オノマトペが楽しい絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は、擬音語・擬態語が楽しい絵本を集めました。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学で「児童文化」「絵本論」の講師を務めるなど、幅広く活躍。近著に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
絵本で楽しむオノマトペの春
春うらら、ぽかぽか陽気に誘われて、ウキウキとお散歩です。ルンルン、ランラン、なんだかとってもいい気持ち……春は楽しいオノマトペ(擬態語・擬音語)がたくさんありますね。
絵本の世界でも、音を楽しむ赤ちゃん絵本でオノマトペは大活躍。視覚が未発達でまだはっきりと見えない1歳未満の赤ちゃんでも楽しむことができるのです。オノマトペが楽しい赤ちゃん絵本といえば、『じゃあじゃあびりびり』を挙げる方も多いことでしょう。
「じどうしゃぶーぶーぶーぶー」「いぬわんわんわんわん」「みずじゃあじゃあじゃあ」「かみびりびりびりびりびりびり」と、すべてがリズムのよい擬音語でつづられています。各ページにつながりもなく、ストーリーはありませんが、絵と音の響きそのもの、そしてなによりも読んでくれる大人とのコミュニケーションを楽しむ絵本です。お互いに表情の見える位置で一緒に絵本を見つめ、遊びや会話を楽しむように絵本を読み聞かせてください。
オノマトペの絵本を読み聞かせるときのポイントは、「太陽がポカポカと暖かい」「風がそよそよと吹く」など、状況をイメージしながらはっきりとリズミカルに読むことです。イメージやリズム、テンポには、個人差があって当然です。また、読んであげる子どもによっても、読み方は変わります。イメージさえ、はっきりとできていれば、あとは自然に読めることでしょう。赤ちゃん絵本は季節を問わず楽しめることが多いのですが、春の穏やかな空気の中で、ゆっくりと音(言葉)と絵の世界を楽しんでください。
そうそう、お手元に『じゃあじゃあびりびり』がある方は、ぜひお試しください。厚紙で角が丸いこの絵本、ページをめくると自然に次のページが立ち上がり、幼い手が次のページをめくる助けとなるうれしいつくりになっています。これによって子どもたちが「めくる楽しみ」を得られるとしたら、すてきなプレゼントだと思いませんか?
『じゃあじゃあびりびり』
まつい のりこ/作・絵
偕成社
だいすきなマル
『まる まる』
中辻悦子/作
福音館書店
ふたつの丸い穴と、「まるまるさんかく」「まるまるしかく」のように「まるまる」のついた言葉のくり返しにだんだん表情がついてきます。子供は表紙の穴に指を入れたり、のぞいたりして遊びます。色と形と言葉の絵本。
『愛蔵版 だっだぁー』
ナムーラミチヨ/作
主婦の友社
粘土でできたユニークな表情の顔に合わせて「 だっだぁー」「ほっほー」「へげへげ」などの不思議な言葉が続きます。喃語(なんご)が出始めた子どもたちと読むとよいでしょう。お気に入りのページができる子もいて楽しい。
『ごぶごぶ ごぼごぼ』
駒形克己/作
福音館書店
鮮やかな色と、水や泡をイメージさせる言葉のリズムが楽しい絵本。特に濁音に興味を持つ子供が多く、何回読んでも大人気。全部のページが穴あきなので、指を入れてグルグル遊ぶことに夢中になる子もいます。
『まる まる まるの ほん』
エルヴェ・テュレ/作
谷川俊太郎/訳
ポプラ社
フランス発のおしゃれな絵本。本を開くと、「まるをおして」「こすって」「くりっくして」……と導かれ、不思議な世界が展開します。乳幼児さんにはそのままの言葉では難しいので、遊びとして会話で進めましょう。
『ころ ころ ころ』
元永定正/作
福音館書店
小さな色玉がころころと転がっていきます。月齢や子どもの状態(模様のよしあし)などによって、さまざまな読み方ができます。反応を見ながらゆったりと読んだり、テンポよく読んだり、工夫をしやすい1冊です。
『まり』
谷川俊太郎/文 広瀬 弦/絵
クレヨンハウス
黄色いボールが原っぱから転がって、「ぽとーん」「ぽんぽん」「ぱしっ!」「ひゅーん!」と軽快な擬音で移動します。シンプルな絵とシンプルな言葉で構成された絵本です。乳児さんから幼児さんまで一緒に楽しめます。
まるまる ころころ
得田之久/文 織茂恭子/絵
童心社
きれいな色の貼り絵でできた、さまざまな大きさの○が変身。おだんごになったり、ぶどうになったり、てんとうむしになったり。次は何かな? とめくる楽しさがあります。同じ作家で△や□の作品もあります。
やっぱり乗り物
『がたん ごとん がたん ごとん』
安西水丸/作
福音館書店
「 がたん ごとん がたん ごとん」「のせてくださーい」。ミルク瓶やコップ、スプーンなど身近なものを乗せて汽車は走ります。シンプルな絵と言葉のくり返しが心地よく、子どもたちも「のせてくださーい」と参加します。
『ぶー ぶー ぶー』
こかぜ さち/文
わきさか かつじ/絵
福音館書店
「ぶーぶーぶー」「ぷーぷーぷー」。赤い車、青い車、黄色い車、緑の車。カラフルな車が白いページに走っています。あ、トラック! でも大丈夫。最後はみんなトラックに乗って出発! 0歳さんにも大人気です。
『コトコトでんしゃ』
とよた かずひこ/著
アリス館
「 コト コト コトン、コト コト コトン でんしゃが はしります コトコト コトン コト コト コトン」。表紙の穏やかさがそのまま終わりまで継続するシンプルさ。「あかちゃんのりものえほん」シリーズ1作目です。
『かん かん かん』
のむら さやか/文
川本 幸/制作
塩田正幸/写真
福音館書店
「 かん かん かん んまんまれっしゃが とおります」「んまん ままん んまん ままん」。
不思議な踏切を不思議な列車が通ります。んまんんまん、食べ物の列車。ぶうぶう、車の列車。
にゃあにゃあ、猫の列車。さて次は?
『れんけつガッチャン』
こぐれけいすけ/作・絵
学研プラス
おさるの電車とだちょうの特急が「 オーライ オーライ、れんけつ…ガッチャン」。つぎはチーターの新幹線と「オーライ オーライ、れんけつ…ガッチャン」。電車は連結しながらどんどん進みます。そして、ついには……。
『ぶーぶー じどうしゃ』
山本忠敬/作
福音館書店
「 ぶーぶー、じどうしゃ。のってください」。ページを操るごとに小型自動車、マイクロバス、郵便車、パトロールカーなど、丁寧に描かれた11台の車があらわれます。緻密に描かれた絵は、車が好きな幼児さんにも人気です。
遊べる音
『のびのびのーん』
川上隆子/著
アリス館
表紙から最後まで言葉はすべて「のびのびのーん」だけ!おひさまも、かたつむりも、ラクダも、象も。画面いっぱいに「のびのびのーん」と、気持ちよさそう。保護者会や会議のアイスブレイクにもおすすめです。
『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』
谷川俊太郎/文
おかざき けんじろう/絵
クレヨンハウス
カラフルな色でのびのび描かれたいたずら書きのような絵と、ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽの5音で構成される赤ちゃんの会話のような言葉。そのままそっくり、理屈抜きで楽しんでください。歌うように読んでもいいですね。
『もこ もこもこ』
谷川俊太郎/作
元永定正/絵
文研出版
誰が誰にどう読んでも楽しいといわれている絵本です。おもしろすぎて「 もう1回!」「もう1回!」と終わりがないともいわれています。「しーん」で始まる擬音と色鮮やかで抽象的な絵が組み合わさった不思議な1冊。
『ぶう ぶう ぶう』
おーなり由子/文
はた こうしろう/絵
講談社
「 おくちで ぶう」「ほっぺたに ぶう」。幼い子の大好きな「ぶう」。ほかにも、おならのぶう、車のぶうもあって、子どもたちは、いつの間にか口をすぼめて「ぶうぶうぶう」。大合唱が始まります。
『ぷちぷち』
ひろかわさえこ/作
アリス館
「ぷちっ ぷちぷち ぽーん」と、さやから飛び出した1粒のえんどう豆。「とん ぽっこ ぺっこ ぽっこ ぺっこ」と歩いて行って、安全な場所で「 ぷちっ」と芽が出るまでの大冒険を、すべて擬音で表しています。
『ぴょーん』
まつおか たつひで/作・絵
ポプラ社
「 かえるが… ぴょーん」「こねこが… ぴょーん」と縦開きの画面いっぱいにジャンプ! めくる効果が最大限に生かされています。最後の「わたしも… ぴょーん」ではみんなでジャンプ! ビッグブックもあります。
『わんわん わんわん』
高畠純/作
理論社
「 わんわん わんわん にゃーご にゃーご ぶひっぶひっ」…… と、動物の鳴き声だけで展開します。動物の絵の配置に合わせて鳴き声の文字が配置され、文字の大きさで鳴き声の大きさを表現。素直にそのまま読むだけで楽しい。
『新 幼児と保育 増刊』2018年春号より
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