0・1・2歳児向け どうぶつの絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】
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- 児玉ひろ美の絵本ガイド
ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は「ねずみ」と、そのほか動物たちの絵本を紹介します。
児玉ひろ美さん
JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」の講師を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。
目次
そ~っと?
『さわらせて』
みやまつ ともみ/作
アリス館
「そーっと?」と聞きながら、遠慮がちに絵本のうさぎに手を伸ばしてきたのは、1歳児のYちゃん。ページをめくって「どうぞ おしり さわってごらん」と、話しかけるように続きを読むと、Yちゃんは後ろにいるお母さんの表情を確認するようにちょっと振り向いてから、「そーっとね、そーっとするからね」といいながら、絵本に手と顔を寄せてきました。
『さわらせて』は動物の質感をよく表現した貼り絵の絵本です。2014年に出版され、子どもの絵本としては、まだまだ新参者ですが、静かな存在感のある作品で、図書館にある本には、小さな手の痕がたくさんついています。この「小さな手の痕」こそ、「子どもから絵本へ贈られる最大の賛辞」と私は思い、ときには手のひらをのせ、小さな手の痕を感じとろうとします。
乳幼児向けおはなし会では、子どもが本の絵を食べに来る、さわりに来るは、よくあることです。食べに来るときは、どの子もたいていうれしそうで、元気よく突進してくることが多いのですが、さわりに来るときは少し様子が違います。乳幼児にとって、食べることに比べ動物に触れることは、そのほとんどが経験のないことであり、勇気のいることなのでしょう。
Yちゃんの語尾上がりの「そーっと?」は「そっーとなら、さわってもいい?」と「そーっとなら、さわれるかな?」のふたつの気持ちがないまぜになったものなのかもしれません。勇気を出してさわったYちゃんのうれしそうなこと!
動物を描いた絵本は数多くありますが、幼い子には、生き物としていのちの感じられる絵本を手渡してほしいと、学生や読み聞かせのボランティアの方に伝えています。では、どんな絵本が…と思われる方も多いことでしょう。その答えは子どもたちが教えてくれます。
「小さな手の痕」がたくさんついた絵本は、食べ物として、生き物として、それぞれの力を子どもが感じている絵本です。そんな絵本を見つけたら、どうぞ手のひらをのせ、子どもたちのうれしい気持ちをダイレクトに感じてみてください。
ねずみ
『ねずみさんのながいパン』
多田 ヒロシ/作
こぐま社
ねずみさん、長いパン持って、どこに行くの? 「このうちかな? あ ちがった」。ぞうさんの家も、きりんさんの家も、もう、ごはんの真っ最中。とっとことっとこ。どこにいくの?
『ねずみのいえさがし』
ヘレン・ピアス/作
まつおか きょうこ/訳
童話屋
ねずみが家を探しています。「さむすぎない、あつすぎない、ひろすぎない、せますぎない、やかましすぎない、ぬれてもいないし、きたなくもない」。そんな家、見つかるかしら?
『ねーずみ ねーずみ どーこ いきゃ?』
こが ようこ/構成・文
降矢なな/絵
童心社
「 ねずみは、どこへいくのかな?」。0歳児から楽しめる、わらべうたの絵本です。わらべうたを知らなくても、大丈夫。ゆったりと、話しかけるように読むことで、言葉に自然なリズムが生まれます。巻末には、リズム譜と簡単な遊び方も掲載されていますので、手遊び感覚で楽しんでみましょう。
『あぶくたった』
さいとう しのぶ/構成・絵
ひさかたチャイルド
ねずみのかあさんがおしるこを煮ながら歌います。「あぶくたった にえたった~」。おいしく煮えたでしょうか? 0歳児から5歳児まで、一緒に楽しめるわらべうた絵本です。巻末に楽譜掲載。
『はりねずみのぼうけん』
ディック・ブルーナ/文・絵
まつおか きょうこ/訳
福音館書店
お店の前でマフラーを見ていた、はりねずみのはりこちゃん。猛スピードのトラックにはね飛ばされて…。こんな展開もブルーナ作品ならシンプルな文章で、2歳児納得の1冊に。
いろいろどうぶつ
『アイアイ』
相田裕美/詞
村上康成/構成・絵
ひさかたチャイルド
南の島の陽気なおさるさんたちが主役の童謡「アイアイ」の歌詞付き楽譜掲載の絵本です。最初は歌いながら読み聞かせます。すぐに子どもと「アイアイ」のかけ合いが楽しめることでしょう。
『ぺんぎんたいそう』
齋藤 槙/作
福音館書店
「 ぺんぎんたいそう、はじめるよ。いきをすって~ 、はいて~」。ぺんぎんと一緒に体を動かせる、楽しい絵本です。行事などで親子体操をするのにもピッタリの人気者の1冊。
『ほーほー』
ザ・キャビンカンパニー/作・絵
小学館
「 ふくろう ほーほーほーほー。かえる けろけろけろけろ」。色鮮やかな生き物の美しい絵本は、幅広い年齢で人気です。音( 声)と絵を、十分に楽しむ間をとってページを送ります。
『ポケット』
三浦太郎/作・絵
童心社
小さいポケット、ページをめくると「 ピヨ!」ひよこさん。大きいポケット「 パオ!」ぞうさん。ページをめくる楽しさに満ちています。赤ちゃん絵本としては、やや大判なのもうれしい。
『パンダなりきりたいそう』
いりやま さとし/作
講談社
乳幼児絵本の体操は、その多くが親子を前提としている中、子ども自身の力で楽しめる体操を提案するユニークな絵本。両手を上に、グーンと伸びてチューリップ。続いて、バナナ、ひこうき、おにぎりと大変身! 片足立ちやぐるぐる回りができなくても、子どもは上手にまねっこを楽しむので1歳児から楽しめます。
『できるかな? あたまからつまさきまで』
エリック・カール/作
くどう なおこ/訳
偕成社
「 きみはできるかな?」。ペンギン、きりん、わに、さるなど、動物たちのしぐさをまねて遊びます。お尻を振るシーンなど、読み手は照れずに、潔くまねるのがコツ。幅広い年齢で楽しめます。
『おどります』
高畠 純/作
絵本館
メケメケフラフラ、ぶたが踊ります。うまが踊ります。いぬが踊ります。かばとぞうが踊ります。表紙から見返しに始まり裏表紙まで! とにかくみんな踊ります。行事でも楽しめます。
『ぱかっ』
森 あさ子/作
ポプラ社
たまごやわにで始まり、お弁当など、いろいろなものが「ぱかっ」と、開きます。さあ、何が出てくるのでしょう。想像する時間をしっかりとって、ページをめくると、より楽しい。
『どーこだ どこだ』
カズコ G・ストーン/作
童心社
ひよこのピーちゃん、どーこだ、どこだ。ピーちゃんの足跡をたどって探す、見つけ絵本です。見つけられない子のために、ページをめくる前に必ずピーちゃんを指差ししてください。
『よ~く、みて!』
アニェーゼ・バルッツイ/作
小学館
「 なにかな? なにかな? よ~く、みて!」。折りたたんだページを横に広げるシンプルな絵がわりしかけ絵本です。ひとつのドーナッツがねこに1本のバナナが6匹のカに、1本のニンジンが8匹のうさぎに! 数の絵本としても楽しめますが、まずはめくって、開いて声に出して遊んでください。
『にゃん にゃん』
せな けいこ/作
福音館書店
「 あたし ねこちゃんが すき」。女の子は思わずぎゅーっと抱っこして…。貼り絵で作製されたねこたちの表情が素敵な作品です。読む声は、必要以上に甘くならないように。
『なくのは だーれ』
いのうえ ようすけ/作・絵
鈴木出版
にわとり、いぬ、からす…。さまざまな動物の親子が登場。赤ちゃんとお母さん、それぞれが、とっておきの声で鳴いています。その表情のうれしそうなこと!
『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2019秋冬より
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