赤ちゃんの発達に合わせた絵本選び|0・1・2歳児向け【児玉ひろ美のこだま文庫】

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児玉ひろ美の絵本ガイド
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JPIC読書アドバイザー

児玉ひろ美

記憶の隅にある懐かしい1冊、気になりながらも読まないままの1冊、まだ出会っていない1冊。ここは、そんな本を見つけるためのオンライン図書館です。今回紹介するのは遊びと会話の延長線上で楽しむ、0・1・2歳児の絵本。選び方は、その発達過程によってもポイントがあります。0歳児に読みたい絵本、1・2歳児に読みたい絵本をそれぞれ集めてみました。

児玉ひろ美さん

公立図書館司書とJPIC(ジェイピック:一般社団法人出版文化産業振興財団)読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。お話会の実践のほか、近年は大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当。「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本選考委員」。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)などがあり、雑誌やWEBでも活躍中。

赤ちゃん絵本期・もの絵本期

赤ちゃん絵本は発達過程の特性によって、「赤ちゃん絵本期」「もの絵本期」の2段階に考えられます。それぞれの特徴や絵本はあとで紹介しますが、大切なことは、絵本を読む空間や時間が子どもにとっての「安心の場」であり、「大人とのコミュニケーションの機会」であることです。絵本を読むことで、結果的に文字が読めるようになる、さまざまな知識を得るなどが期待されることもありますが、これらは副産物であり、絵本とのふれあいにおける最も重要な目的ではないのです。

『いない いない ばあ』は、2020年11月24日に、国内で発行されている絵本初の累計発行部数701万部となりました。1969年の出版以来、「いない いない ばあ」のフレーズとともに、もうどれほどの親子を幸せにしてきたことでしょう? まさに日本の赤ちゃん絵本のフロントランナーですね。

『いない いない ばあ』
松谷みよ子/作
瀬川康男/絵
童心社

一方、最近の赤ちゃん絵本の中で気になるのは、2016年出版の『にこにこ』です。監修のSassyは赤ちゃんの発達心理学を研究し、色や形にこだわって発育を促するおもちゃを開発しているアメリカ発のトイブランドです。

シリーズ展開している赤ちゃん絵本はすべて黒を基調とし、日本のそれとは違う印象。そのうえ、絵本としては重量感(350グラム:ほかの赤ちゃん絵本の1・5〜2倍)があるこのシリーズの絵本を、ただでさえ重いマザーズバッグの中に入れて持ち歩くママの多いこと! 

あるとき、この絵本を手に「にこにこ くるりん くるくるり」と絵本の言葉を使って赤ちゃんをあやすお母さんを目にしましたが、言葉のリズムもあやし方も自然で、とても楽しそうでした。

こうして、赤ちゃん絵本は時を経て、親子の時間にくり返し読まれ、育まれていくのですね。

『Sassyのあかちゃんえほん にこにこ』
Sassy/ DAD WAY/監修
KADOKAWA

0歳児の絵本選び ー赤ちゃん絵本期ー

音(言葉)と色(絵)

聴力に比べ視力の発達は遅いため、0歳児向けの絵本は「絵」の見やすさがポイントです。たっぷりの余白に単純な絵柄。わかりやすく鮮明な色。描かれているものが正面を向き、子どもと向き合う構成が基本と考えてもよいでしょう。一方、言葉(音)は、リズムがあり、オノマトペなど心地のよい音のくり返しがあるものも大好きです。いまは、声の代わりに手をたたくなどして、みんなで一緒に絵本の世界を楽しみましょう。

ふれあい・遊び

月齢でその成長に差が大きい0歳児への読み聞かせは、本来1対1が基本です。そのことを踏まえ、保育の現場における複数の0歳児への読み聞かせは、遊びと会話の延長として考えるとよいでしょう。絵本を読み通すことが大切なことなのではありません。絵本を介し、一緒に過ごす時間に子どもが、心地よさを感じ、絵本を「楽しいもの」と思えたら、それが読み聞かせの最初の一歩になるのです。

体験に合わせて

子どもは幼ければ幼いほど、五感が大切です。見て、聞いて、さわって、嗅いで、味わって…と、経験したことのあるものにだけ反応します。ゆえに、食べたことのないもの、触れたことのないものが描かれている絵本には関心を示しません。0歳児は特に月齢と経験、季節などを考慮して、絵本を選んでください。ページによっては、全員が反応しなくても当然と考える臨機応変さも必要です。

赤ちゃん絵本期にぴったりの絵本

『ほーほー』
ザ・キャビンカンパニー/作・絵
小学館

赤ちゃん絵本としては、少々奇抜な色に感じるかもしれませんが、意外と視線を集めます。「ほーほー」「にゃんにゃん」など、一緒に鳴き声をまねて、遊びましょう。

『あ・あ』
三浦太郎/作・絵
童心社

子どもの発する最初の言葉を一緒に体験できる絵本。子どもの耳に届きやすいシンプルな音を重ねているので、自然と子どもたちからも「あ・あ」と声が出てくるでしょう。

『ぱかっ』
森あさ子/作
ポプラ社

「たまごさん たまごさん」「ぱかっ」「わにさん わにさん」「ぱかっ」。ページをめくると、ぱかっと、いろいろなものが出てきます。音と遊びで、絵本をめくる楽しさが伝わります。

『ぴったん・こ!』
ひらぎ みつえ/作
ほるぷ出版

乳児が指をかけて動かせる、しかけ絵本です。ゾウ、ネコ、ウサギ…次々出てくる動物のおなかに、動物の子どもが「ぴったん・こ!」。最後は人間の親子も「ぴったん・こ!」。

『へっこ ぷっとたれた』
こが ようこ/構成・文
降矢なな/絵
童心社

「 おいっちに、おいっちに…」のかけ声で始まり、絵を見せ、素直に読むだけで楽しい、わらべうた絵本です。子どもたちの自然な反応に任せ、自由に元気よく遊びましょう。

『でんしゃ くるかな?』
きくち ちき/作
福音館書店

大好きな電車が目の前を通りすぎるワクワク感を楽しむ絵本です。「くるかな? くるかな?」。子どもと動物たちが、ホームで電車を待っていると…「きたー!」。体いっぱいに喜びがあふれます。そして再び「くるかな? また くるかな?」と電車を待ちます。最後はやってきた電車に、みんなで「のりまーす」。

『こねこが にゃあ』
ひろの たかこ/作
福音館書店

「 にゃあお」。お母さんネコの声に、かごの中から、袋の中から、カーテンの陰から、子ネコが「にゃあ」とかくれんぼのよう。子ネコを見つけたり、子ネコになって返事をしたり、何回くり返しても楽しい!

『うずらちゃんのかくれんぼ
きもと ももこ/作
福音館書店

皇室の愛子さまのお気に入り絵本と紹介され、一躍ブームになった絵本。かくれんぼをするうずらちゃんを、指さし、探して遊べます。

1・2歳児の絵本選び ーもの絵本期ー

身近な

歩きや動作も安定し、視野が広がってくると、個性が育ち始めます。ものの好き嫌いや、得意不得意なども出始め、身近な遊びや生活の中に自分なりのこだわりや興味・関心も芽生え始めます。さまざまなジャンルの絵本に会わせてあげましょう。ポイントは、子どもにとって身近な関心ごとがテーマになっているもの。成功譚であること。まだまだできないことも多い毎日です。絵本を通して達成感を得ることは大きな喜びとなるでしょう。

くり返し

二語文程度で簡潔に綴られた物語の筋を追うことができるようになります。オノマトペもワンワン、トントンといった単純な音のくり返しから、「ぴかぴかひかる」「ふわふわのくも」などの状況やものの様子を感じるようになるでしょう。ただし、子どもは感じることはできてもそれを言葉で示すことはできません。「わかった?」「すごいね?」などの確認をすることはNGです。子どもの自発的な言葉を待ちましょう。

共感

自分以外の他者の存在を認め、うれしさや楽しさ、悔しさや悲しさを共感し分かち合うことができるようになると、絵本の楽しみ方も大きく変わります。登場人物に心を添わせてドキドキしたり、言葉では表現できなくとも、友達と協力して物語の世界をダンボールなどで再現したり、ごっこ遊びやなりきり遊びをしたり、それはもう、本当に楽しそう。絵本を読み聞かせたあと、絵本をいつでも見られるように、子どもの手の届くところに置いてあげましょう。

もの絵本期にぴったりの絵本

『ぽんちんぱん』
柿木原政広/作
福音館書店

「 ぱんぱん しょくぱん ぽんちん ぱん」。歌いたくなるような言葉と、たくさんのパン。パンをちぎってできる、楽しい顔。食べることに興味を持ち始めるころに読みたい写真絵本。

『ごはん』
平野恵理子/作
福音館書店

めくっても、めくっても、ごはんです。まめごはんに、パエリア、カレーライス、おにぎり… 。食べ物絵本で一番大切なことは、おいしそうなこと。文句なしの1冊。

『けんけん ぱっ』
にご まりこ/作
福音館書店

まだ本当の「けんけんぱ」はできないけれど、「ぱっ!」の音(言葉)は、みんな大好き。お口でパッとしたり、おててをパチンとしたり、笑ったり、何回でも楽しめます。

『ねられん ねられん かぼちゃのこ』
やぎゅう げんいちろう/作
福音館書店

「そこの かぼちゃのこ はやく ねなさーい」。お月さまの言葉に、「ねられん ねられん」と、素直に寝ない子の抵抗は続きます。リズミカルなくり返しがわらべうたのような楽しさ。

『へんてこたいそう』
新井洋行/作
小峰書店

街で見慣れたサインが動きだし、へんてこな体操を始めます。「いっち に いっち に」。見て、声に出して、動いて、見つけて、さまざまに楽しめます。そして一番のお楽しみは、非常口のサイン。園にも必ずあって、だれもが知っている、あのサインでこんなことを!? それは、見てのお楽しみ。異年齢の合同保育にもおすすめの1冊。

『そおっと そおっとね』
たんじ あきこ/作
ほるぷ出版

「 そおっと」は、幼い子がよく口にする言葉のひとつ。「そおっと そおっと もっていくよ」と、お菓子を運ぶ女の子と一緒に、子どもたちも息を詰めて「そおっと」見守ります。

『ふうしてあそぼ』
はるの まい/作
エンブックス

縦開きのページをめくることで、さまざまな「ふう」を体験しましょう。飛ばすふう、膨らませるふう、音を出すふう、冷ますふう、いたわるふう…。「ふう」ってすごい!

『くまのテディちゃん』
グレタ・ヤヌス/作
ロジャー・デュボアザン/絵
湯沢朱実/訳
こぐま社

手のひらサイズの小さな絵本。ぬいぐるみのテディちゃんの持ち物をひとつひとつ紹介していきます。「これは○○の!」と、自分の持ち物を確認することをうれしく( 誇らしく)思うころにおすすめです。最後のページで、テディちゃんが自分のベッドで眠ります。お昼寝の前に、そっと静かに読むのもいいですね。

『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2021夏より

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