「不慮の事故を防ぐにはどうしたら?」【保育マメマメQ&Hints! with 大豆生田啓友先生】
大豆生田 今回の質問は、「突発的な事故を防ぐにはどうしたらいいですか?」です。答えはひとつじゃありません。ぼくの考えるいくつかの対応例をあげます。みんなで対話して、考えていきたいですね。
※公式Instagramで今回のテーマの動画(約90秒)が見られます。(←文字をタップorクリックしてください)。左下は、リール動画撮影中の様子(写真左は小学館編集スタッフ)
大豆生田啓友先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。2024年9月28日に柴田愛子先生との対談を保育セミナーで行います。←この部分をタップorクリックして詳細と申し込みサイトへ
保育は、子どもの生活に丸ごとかかわるお仕事。
そして、同僚や保護者との関係も複雑に交ざり合って、
なかなか個人の思ったとおりにはいきません。
「こんな場合、どうしたら?」
そんな現場の保育者が抱える悩みや疑問に対して、
大豆生田啓友先生から、考え方のヒントをいただきました。
これをもとに、仲間とぜひ話し合ってみてください。
Q美 目を離したスキに、子どもが転んでしまいました。大きなケガはなかったのですが、複数の子どもがいるとき、どんな見守り方をしたらいいかがわかりません。どうしたらいいですか?
目次
多少のケガに神経質にならないように
マメ先生 人間は神様じゃないですから、100%何もかも見ているのは不可能ですよね。
そもそも、多少のケガに神経をとがらせすぎていると、保育が萎縮しかねません。
転んだり、ちょっとしたケガをすることで、子どもはそうならないような身のこなしや、「注意力」を養っていく。それが保育なんだということ。
まずは、それを同僚や保護者としっかり共有したいですね。
さらには、大きな事故であれ、小さなケガであれ、突発的なものはほぼ「見守り」では防げないことも、共有化できたらと思います。
不慮の事故を防ぐのは、Three E’s
マメ先生 WHO(世界保健機関)の事故予防対策は、おもに死亡につながる重大事故を想定したものですが、その対策にも見守りは入っていません。
示されているのは、以下の3つです。
①親などの大人や、子どもへの教育 Education
②製品、環境デザイン Engineering
③法律(規制や基準) Enforcement
これらが「不慮の事故を防ぐための伝統的な介入策」とされ、Three E’s(3E’s、もしくは簡略化して3E)と呼ばれています。
3Eの具体例
マメ先生 少々具体的にいうと、
①は、保護者や子育て関係者などの大人と子どもが、事故予防のための教育を受けること
②は、園でいえば、無害な遊具を使ったり、階段の上にベビーゲートを設けるなど、環境を整備すること
③は、自転車利用時のヘルメット使用の努力義務化(道路交通法)、遊具の原材料の規制(食品衛生法)
などがあたります。
これにのっとって「大ケガになりかねない転倒による突発的な事故」を園で防ぐとすれば、そういう危険な箇所がないかを洗い出して、対策を行うこと(③)、必要に応じて子どもに注意を促すこと(①)になるでしょうね。
どこの園でもすでにやっていることだと思いますが…。
さらに、園における3Eを考えてみると、こんな感じになるでしょうか。
連携で防げる事故
マメ先生 高いところからの落下など、一瞬で致命的な傷を負う突発事故があります。
その一方で、突発事故でも、救命できる時間的余地がある場合は、先生たちの連携で未然に防げるものもありますよね。たとえばプールでの水難がその代表です。
プールもちょっとした気の緩みで死亡事故につながりますから、
・監視訳専任の職員を置き、それと分かるようなタスキを掛けたり、帽子をかぶる。
・プール全域をくまなく監視するために、エリア分けして監視の担当を決める。
・高い位置から見たり、背中合わせのポジションで360度見渡せるようにする
などの対策が必須になります。
普段の保育の中でも、職員全員がすべてのエリアに気を配りながらも、特に注意してみるべき箇所の担当を決めている園もありますよ。
突発事故でも謝罪の気持ちは忘れない
Q美 子どものケガがあったとき、「なんでちゃんと見てなかったの?」と言わることがあるんですが、「事故の瞬間を見ておくこと」も難しいですよね? 神様ではないので。
マメ先生 確かにそのとおりです。でも、「神様じゃないので」とこっちから言ってしまったら、それは開き直りに聞こえます。
やはり小さな事故でも、起こってしまったら「申し訳ありませんでした」と謝る──それが保育者の責任・プライドとして、とるべき態度だと思いますね。
↑間違いではない。でも、「使い方」を間違っているので、炎上します! ご注意あれ。
今回のマメマメヒント
※『新・保育環境評価スケール 3歳以上』項目11安全・法律文化社)では、以下の2例を比較してあげています。
◉「子どもがめったに走り回らない場所の盛り上がった木の根」は小さな危険(ハザード)
◉「子どもが走り回る場所で木の根が盛り上がっており、つまずくとセメントの表面に転ぶ場所」は大きな危険(ハザード)
大きな危険が想定される場合は、そこに近づけないようにするなど、事前の対策が必要と考えられます。
記事の参考サイト
The preventability of child injury (WHO)
★この記事は、小学館『新 幼児と保育』公式Instagram(←こちらをタップorクリック!)でリール動画を配信した内容にweb版として加筆・再構成したものです。また、小学館の雑誌『新 幼児と保育』では、ほかのリール動画で配信した内容に加筆・再構成し掲載していますので、どうぞご覧ください。また、このコーナーへの質問、疑問も募集中です。下から投稿できます。
お話/大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)先生
玉川大学教授。保育・子育て支援などが専門。特に保育の質の向上が研究のメインテーマ。著書に『日本が誇る! ていねいな保育』『日本版保育ドキュメンテーションのすすめ』『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』(ともに共著・小学館)、『子どもが中心の「共主体」の保育へ』(監修・小学館)など多数。
構成・イラスト/おおえだ けいこ
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