たまじ)先生
鶴見大学短期大学部教授。元厚生労働省保育指導専門官。映画『3.11その時、保育園は』(2011年岩波映像)監修。著書に『写真で紹介 園の避難訓練ガイド』(2017年かもがわ出版)、『3・4・5歳児の指導計画保育園編【改訂版】』(小学館)などがある。『新 幼児と保育』誌上で「災害への備え2020」連載中。

取材協力
荒澤幸子先生(社会福祉法人釜石愛育会 鵜住居⦅うのすまい⦆保育園 元園長⦅岩手・釜石市⦆)
芳賀真由美先生(社会福祉法人吉里吉里⦅きりきり⦆保育園 吉里吉里保育園 園長⦅岩手・大槌町⦆)

①鵜住居保育園の停電への備え 

「停電時も最低限必要なのは照明と電話」

釜石市の鵜住居保育園は、東日本大震災で津波に流され園舎が全壊しました。避難の途中で合流した小中学生と助け合いながら峠までかけ上がり、避難した園児全員、無事に逃げ切りました。

現在は、海岸から5キロほど内陸に入った場所に移転しています。76名の子どもたちが元気に通っています(※)。

避難中の生活について、震災当時園長をしていた釜石愛育会の荒澤事務局次長にお話をうかがいました。
「避難先の小学校には発電機があり、明かりはありましたが、テレビやラジオから情報が得られないのは不便でした。携帯電話も非常時用の無線も使えず、保護者や職員の家族とは避難所のボードにメモを貼り出したり、避難所を回ったりして連絡を取り合いました」

「停電に備えることを考えたとき、最低限必要なのは照明と電話ですね。情報源としてはテレビが一番なので、テレビが見られるといいと思います」

新園舎の屋根には太陽光パネルが並んでいます。その脇には風力発電の風車もあります。主要な明かりと携帯電話、パソコンの充電などが3日ほどはまかなえる蓄電が可能です」
園庭には井戸や備蓄倉庫があり、備蓄品はその2階に保管しています。また、明かりとして充電式の強力なライトを用意しています。

※2019年11月取材時点。

新園舎の屋根一面に敷き詰められた太陽光パネル。
こちらは園庭に設置された風力発電の風車。 風車の下のパネルでも発電している。
井戸は電動ポンプでくみ上げている。 開栓し、蛇口をひねるだけで水が出る。
工事現場などでも使われるバッテリー式LEDライト(写真左)は玄関が定位置。

②吉里吉里保育園の停電への備え 

「夜間の電源のために蓄電システムを」

大槌町の吉里吉里保育園も、2011年の東日本大震災による津波で全壊した園です。現在は海を見下ろす山の中腹に移転しています。

仮設の園舎で使っていた太陽光発電機は新しい園舎に移設しましたが、蓄電はできません。日差しがあれば日中は問題なく電源として使用できますが、夜間は使えなくなります。そこで、コンセントから充電できる大容量のバッテリーと、室内用可搬型蓄電システムを2基購入しました。

非常用電源になる室内用可搬型蓄電システム。

文/清水洋美 

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