おう吐した・下痢をした!【園で気になる子どもの病気 #2】
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- 園で気になる子どもの病気
おう吐や下痢は、ウイルスなどの感染による胃腸炎の症状として見られることがあります。様子を見ながら脱水症状の予防に努めましょう。
監修
澁谷紀子 先生
総合母子保健センター愛育クリニック 院長兼母子保健科部長。小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。
目次
おう吐や下痢の原因はいろいろ
0歳児は胃の構造が未熟なため、ちょっとした刺激でおう吐することがあります。1歳を過ぎても、激しく泣くことなどがきっかけで吐いてしまうことがありますが、こういったおう吐は特に心配のないものです。一方、症状のひとつとしておう吐が見られる病気に胃腸炎があります。気管支炎などの激しいせきや、髄膜炎など脳神経系の病気もおう吐の原因になります。前後の様子をよく見て、適切な処置を心がけましょう。下痢にかんしては、体質的に便が緩めの子もいるので、ふだんのその子と比べて便の状態を見極めることが大切です。
園でできる予防のための対策
感染性の胃腸炎は、吐いたものや排泄物に含まれる病原体が手を介して広がることがあります。流行を防ぐため、吐いたものや排泄物は決められた手順にしたがって処理します。日ごろから、保育者と園児の手洗いを徹底することも大切です。幼い子どもは何でも口に入れるので、おもちゃなどもこまめに洗ったり天日干ししたりしましょう。
胃腸炎などによって起こる場合
おう吐や下痢を引き起こす病気として多いのは、ウイルスや細菌の感染によって起こる胃腸炎です。暑い季節には細菌性胃腸炎(食中毒)、寒い季節にはウイルス性胃腸炎の感染者が増えます。おう吐や下痢をしたときは、脱水症状の予防が第一です。ただし、おう吐した場合は、直後に水分をとると再びおう吐を誘発することがあるので、吐き気が治まってから少量ずつ飲ませましょう。
ココをcheck!
子どもの様子
おう吐物・排泄物の状態
おう吐した・下痢をしたときの園でのケア
1 別室で体調をチェック
人から人へうつる病気の可能性もあるので、別室へ移します。上記の「ココをcheck!」を参考に体調を確認し、様子を見ながら静かに過ごさせましょう。
2 吐き気があるときは横向きに寝かせる
あお向けに寝かせた状態でおう吐すると、吐いたものがのどに詰まって窒息する可能性があります。おう吐に備えて、顔を横向きにして寝かせるようにします。
3 おう吐や下痢の状態を記録
おう吐や下痢をした時刻や回数、吐いたものや排泄物の状態などを記録しておきます。医師の診療の際にあるとよい場合があるので、少量の排泄物をとっておきます。
4 水分補給
おう吐や下痢をくり返すと脱水を起こすことがあります。飲めるようなら、少量ずつこまめに水分補給を。冷たいものは避け、常温程度に冷ました白湯や麦茶などを与えます。
吐いたものや排泄物の処理のしかたの基本
吐いたものや排泄物の処理が不十分だと、床に残ったウイルスなどから人にうつることもあるので、注意が必要です。
1 消毒液を作る
水1リットルに次亜塩素酸ナトリウム(台所用の塩素系除菌・漂白剤)20ミリリットルを加えて消毒液を作る。
2 身支度をする
マスクをかけて使い捨て手袋をはめ、エプロン(※)などで衣服を覆う。
3 汚れを取り除く
汚れをペーパータオルで覆い、外側から内側へ集めて取り除く。ペーパータオルは、すぐにポリ袋へ。
4 消毒液で拭く
1の消毒液に浸した別のペーパータオルで、床の汚れていた部分とそのまわりをさらに拭く。
5 ごみを処理する
4のペーパータオルやマスクをポリ袋に入れる。手袋を裏返しながら外してポリ袋に入れ(1の消毒液も少量入れるとよい)、密封して捨てる。
おう吐したものや排泄物で汚れた衣類は、ポリ袋などに密封しておき、保護者に持ち帰ってもらう。
6 手を洗う
流水と石けんで、丁寧に手を洗う。
※エプロンが使い捨てでない場合は、他のものと分けて洗濯する。その後、高温の乾燥機で乾燥させたり、アイロンをかけたりすると、より安心。
おう吐や下痢から始まることが多い病気って?
ウイルス性胃腸炎
ノロウイルスやロタウイルスなどの感染によって、急なおう吐や下痢、発熱などが起こる。感染したウイルスの種類によっては、便が白っぽくなることもある。おう吐は1〜2日で治まることが多いが、下痢は長引く場合もある。
細菌性胃腸炎( 食中毒)
細菌の感染によって起こる。多く見られる症状は、腹痛、おう吐、下痢、血便など。細菌がついた食べ物のほか、感染者の吐いたものや排泄物に含まれる細菌が手を介して口に入ることが原因で感染することもある。
腸重積
腸の一部が、腸の別の部分にめり込んでしまう病気。強い腹痛(乳児の場合は、激しく泣き出し、しばらくすると治まるが、またすぐに激しく泣く)や吐き気、血便またはイチゴジャム状の便などの症状が見られる。生後3~4か月から2歳ぐらいまでの子に多い。
文/野口久美子
イラスト/河合美波
『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2018夏
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